バリアートショールーム オーナーブログ
2015.8.29

私事で恐縮ですが

こんにちは、坂本澄子です。

今日は私事で恐縮ですが、嬉しいことがありましたので、どうかおつきあいください。

私も以前から趣味で絵を描いていましたが、今回思い切って応募してみた二科展に初入選しました。つらかった時に私を支えてくれたある風景を描いたもの。今日はそんな私の絵にまつわる思いをお話させていただきたいと思います。

世界に繋がる窓2

30歳を過ぎた頃、駅前で見かけた絵画教室のポスターがきっかけで、小さな娘を連れて絵を習い始めました。休日くらいは何か一緒にできればと思ったのです。いろんな意味で大変な時期でしたが、不思議と絵を描いていると、他のことは忘れられるんです。そんな自分に、いつか絵に関する仕事ができたらいいなあと漠然とした憧れを思っていました。

外資系企業に勤めていたこともあり、外国人の家庭に招かれることが多かったのですが、どのお宅もお部屋を飾ることの上手なこと。住まいという空間を心地よいものにするためのエネルギーが全然違う、ひいては、生活の質も違うと感じていました。家族の写真やちょっとした記念の品がオブジェとして飾られ、ポスターや複製画ではない本物の絵がさりげなく暮らしの中に取り込まれているのがとても印象的でした。

私が贈った絵はダラスの自宅に飾られている

私が贈った絵は今もダラスの自宅に飾られている(手前)

中でも、英語の先生だったサンドラとは、一昨年アメリカに帰国するまで10年に渡り親しくさせてもらいました。母親のような存在だった彼女が整えた部屋はとても居心地がよく、夫婦揃ってアート好きの自宅には大小様々な絵が飾られていました。ご贔屓の作家だったり、友人が描いた絵だったり、私がクリスマスにプレゼントした絵ですらも、ベッドルームに飾ってくれていました。審美眼といいますか、自分なりの美のモノサシをちゃんと持っているのです。また、それぞれの絵とご自身の個人的な経験がちゃんと紐付いている、それが毎日の生活を豊かにしているのだと感じました。

そんな絵のある暮らしに憧れていた頃、勤続記念に長期休暇が取れ、たまたまバリ島を訪れました。そこで様々なアートや作家と出会い、こんな魅力的な絵が、しかも、手の届く値段で買えることに正直驚きました。これなら、日本で「本物の絵のある暮らし」を提案できるかも知れない。漠然とした思いが、現実味を帯びてきたのはその時からです。物販というよりも、サンドラの家で感じたような、絵があることで作り出される精神的な作用や生活の質といった「物質的な価値以外の何か」を感じてもらえる仕事がしたいと思いました。

出会いと偶然に導かれ、長年過ごしたIT企業を卒業し、絵画の世界に飛び込んだのは3年前のこと。最初は何もかもが初めてのことで、バリ島で画家を訪ね絵を買ってくることも、日本で絵画展を開くことも、ウェブサイトを作り、ブログに文章を書くことも何もかもが試行錯誤の毎日、でも、とてもエキサイティングでした。

しかし、それも一巡すると、できないことの方がだんだん目につくようになってきました。日本で絵を売ることは想像していた以上に難しく、次第に手元資金も少なくなり、焦る気持ちだけが日々強くなるばかり。また、営業として外を飛び回っていた前職と違って、1日のほとんどの時間を一人で過ごすことの孤独さといったら。独立した経験をお持ちの方なら、誰でも一度は通られた道ではないでしょうか。

何かしなくてはいられない焦燥感からか、夜が明ける前によく目が覚めました。マンションの19階の窓の外はまだ薄暗く、眼下に広がる高速道路や建築中の街並み、次第に明けゆく空と海を見ながら、弱い自分と戦っていると、そんな早朝でも高速を走っている車や外を歩いている人が結構いるんです。あのトラックは、この前絵を運んでくれた運送会社の車かも知れない、犬を散歩させているあの人は来月ジョイントで展示会をする住宅メーカーの人かも…などと想像を巡らせると、私のこの小さな仕事も、多くの人々の協力で成り立ちお客様へと繋がっている、そして、それはいつかまた私のところへ戻ってくる。そんな目に見えない繋がりを感じて、とても勇気づけられました。感謝から祈るような気持ちでした。バリの人たちのように。

