バリアートショールーム オーナーブログ
2016.7.24

ニューヨークでアートな休日 MET編

こんにちは、坂本澄子です。

前回のMoMA編にコメントをいただきました。展示していない作品(Not on view)も、事前に言っておけば見せてもらえることがあるそう。そういうところ、アメリカっぽいというか、素敵だなと思いました。さて、今回は所蔵点数300万点を超える世界最大級の美術館、メトロポリタン美術館です。

あまりに広く、見どころありすぎ、結局何をみたのかわからなくなってしまった前回。確か20代後半で、アートよりもショッピングに興味があった頃。ニューヨーク出張の際に同僚たちと来て、「じゃあ、◯時にここで待ち合わせ」とロビーで別れた後は、広い館内をただあてもなく歩いてました。そんな反省を踏まえ、今回は見たいコーナーを絞りじっくり鑑賞しました。

DSCF147410時の開館前、正面出入り口には既に長い列。チケットを買って、展示室に入るまで30分近くかかりましたが、巨大な建物を2Fへ直行する途中、他の人たちは次々と展示室に吸い込まれ、フェルメールの展示室に着いた時には、他に人影もなく独り占め状態。世界に30数点しかないフェルメールの作品が5点も展示されており、30㎝の至近距離から、こころゆくまで鑑賞することができました。特別フェルメールのファンというわけではないですが、やっぱりすごい、鳥肌ものでした。

 

展示室の中にはお部屋のように内装されているところもあり、個人宅に招かれたような感覚で名画を鑑賞できました。

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シャンデリアに暖炉のゴージャスなお部屋。ソファに座ってゆったりと鑑賞できます。右の2点はエルグレコ。教会で見上げるようにして鑑賞されることを想定し、顔を細めに描いているのが特徴です

建物の中はところどころ吹き抜けになっています。天窓から燦々と差し込む自然光の下には彫刻作品が展示されていました。

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まるごと持ってきた建物のファサードや柱が至るところにあります。

展示室は500室以上ありますが、よく見ると、各部屋の上部には◯◯ギャラリーと表示があります。実は、膨大な所蔵作品の多くはコレクターから寄贈されたもの。アメリカでは美術品を寄贈すると税金から控除されるため、作品が集めやすいのです。中にはコレクターの蒐集意図が感じられるコレクションもありました。

例えば、印象派の画家ドガの作品はバレエの踊り子たちを描いた作品で有名です。一見、華やかな場面を描いているようで、実は、社会の底辺であえぐ人々を描いているんです。

踊り子のほとんどは恵まれない家庭環境に育ち、家族を助けるために、舞台で脚を上げ、エトワールをめざして稽古に励んでいます。エトワールになれれば給金も上がり、病気のお父さんを助けられ、苦労しずくめのお母さんを楽にしてあげられる、そんな一心。

踊り子の作品には、可憐な少女とはおよそ不釣り合いなオジサンがちょくちょく登場していますが、それは彼女たちを愛人に品定めしているパトロンというわけです。(注:上の絵のオジさんは舞台監督)

モデルを前に制作を行うドガは、そんな踊り子たちのひとり、14歳の少女に様々なポーズをとってもらいスケッチを行いました。それをもとに蝋のフィギュアを何体も作ったほど、しなやかな身体の動きを精緻に再現しようとしました。のちにブロンズに鋳造された10数㎝ほどの小さな彫刻が展示室にもずらりと並んでいました。また、半ば娼婦に身を落とし客待ちをする姿をパステルで描いた連作も多く展示されています。

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ブロンズですが、後ろに束ねた髪の毛にはリボンが。また、シフォンのバレエスカートを履いています。制作当時はまつ毛まであったそう。

伝統的な絵画技法を重んじる官展の前で印象派は異端だった時代。芸術の世界で懸命に闘っていたドガは、恵まれないながらも懸命に生きる少女の姿に、魂に共振する何かを感じたのでしょう。よく絵画は時代を映すといいますが、コレクターもそんな背景を捉え、作品を集めていったのかも知れません。

ところで、MoMAもそうでしたが、エアコン寒すぎ。これって何とかならないものでしょうかね^o^;

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