バリアートショールーム オーナーブログ
2013.5.29

エベンさんのバリ絵画描き方講座

こんにちは、坂本澄子です。先週のバリも暑かったですが、日本も負けず劣らず蒸し暑くなってきました。近畿と東海地方では早くも今日梅雨入りしたようですね。

今回バリに行って嬉しかったのは花鳥画家のエベンさんと再会できたこと。エベンさんは私が初めてバリを訪れた時に、四日間絵の弟子入りをした人(詳しくはコラムをご覧下さい)。彼の作品が私をウブドに導いてくれたのですから、私にとってある意味、特別な画家さんなのです。そんな訳で、ちょっとお恥ずかしいのですが、絵を習ったときの模写を例に、バリ絵画の典型的な描き方をご紹介したいと思います。制作過程を知っていただくことで、バリ絵画をさらに身近に感じていただければ幸いです。

ブログ30制作プロセス

まず鉛筆で下絵をしっかり描きます。次に黒で陰影をつけます。この時、水をたっぷり含ませたもう一本の筆でぼかすように濃淡をつけるのがポイント。乾いたら、その上に色を重ねます。基本的には背景→手前の順番に塗り重ねていきます。バリ絵画では多くの場合、アクリル絵の具を使います。水彩絵の具と同じように水で溶いて簡単に使える上に、乾くと耐水性なので、作品の美しさを長く保つことができるのです。

ブログ30竹筆仕上げにバリ絵画に特徴的な竹筆が登場。作品に合わせて画家が自作するもので、この作品では、葉の輪郭や葉脈など強調したい箇所にシャープな線を描いたり、プルメリアやオウムのくちばしにハイライトを入れたりするのに使いました。これで絵にグッとメリハリがつきました。最後はエベンさんの作品の最大の特徴である野鳥の羽毛です。細い筆を使っておなかのふかふか感と翼のしなやかさを描き分けていきます。これで二羽のオウムがこの絵の主役になりました。完成〜。

この作品の原画と私の習作模写は今でも我が家に大事に飾ってあります。これを描いた時には、自分がバリ絵画を扱うようになるとは想像すらしていませんでした。思えば不思議な出会いです。これと前後してアートルキサンの木村さんとの出会いがあり、IT業界からバリ絵画という全く別の世界へ道が繋がってしまったのですから。私がこの年齢になってまったく違う世界に飛び込んだのを見て、以前の同僚は「意志あるところには道が拓けるね」と言ってくれました。次に会う時には「思い切ってやってみてよかったね」と言ってもらえるよう、さらに努力を重ねていきたいと思います。

久し振りにエベンさんを訪ねると、変わらぬ笑顔で迎えてくれました。少し前にお客様から「新築のリビングに飾る大きな絵」のご注文をいただき、制作をお願いした作品にかかっているところでした。4月の展示会でもエベン作品は人気が高かったので、7月のバリ絵画展「緑に抱かれる午後」も楽しみにしていて下さいね。

2013.5.25

絵画展での新たな試みと小説連載

ブログ29青い海こんにちは、坂本澄子です。無事バリから帰国しました。ウブドを発った後、海辺のヌサドゥアで二泊しました。ここは現地の人々の暮らしから隔絶された外国人のための青い海のリゾート。洗練された施設はバカンスを過ごす場所としては最高ですが、私はやはりウブドの素朴な生活と田園風景に惹かれます。私のバリとの出会いが、多くの人が辿る海側ではなく、「向こう側」から始まったことを改めて嬉しく思いました。

さて、GW中にこの「バリアートショールーム」への来訪者が1000名を超えたことをお伝えしましたが、繰り返しこのサイトを訪れて下さっている方が増えていることを大変光栄に思っています。オープン以来、バリ絵画の販売サイトが数ある中で、単に作品のご紹介ではなく、その誕生や進化の歴史、モチーフの文化的背景、さらには表現者としての画家個人の人となりに迫ってみたいと思ってきました。7月のバリ絵画展「緑に抱かれる午後」はこれをもう一歩進めて、テーマと視点を取り入れる試みに挑戦しています。

#2展示会イメージ画像私は長年ビジネスパーソンとして企業に勤めて仕事をしてきました。業種、職種の違いこそあれ、このサイトを見て下さっている方々と、現代社会で生きる日本人としての物の見方や感じ方は比較的近いのではないかと思っています。絵画を特別なものではなく、もっと皆様の日常の生活に取り入れていただくためにも、何がしかの視点を持って紹介した方がよいと考えたのが、この新たな試みの理由です。「緑に抱かれる午後〜Deep into the Forest〜」はインフォメーションでもお伝えしています通り、心の奥底に眠っている原風景に出会うことで、ひとときの心の休息と、現実に向き合う力を得るきっかけとしていただきたいと願っています。私自身がそうであったように。

もうひとつ考えていることは、私がこの20数年間の会社生活を通じて経験してきたことが何かのお役に立てないかということです。誰もが似たようなことで苦労しているのだとわかれば、随分気が楽になるものです。そこでそれを小説という形で表現してみました。登場人物やストーリーはフィクションであり、また、舞台となっている年代や業界の違いなど、現在それぞれの方が置かれている環境とは異なる点は多々あると思いますが、本質的な部分で何か感じ取っていただければ幸いとの思いです。