それからは、せっかくできた時間を大切にして、毎日絵を描き、バリ絵画はもちろん、絵に関する勉強をし、美術館やギャラリーに足しげく通うなど、自分が望んだ、絵の世界を「楽しむ」毎日を心がけました。その頃の自分を思いながら描いたのが、入選作品『世界に続く窓』です。これまでしてきたことが小さな実を結び、方向性として間違っていなかったと嬉しく思うとともに、またひとつ次の視界が開けたように感じました。

今回の入選を励みに、これからも「本物の絵のある暮らし」をご提案する活動を続けていきたいと思います。

<関連ページ>

第100回記念二科展公式ホームページ 9月2日〜14日@国立新美術館

 

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2015.8.26

安野光雅展を見てソキを想う

こんにちは、坂本澄子です。

急に涼しくなりましたね。窓を開けて寝ていたら、夜中に寒くて目が覚めました。暑くて目が覚めていた少し前とは大違いです。季節の変わり目、どうぞくれぐれもご自愛ください。

さて、先日、新宿にある損保ジャパン美術館に「旅の風景 安野光雅 ヨーローパ周遊旅行」展を見に行ってきました。最終日の前日とも相まって、絵本の原画約120点の前はかなりの賑わい。

安野さんが気の向くままに旅をして描いた水彩画の数々が、イタリア、スペイン、イギリス、スイス、ドイツ…と国ごとに展示されています。それぞれに違った味わいがあり、また、作品に添えられた安野さんご自身が書かれた文章を読むと、その鋭い観察眼と共に、幅広い知識に裏付けされていることを感じます。風景の中に描かれた人々の姿や暮らしぶりの正確さは、その国の人も驚くほどです。

ブログ222_安野光雅

緻密でかつ俯瞰的な描写が持ち味の安野さんの作品ですが、バリ島で初めてソキさんのギャラリーを訪れたときに持った印象もこれとよく似たものでした。安野さんの風景画は旅人の視点で描かれていますが、ソキさんはそこに暮らす住民でありながら、同様に俯瞰的な神の視点をもって描かれています。多くの人物を描きながら、誰一人特別な存在はありません。神の前にはみな小さな存在であり、恵みによって生かされていることを意識した描き方なのです。

代表作『バリ島』は全島を斜め上空から見下ろした面白い構図。2、3000m級の山々が連なる北部、なだらかな平野が広がる南部という地形が直感的に感じられます。最も尊いもの(この作品では聖峰アグン山)が絵の一番上に来るというバリ絵画の伝統的な約束事に従い、祭礼の島の生活のさまざまな場面がびっしりと描かれています。

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『バリ島』 SOKI

島の南半分を覆いつくす赤はバリの大地をイメージしたもので、所々に点在する青は北部の山から湧き出た清水がバリ全土を潤していることを伝えています。この大地と水が作物を育み、やがて大きな実りとなってバリの人々の暮らしをささえているわけです。また、海に目を向けると、漁師が魚を獲っています。人々は自然から恵みを受け、神に感謝の気持ちを表すための祭礼を行います。この伝統的なバリ島の生活がソキさんの絵の主題です。

この壮大な作品(80cmx100cm)から、それぞれの場面を切り出して描いた小品は、ソキ作品の魅力が身近に感じられるいわば入門編。それぞれの作品画像をクリックすると、詳細ページをご覧いただけますので、モチーフ解説とあわせて細部の描写をお楽しみください。

『稲刈り風景』ソキ

『村の稲刈り』

バロン

『バロンの祭列』

レゴンダンス『レゴンダンス』

Info_20131221_バロンの祭列Ⅱ『ムラスティ』

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『ウブドの市場』

 <関連ページ>

ソキ紹介ムービー ソキの魅力を3分間で (youtube)

ソキの作品ページ ソキの作品をもっとご覧になりたい方はこちらへ

 

