バリアートショールーム オーナーブログ
2014.6.14

この100年で日本人が得たもの、失ったもの

こんにちは、坂本澄子です。

現地パートナーの木村さんと一昨日Skypeで電話会議をしたときのこと。パソコンに内蔵されたカメラを通じて顔を合わせ、その日タブレットPCで録ってきてもらったばかりの画家の制作の様子をビデオ画像で見ながら打合せしました。夜も10時をまわり、木村さんもビール片手にパソコンに向かっています。ITの御陰で、バリ島にまで足を運ばなくてもかなりのことができるようになりました。

こんなふうに情報はやって来て、そして流れていきます。時間あたりに得られる情報は膨大な量、そんな生活が当たり前になっていたときに、Facebookで友人が、100年前の日本の写真を紹介した記事をシェアしているのを見て釘付け。ご覧になった方も多いと思いますが、昨年イギリスでオークションにかけられた100年前の日本の写真を紹介したもので、明治時代に活躍した写真家・玉村康三郎が1910年にアメリカの出版社からの依頼で撮影したのだそう。

「これ、これ、まさにこれだよ〜」これがその時の素直な感想です。

150_読書する女 

これらの写真は欧米人を魅了すると同時に、日本人である私たちをも惹きつけていました。その理由のひとつは、ゆっくりと流れる時間ではないでしょうか。冒頭の例のように「流れていくもの」が溢れる現代に対して、ある意味「止まったもの」を提供していると言えそうです。

150_紅葉狩りそしてもうひとつは想像力。小説ひとつ読むにしても、動画や写真の説明があるわけではなく、文字だけを追い、想像力を逞しくすることで、頭の中で情景を組み立てて理解するわけです。また、恋人に手紙を書くにしても、書いては破り、また書き直し、ようやく出した後は返事が来るまでの長いこと。相手の気持ちを想像しながらやきもきし、心は振り子のようにあっちへ行ったりこっちへ来たり。ショートメールや電話でその場でやりとりするのとは、感情の振れ幅が全く違いますよね。そう思うと、100年前の日本人は今よりよっぽどアーティスティックな体験をしていたのではないかと思います。

150_雨の渡月橋そんなふうに時には「止まった時間」を持つことで、人間としての感受性や感性を取り戻すことも大切なのではないでしょうか。

いつもの何気ない風景にふと季節の移ろいを感じたり、物語を読んで主人公の心の動きに涙してみたり、音楽を聴いて心震えたり、、、

本物の絵を見ることもこれに似ているように思います。見る人のその時の心持ちによって、語りかけてくるものも違います。そして、それによって自分自身により深く向き合うことになるのです。そんな時間を日常の中で取り戻してみませんか。

「バリアートショールーム」はアートを基軸に心豊かに時を刻む暮しを提案していきます。ミュージアム作家による作品展『本物の絵と暮らそう』は今日が最終日です。会場でお待ちしています。詳しくはこちら

<出典>

Inside the Chrysanthemum kingdom

Old Photo of Japan

100年前の日本の写真、イギリスのオークションへ 

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