バリアートショールーム オーナーブログ
2016.2.17

「いま」をともに生きる、現代アーティストたち

こんにちは、坂本澄子です。

現代アートはちょっとね…という方も少なくありませんが、私は機会を見つけては見に行くようにしています。ただまっ白なだけの作品だとさすがにお手上げ〜ですが、先日見た「村上隆の五百羅漢図展」はかなりグッときました。

会場は六本木ヒルズにある森美術館。自由な発想や展示で定評のある美術館で、前衛的な作品の展示も含めて、他にはない大胆さやユニークさを感じることもしばしば。今回も写真・録画OK。どんどんシェアしてくださいというわけです。実際に見た人からのポジティブなコメントほど人を動かすものはありませんものね。

展覧会のメイン作品『五百羅漢図』は2012年にカタールで発表され、日本では今回が初公開。白虎、青龍、朱雀、玄武という中国の四神をそれぞれモチーフにした4点から構成される作品の全長はなんと100メートルという大作です。

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『白虎』この左側にもまだまだ続きます

アニメの背景画を描くアーティストになりたかったという村上さん。絵巻物の火炎表現やアニメーションの爆発シーンなどを参考にしたという、写真の『白虎』の背景は赤という強い色使いもあり、4つの中で特に印象に残りました。

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『朱雀』(部分)

実際の作品を前にすると、その大きさに圧倒されるだけでなく、作品全体を貫く大きなうねりのような躍動感がズドーンときます。

スケール感だけでなく細部もおもしろく、例えば、羅漢の着物の色や模様がそれぞれ異なるのはもちろん、キャラクターの違いまで500体ちゃんと描き分けられています。握り飯を握るこの羅漢さん(写真)を見たら、モーレツにお腹が空いちゃいました。時間を忘れて3時間近くも会場にいたのですから。「あー、お腹すいた〜、でも、まだ出るのが勿体ない」そんな葛藤です。

 

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これが指示書。やり直しを指示する厳しいコメントが。

この大作に取り組むにあたり、村上さんは美大生を中心にスカウトキャラバンを行い、チームを編成。総勢200名が24時間シフトで制作にあたったそうです。

作品の中心となる羅漢は800点もの下絵を描いた後、そこから500点を選び、さらにそれぞれをブラッシュアップするというこだわり。

スタッフに出す作業指示書も膨大な量にのぼり、仕上がりに妥協を許さない厳しい制作現場のリアルな様子が紹介されていました。

 

ちょうど今読んでいる原田マハさんの『ロマンシエ』(この本を読んでいる理由は2月10日のブログをどうぞ)に、現代アートのすばらしさを登場人物が次のように語る場面がありました。

「ピカソもマティスもシャガールも、そりゃあ素晴らしい。だけど、彼らの創ったものに感動して、その気持ちを直接伝えたいと思っても、彼らはもういない。だけど、今を生きているアーティストは違う。もしも彼らにメールを送ったとしたら……『感動しました』って伝えたとしたら、ひょっとすると、返事が来るかも知れないんだ。『ありがとう』ってね」

同じ時代、同じ時間、同じ瞬間。「いま」を、ともに生きているアーティストたち。そんなワクワクした気持ちが味わえる展覧会です。

ところで、バリアートショールームで扱うバリ絵画も、その意味でまさに現代アートです。幻想的な光の風景で世界中にファンを持つウィラナタ(Wiranata)も、「今を生きるアーティスト」。つい先日も連絡をもらいました。バリ島ではちょうどガルンガンからクンニガンに続く一連の祭祀の真っ最中。かなり忙しかったはずなのにと思い、嬉しかったです。次回はそんなウィラナタの最新作をご紹介します。

<関連ページ>

「村上隆の五百羅漢図展」 3月6日まで。22時まで開いてるのも嬉しい。

Wiranata 30x50 6ウィラナタ作品ページ 最近はこんな格好ですが(だんだん若くなっている?!)、彼の描き出す作品は相変わらずとても繊細

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