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2015.8.22

バリの古典絵画 その素朴なあじわい

こんにちは、坂本澄子です。

天井にいっぱいにギッシリと古典絵画が描かれた場所をご存知でしょうか。バリ島東部の古都クルンクンにあるスマラプラ宮殿です。イスラム勢力の侵攻から逃れてきたジャワの知識階級(王国の廷臣、僧侶、工芸師)がバリ島に渡来したのが16世紀。文学、影絵芝居、音楽、彫刻など様々な文化がもたらされ、現在のバリ島の文化の土台を形成しました。

ブログ222_スマラプラ宮殿そのスマラプラ宮殿で最も異彩を放っているのが、こちらクルタ・ゴサ。裁判所として1942年まで実際に使用されていた場所で、村のレベルでは解決できない問題や犯罪が持ち込まれました。当時使用された机や椅子がそのまま残されており、天井にはこの通り、いっぱいにかけられた絵画。首が痛いのをガマンしてしばらく見ていると、それが地獄絵であることがわかります。

さすが裁判所。悪いことをするとこうなるというのを絵で示しているというわけです。三途の橋を渡る人々、落ちれば下は火の川です。地獄の大釜で釜茹でにされる人。木の葉が剣になってきて、グサッ。地獄の様々な刑罰の場面がずらりと並んでいる割に、こわーいという感じにならないのは、その素朴なタッチのせいでしょうか。

ブログ222_三途の橋 ブログ222_釜茹で ブログ222_剣の葉

続いては、少し優雅に行きましょうか。

ブログ222_バレ・カンバン同じ敷地内にあるバレ・カンバン。水の宮殿とも言われ、水に浮かぶように建てられた珍しい建築様式。王族の休憩所として建てられたこの場所は、暑さをしのぎつつ、池に咲く蓮の花を愛で、音楽に打ち興じていた雅やかな姿が眼に浮かぶようです。ここにもギッシリの天井画が飾られていますが、こちらはラーマーヤナー、マハーバーラタなどヒンドゥ神話の場面が描かれています。

ヒンドゥ教の三大神と言えば、プラフマ(世界の創造を司る神)、ウィシュヌ(世界の秩序を司る神)、シヴァ(終わりの日に世界の破壊と再生を司る神)と、それぞれに役割があり、中でも、10以上の化身を持って物語にも多く登場するウィシュヌは、バリの人々から敬愛され、絵画のモチーフとしてもよく取り上げられています。横向きの顔、平面的な人物描写が特徴ですが、それは、バリ絵画が影絵芝居を起源としているからなんです。

このように、バリの芸術は神々と人間界をつなぐものとして生まれ発展してきました。舞踊しかり、音楽しかり、彫刻、絵画などの装飾しかりです。絵画においては、描く題材はあらかじめ決まっており、描き手個人の個性を発揮するというよりは、職人としての技術的な面が重視されました。この古典的な描写を今に伝えているのが、カマサン・スタイルで、素朴な味わいがあります。

そのカマサン・スタイルから女流画家ムリアティが描いた『ラーマヤナー 魔王と戦う正義の猿軍団』をご紹介します。

『ラーマヤナー』はウィシュヌの化身であるラーマ王子が政変で国を追われ、鬼神にさらわれた妃シータを探して旅する物語。お供の猿王ハヌマンがサル軍団を率い、鬼神とその手下と大乱闘を繰り広げるシーンは、物語の中でも一番の見せ場。

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『ラーマヤナー 魔王と戦う正義の猿軍団』 アクリル/キャンバス 60cmx80cm 50,000円(税込)

画面中央の大男が鬼神ラワナ、羽交い締めにされているのがハヌマン、右上の人物がラーマ王子と弟のラクシュマナです。戦いの場面ですが、悲惨感はなく、どこか滑稽な感じさえするのは、先ほどの地獄絵に共通していますね。

バリ絵画ファンなら、一枚は持っていたい古典絵画。その素朴な味わいをお楽しみください。

<関連ページ>

カマサン・スタイル

『ラーマヤナー 魔王と戦う正義の猿軍団』作品詳細

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2015.8.19

バリ舞踊とガムランの調べに酔いしれる濃密な時間

こんにちは、坂本澄子です。

先日、「阿佐ヶ谷のバリ舞踊祭」で素晴らしい踊りを見せてくださったあのお二人が8月30日(日)17:00〜再び舞台に立ちます。山室祥子さんと荒内琴絵さん。日本におけるバリ舞踊の第一人者です。

ブログ220_山室祥子+荒内琴絵山室さんは阿佐ヶ谷のバリ舞踊祭では天照大神(アマテラスオオミカミ)に扮し、後半はバリの伝統舞踊『タルナ・ジャヤ(若き勝利者の舞)』で迫真の踊りを見せてくださいました。ど素人の私でさえ、最初から最後まで目が離せなかったほど。アメリカ人のガムラン奏者と結婚され、現在はアメリカ在住。いまや、里帰りのときにしか、その壮麗な舞は見ることができなくなりました。

一方の荒内さん。暴れん坊の弟神・須佐之男命(スサノオノミコト)を舞い、その役柄にふさわしい力強い踊りを披露されました。荒内さんの踊りはこれまでも何度か見せていただきましたが、独特の目力をはじめ、表情豊かな表現力は人をそらせません。

8月1日のブログ「夏恒例!阿佐ヶ谷バリ舞踊祭」もぜひ読んでみてください。山室さん、荒内ブログ220_ガンプーさんの舞がどれだけ素晴らしかったか、その雰囲気を感じていただけるのではないかと思います。なお、今回の演目は『森の王者の舞』『悪い精霊の仮面舞踊』などバリの伝統舞踊、創作舞踊を中心に行われます。

お二人がいかに類稀な踊り手かをわかっていただいたところで…、でも、それだけじゃないんです!またまた、日本でガムラン奏者といえばこの人、櫻田素子さん率いるガムラングループ「トゥラン・ブーラン」から6名の精鋭プレイヤーによる特別チームが演奏をつとめます。

実は、この公演、山室さんのアメリカ帰国前に緊急企画されたもの。あいにく私自身はその日は所用で東京を離れており、どうしても間に合いそうにありません。しかし、こんな機会はそうあるものではありません。せめてこのブログを読んでくださっているバリファンの皆さまにお伝えしたい。そんな気持ちでご紹介させていただいています。

会場は目黒のチャベ。インドネシア大使館員も通う、知る人ぞ知るインドネシア料理の名店です。30席の半分は既に予約が入っているそうですので、ご興味あればどうぞお早めにお申し込みください。詳しくはこちらのご案内をどうぞ。

天界と人間界をつなぐバリ舞踊。その奥深さを2人の名手が舞い、ガムランの伴奏が盛り上げます。本格インドネシア料理とともに、南国の濃密な夜に身を委ねるひとときを過ごしてみませんか。

最後にバリ舞踊を描いたアンタラ氏の作品をご紹介します。

ブログ220_ガンプー現在のバリ舞踊の原型になった古典舞踊劇、ガンプーに登場するプトゥリ(お姫様)です。「バリの伝統芸能を世界に伝えたい」と語る氏の作品は細部に至るまで正確に再現した描写が特徴。衣装に使われた伝統的な織物の柄まで忠実に描いています。アンタラ氏のバリ舞踊をモチーフにした作品はご希望の演目で制作を承ることも可能です。お問い合わせはこちらのコンタクトフォームからどうぞ。

<関連ページ>

アンタラ特集記事

アンタラ作品ページ

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2015.8.15

ひんやりとした空気に包まれる朝

こんにちは、坂本澄子です。

毎年、お盆の週にバリ島とお隣のロンボク島に嫁いだお友達に会いに行かれるお客様がいらっしゃいます。今年も素敵な写真にやさしいメッセージを添えて送ってくださいました。

*****

「トッケーの声とともに目覚めると、雨が降っていました。冬にあたるこの季節、ウブドはひんやりとした朝の空気につつまれています。雨の音を聴きながら、心がほぐれていくのがわかります」

「私にとって、毎年バリに来ることは『忘れ物をとりにいく旅』でもあります。慌ただしい毎日の中で忘れてしまっていること。それがバリにくると見つけられるんです。やさしい気持ちになること。お腹の底から笑うこと。小さなことでも感謝すること…」

ブログ219_ウブド

 

「ビンタンビールのデザインが1年前と変わっていました。インドネシア建国70周年記念(8月17日)の限定デザインなのだそう。ついついグビグビいっちゃっいます。田園風景を見ながらひとりの〜んびり飲むビール、これもバリの楽しみです」

ブログ219_ビンタンビール

 

「今日はこちらに嫁いだ友人夫妻と食事。二人の間に生まれた男の子ももう2歳です。彼女はバリ島での生活を笑いに変えて話してくれました」

ブログ219_ウブドの夕日

 

「クサンバ(バリの東部)まで足を伸ばして、バリで初めて釣りをしました。使われなくなった桟橋で、地元のお父さんたちに混じって。カタコトで訊くと、朝晩はイカやアジがよく釣れるんだそうです。釣れましたよ、アジ^o^」

ブログ219_バリで釣り

 

「今日はロンボク島に渡り、スンギキビーチへ。波の音を聴いていると、心も洗われます。海の向こうへ陽が沈むにつれて、空がその表情を変え、椰子の木のシルエットが浮かび上がってきました。・・・忘れ物、たくさん取り戻しましたよ」

ブログ219_スンギキビーチの夕景

 素敵な写真とやさしいメッセージ、ありがとうございました!!

 

スクリーンショット 2014-12-17 8.13.44朝のひんやりした空気って、ぴりりと覚醒しますよね。胸いっぱいに朝の空気を吸い込むと、身体の中にたまったモヤモヤが押し出されて頭もスッキリ。夕日はやさしい気持ちをくれます。淡い朱の空気の中に身体ごと溶け込んでいきそう。

ガルー作品ページもぜひ覗いてみてください。お部屋にいながら毎日こんな気分が味わえますよ〜。

 <関連ページ>

ガルー作品ページ 

 

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2015.8.13

日本のお盆とバリ島のガルンガンの共通点

こんにちは、坂本澄子です。

今週はお盆休みで帰省をされる方も多いでしょうね。

ブログ218_盆灯籠私の郷里、広島では、お盆になるとお墓に灯籠を立てる習慣があるんです。竹を縦に6つに割って朝顔型に広げ、そこに赤・青・黄などの鮮やかな色紙を貼って作られたもので、お墓参りに訪れた人がそれぞれお墓の周りに立てていくため、写真の通りとても賑やかに。初盆のときだけ、白い灯籠をたてます。この風習、江戸時代から始まったものらしく、由来については諸説ありますが、先祖の霊をお迎えする目印の役割を果たしているのかも知れません。

ペンジョールバリ島のガルンガンも、先祖の霊が家族の元に帰ってくるとされ、家の前にペンジョール(竹飾り)を掲げます。これもご先祖様が迷わないようにとの目印。

善が悪に打ち勝ったことを記念するガルンガン。お祭りのごちそうを作り、親戚やご近所で互いの家を訪問し合い、盛大にお祝いをします。

日本もお盆には家族・親戚が集まったものですが、みんなの顔が揃う機会も減ってきました。日本のよき風習ですから、ご両親や親戚にご無沙汰気味の方、お電話だけでもしみてはいかがでしょうか。お話しているうちに、自分の原点に帰った気がするかもしれませんよ。

さて、昨日「ふるさと納税」を考案されたベンチャーキャピタリストの村口和孝さん(日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合代表)とお会いする機会がありました。村口さんと言えば、DeNAなど名だたるベンチャー企業を上場させたことでも有名なキャピタリスト。ビジネス全開のオーラを想像していたのですが、アナログな面をたくさんお持ちの素敵な方でした。

徳島県の風光明媚な漁業の町のご出身。これといった産業もなく、若者たちは高校卒業と同時に都会へ。村口さんも御多分に洩れず高校卒業後、東京の大学に進学されました。人口ピラミッドは18歳を境にガクンと激減。高齢化で税収は細り、ますますさびれる悪循環。典型的な過疎の町の様相を呈していたそう。

「田舎のお父さん、お母さんたちは自分たちの消費を抑えてせっせと仕送りするわけですよ。でもね、そのお金が落ちる先は都会。就職した子供が働いて納めた税金も都会へ吸い取られていくばかり。結局、一生懸命に息子・娘を育て、すぐれた人材を世に輩出したにもかかわらず、その先行投資は結果は地方へはさっぱり返ってこないわけです」

そこで思いついたのが、地方出身者が税金の一部を出身地へ納め、そのお金を地方で創造的に使えるようにする「ふるさと納税」。日経の夕刊コラムにそんな提案を投稿したのが2006年のことだったそうです。

先行投資と回収といったキャピタリストらしい一面を見る一方で、「ふるさと」という和ことばにこめられた思いも感じました、家族や先祖を大切にし、美しい自然を尊ぶのは日本人の美徳ですよね。

村口さんにも忘れられないふるさとの情景があるそう。

ウィラナタ『満月の夜に 〜フルムーン・ガルンガン』

ウィラナタ『満月の夜に〜フルムーン・ガルンガン』
油彩/キャンバス 60cmx80cm

「中学生の時に、水泳の練習からへとへとになって帰り、二階の勉強部屋から外を見たときに、ほとんど真っ暗な中、虫だけが鳴いていて。でも、じっとみているとうっすらとそこにモノとか植物の気配が感じられるんです。それを写生で描きたくなって、でも、うまく描けなくて。。あの絵にならない、圧倒的な存在感と空気感が凄く魅力的で、よく屋根に上がって、星空や周囲の山をずっと見ていたりしましたっけ」

誰の心の中にもこんな原風景がありますよね。それを何かの折にふと思い出し、つらい時にも頑張る力をもらえたりします。初めてバリ島を訪れたとき、懐かしい幼なじみに出会ったような気持ちになったのも、子供の頃の情景をバリ島の田園風景に重ね合わせたからかも知れません。そんなバリと日本の共通点をお話しすると、村口さん一言。

「日本人のルーツはバリにあるかもよ 笑」

 村口説に一票投じたいと思います^o^

<お知らせ>

8/23(Sun) 第3回バリアートサロン「見れば見るほどおもしろいバリ島の風俗画」

バリ島の風習に触れながら、人々の生活を描いた風俗画の魅力をお伝えします。

 

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2015.8.8

注文制作の醍醐味

こんにちは、坂本澄子です。

暑いですね。猛暑の記録更新中の日本ですが、冬のバリ島は比較的過ごしやすく、大きなお祭りが終わった今、画家たちはみな制作に打ち込んでいます。

「バリアートショールーム」では、最近ご注文制作の比率が増えてきました。既にある作品を元にお部屋にあわせたサイズで制作したり、バリの風景に登場人物を入れて描いたりと、ご希望にあわせた作品作りのお手伝いをしています。今日はそんな現在進行中のお話を2つご紹介します。

注文制作はお高いというイメージがありませんか?画家が同じであれば、既製品とあまり変わらないのです。むしろ苦労のしがいがあるのは、お客様のあたまの中にぼんやりと存在する、まだ見ぬ作品イメージをどうご一緒に実現するかなんです。

サイズを変えるだけなら簡単と思われるかも知れませんが、これが意外に難しいのです。

『満月の夜に 〜Fullmoon Galungan』 WIRANATA

『満月の夜に 〜Fullmoon Galungan』 WIRANATA

ウィラナタさんに60cmx80cmの『満月の夜に』(写真左)を30cmx50cmで描いてもらっています。面積としては約3分の1。そっくりそのまま縮小すると細かくなりすぎて、見る人が自由にイメージを膨らませる余白的な部分が損なわれてしまいます。やはり、サイズにあった別の絵にする必要があるのです。

そこで、お客様がこの作品のどこを気に入っておられるのかを伺い、「空にかかる月と水に映った2つの月、そして、月の光とは対照的な暖かみのあるもう一つの光」という設定だけは変えず、後は自由にお願いしました。先日、途中経過の写真が送られてきましたが、幻想的な雰囲気はそのままに、元の作品とはまた違ったとても素敵な作品になりそうです。

元になる作品がなく「こんな感じで…」と、ご依頼を受けることもあります。ソキさんの特別企画をご覧になったお客様から、「じゃあ、こんなのは」と、ソキさんの描くバリの風景と「あるもの」を融合できないかとのご相談を受けました。最初は私自身もイメージがわかず、とにかくご希望をお聞きしながら、ラフスケッチを描かせていただきました。(絵をやっていてよかった^o^;)

結局、3回描き直しましたが、完成形をお客様としっかり共有でき、ソキさんにも具体的なイメージを持ってもらえました。後は画家を信頼して任せるのみ。「あるもの」とは空想上の生き物。もちろんソキさんも私も見たことがありません。それをどうソキワールドと融合できるのか、正直ドキドキしましたが、さすがバリの巨匠。ソキさんらしいアレンジで、エネルギーに溢れた作品になりそうです。

注文制作の醍醐味は、画家とお客様を繋いでの共同作業の中で、ドキドキ、ワクワクを共有できることにあります。そして、できあがった作品は画家があなたのために描いてくれた世界でただひとつのアート。もちろんあなたご自身を絵に入れてもらうこともできます。記念日にもぴったり。注文制作のお問い合わせはこちらからどうぞ。

 <関連ページ>

ご注文制作はこんなふうに進めます

ソキ特別企画 ご好評につき継続中

ウィラナタ作品ページ 

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2015.8.5

第3回「バリアートサロン」は風俗画

こんにちは、坂本澄子です。毎日暑いですね〜。

朝、日の出と共に暑さで目が覚め、起きて絵を描くというかなり健康的な生活を送っています。今描いているのはバリをテーマにしたちょっとシュールな作品。仕事から疲れて帰ってソファでうたた寝していると、背後に飾られた大きなバリの風景が夢の中に侵入。やがて現実と夢の境目がなくなる不思議な感じを描いています。完成したら、また見てくださいね。

さて、毎回異なるテーマで作品を選び、作品を鑑賞しながら題材にまつわるお話をさせていただく1時間のトークイベント「バリアートサロン」、第3回となる8月はバリ島の風俗画を取り上げます。

『村の生活〜稲刈り風景』 LONDO

『村の生活〜稲刈り風景』 LONDO

古来バリ島では、芸術・芸能は天界と人間界を繋ぐものとして位置付けられ、絵画ではもっぱら神話の場面が描かれていました。

1920年代になり「最後の楽園」ともてはやされたバリ島へ続々とやってきた西洋人は、絵画の技法のみならず、芸術に対するマインドの点でもバリの画家たちに大きな影響をもたらしました。その結果、制作の題材として民衆の生活そのものに目が向けられるようになり、バリ独特の世界観や文化・風習が描かれるようになったのです。  

今回はバリの農村を舞台に信仰と人々の生活を描く女流作家アリミニ、明るいエネルギーあふれる色彩で祭礼の島バリを描くソキ、ロンドなどの作品を展示し、伝統的なバリの暮らしをご紹介します。

絵画に描かれた題材の意味や背景がわかると、もっともっとバリ絵画を楽しんでいただけますよ。ぜひご一緒に学んでみませんか? 

 

第3回『見れば見るほどおもしろいバリ島の風俗画』  開催要領

ブログ211_サロン

日 時:8月23日(日) 11:00-12:00

場 所: バリアートショールーム 「有明ショールーム」

東京都江東区有明1丁目2−11

ゆりかもめ「有明テニスの森」駅 徒歩7分 

りんかい線「国際展示場」駅 徒歩16分

都バス都05系統「かえつ有明中高前」バス停より徒歩1分

 

「バリアートサロン」は事前申し込み制です。定員6名に達し次第、締め切りとさせていただきますので、こちらの申込みフォームよりお早めにお申し込みくださいませ。

 

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2015.8.1

夏恒例! 阿佐ヶ谷バリ舞踊祭

こんにちは、坂本澄子です。

今年もやってきました、阿佐ヶ谷バリ舞踊祭。昨年もこのブログでご紹介したので、覚えてくださっている方もおられるかも知れませんが、阿佐ヶ谷の七夕祭りにあわせて、神社の能楽堂を舞台に行われる2日間の舞踊祭です。毎年100名を超える国内有数のバリ舞踊家やガムラン奏者が一同に会し、バリの伝統舞踊から現代の創作舞踊まで様々な種類の演目を楽しめます。今年で14回目。

DSCF6963大きな樹々に囲まれた広い境内には時折心地よい風が吹き、昼間のうだるような暑さがすっと引いていきます。境内にチャナンを供えて回る踊り手の皆さんの姿。バリ舞踊が天界と人間界をつなぐ神聖なものであることを思い出させてくれます。毎年、この場所を提供してくださっている阿佐ヶ谷神明宮の神主さんも相通じるものを感じられたと伺いました。

 

初日は9つのプログラムが披露され、いつもながらバリ舞踊の幅広さと奥深さに魅了されました。中でも特に素晴らしかったのが、第2部の『クビャール”光”〜日輪の女神、天の岩戸幻想〜タルナ・ジャヤ』です。阿佐ヶ谷神明宮への奉納舞踊として演じられたもので、ここに祀られている天照大神の『岩度隠れ』伝説を取り入れた創作舞踊と伝統舞踊を組み合わせた珍しい演目。

私たちにも馴染みのあるストーリー展開の中、ガムラン隊の素晴らしい演奏、14名の踊り手それぞれの役に応じた迫力のある踊り、そして、工夫を凝らした衣装…と、見所満載。ラストに天照大神が舞うバリ伝統舞踊『タルナ・ジャヤ(若き勝利者の舞)』は圧巻でした。私は舞踊はまったくのド素人ですが、その見事さにただただ引き込まれます。会場も静まり返り、その一挙手一投足を追っていました。

そこで、写真とともにその内容をご紹介したいと思います。動きについていけず、ピントが合っていないものもありますが、雰囲気だけでも感じていただければ幸いです。

DSCF6954天照大神(アマテラスオオミカミ)は 、古事記によると、弟神、須佐之男命(スサノオノミコト)の暴挙に困って天の岩戸にお隠れになり、世界は闇に沈みました。

写真は、須佐之男命の乱暴ぶりをあらわす激しい舞。手前はそれに合わせて楽器をうちならすガムラン隊。

ちなみに、須佐之男命は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治したことでも有名ですね。

DSCF6966(左写真)松の前で向こうを向いて座っているのが、岩戸にお隠れになった天照大神。その手前で舞っているのが、「困った、どうしよう」と知恵をしぼる八百万の神々の姿です。

 

 

 

DSCF6969そこに現れたのが天宇受売命(アメノウズメ)。岩戸の前で楽しそうな舞を披露し、その姿を見た神々は大笑い。天照大神は「外は真っ暗闇のはずなのに一体どうしたのだろう」と訝しく思い、岩戸をほんの少しだけ開けます。

そこをすかさず、怪力の天手力男神(タメノダジカラオ)がグイと引っ張り出し、再び光と喜びに満ちた世界が戻ってきました。

DSCF6985ラストの「タルナ・ジャヤ」は、「成功を勝ち取り、大人の世界に足を踏み入れた」若者の自信に満ちた気持ちを表現した踊り。もとは2人で踊るものだったそうですが、ダイナミックな動きが多くふたりの動きを合わせるのが難しいこともあり、最近では単独で踊ることが多いそう。

踊り手の力量が要求される踊りだと思いますが、本当に素晴らしかったです!

 

 

この阿佐ヶ谷バリ舞踊祭は入場無料。出演者はもちろん、運営を行うスタッフの方々も含めてすべてボランティアによって成り立っています。踊りを習うためバリの先生のもとに通い、衣装を揃えられるだけでも経済的には相当な負担のはずですが、バリに惹かれた人にお会いするたび、その分野は何であれ「この魅力を伝えたい」という強いエネルギーのようなものを感じます。

今日も8月2日(日)17時開演。昨日とは違うプログラムが楽しめます。インドネシア料理やビール、雑貨を販売する屋台もありますので、ぜひ行ってみてはいかがでしょうか。

<関連サイト>

バリ舞踊祭公式サイト

 

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