この小説はバリ絵画とは直接関係がないため、別にサイトを設けて週1回連載していきます。スタートは7月を予定していますので、詳細が決まりましたら、お知らせしますね。

2013.4.23

「バリ絵画展」たくさんのご来場ありがとうございました

こんにちは、坂本澄子です。バリ絵画展「青い海を描かない作家たち」に多くの方にご来場いただき、誠にありがとうございました。中には冷たい小雨まじりの中、遠方から足を運んで下さった方もあり、感激致しました。これだけまとまった形でバリ絵画を見たのは初めてという方も多く、スタイルの豊富さとそれぞれの奥深さを楽しんでいただけたのではないかと思います。

限られたスペースではありましたが、バリ絵画を代表する6つのスタイルから合計27点の作品を厳選して展示しました。入口を入ってすぐ左がバリ絵画の伝統的なスタイル、正面が細密風景画のシュピース・スタイル、右奥が熱帯花鳥画及びモダンと時代を追って見ていただける展示構成にしていました。バリ絵画の歴史と各スタイルの解説をじっくり読まれるお客様も。

ライさんの細密画は男性に人気

ライさんの細密画は男性に人気

アンケートを拝見しますと、気に入った画家のトップ3は僅差で、ガルー(細密風景画)、ラバ、エベン(いずれも熱帯花鳥画)が並び、田園風景や緑に抱かれるような花鳥画に親しみを感じた方が多かったのと、バリ絵画ならではの細密画も人気で、特に男性の方がライさんの作品の前で足を止めてじっくりと見入っておられるのが印象的でした。画面にぎっしりと描き込まれたこのスタイル、モチーフの意味がわかるとバリの文化や人々の生活が見えてくるのも楽しみのひとつです。描かれているものの背景を知っていただきたいと、解説やバリの風景のスライドーショーなど、展示上の工夫もしましたが、それぞれに楽しんでいただけたようです。

最期にアンケートのコメントの一部をご紹介します。常設やさらに多くの作品展示を希望される声などありがたいご意見ばかりで本当に励まされました。次回もどうぞお楽しみに。アンケート

 

2013.4.20

素晴らしい出会い

こんにちは、坂本澄子です。昨日からバリ絵画展がスタートし、同じタイミングでホームページを全面公開しました。ブログだけが先行した状態だったにも関わらず、多くの方に「バリアートショールーム」を訪れていただき、時には温かい励ましのコメントをいただきました。本当にありがとうございます。

今日はこのホームページを立ち上げるにあたり、大変お世話になった株式会社シンクマックスの加藤朝子社長、そして以前のブログにも書いた中山マコトさんとの出会いをご紹介したいと思います。

バリ絵画に強く惹かれながらもキャリアチェンジへの第一歩が踏み出せなかった頃、たまたま駅の本屋で目に入った「フリーで働く!と決めたら読む本」がきっかけでした。そのタイトルは、私のその時のもやもやした心の中にすっと入っていくのを感じました。引き寄せられるように手に取ると、電車の中で降りる駅を乗り過ごしてしまうのも構わず、むさぼるように読みました。まるで私のために書かれたと思えるくらい的確に、不安に思っていたことのひとつひとつに対する答えがそこにありました。もうお分かりかも知れませんが、その著者が中山さんです。

中山さんは今では著書を20冊以上(私が読んだのはその当時最新作でした)もお持ちの、業界でも知る人ぞ知るマーケティングのプロです。しかし、独立当初は色々なご苦労もされ、もがきながら学んだ経験とそこから来るアドバイスがご自身の言葉で熱く語られていました。その中で特に私の心を捉えたのは、万人にウケることを目指すのではなく、「あなたの能力を心から必要としているのはどんな人なのかを徹底的に考えよ」という言葉でした。まさにタイトル「フリーで働く!と決めたら読む本」が好例の通り、あるピンポイントな状態にある人(=自分の能力を生かせる相手)にシンプルだが一旦刺さると抜けない言葉で語れと言われていました。私はバリ絵画の物販自体をやりたかったのではなく、私の生き方、考え方を含めて共感して下さる方(お客様)と絵画という表現手段を通じて一生もののおつきあいをしたいと思っていましたが、それが市場として存在するのかについては不安がありました。それに対する答えが上記の言葉だったのです。私は背中を押されるのを感じました。

中山さんは私のやりたいことを一通り聴いて下さった後、そのメッセージを「必要としている人の心」に届くようにするためのホームページの設計図を提案し、それを構築する制作会社としてシンクマックスの加藤さんを紹介して下さいました。加藤さんもWebマーケティングのプロとして素晴らしい働きをして下さいました。私は時々思いつきで突っ走ってしまうところがあるのですが、加藤さんのいい意味での頑固さが、最初に決めた基本コンセプトという根幹部分で軸足がぶれてしまわないよう守ってくれました。それは「ここに、あなたが知らないバリがある」に表現されています。スタッフの坂東さんも初めてだらけの私の質問にいつも迅速に対応して下さいました。お二人に共通していたのは、「それは私たちの仕事の範囲ではありませんと線を引く」事なく、自分たちの価値は私のビジネスが成功して、つまりその先のお客様に何らかの価値を与えて、その結果としてビジネスをいただけて「なんぼ」だという姿勢を貫き、常に同じ目線で物事を一緒に考えて下さったということです。私も前職でITに関わった経験がある者として、最期の一週間はシステムの稼働に不安がありましたが、最期まで仲間として一体感を持ち続けることができたのは、まさにこの点によるものと思います。

私は前職時代にも優秀な仲間と志を同じくし苦楽を共にして働くことに大きな喜びを感じていましたが、今回も同様、ここにご紹介した仲間たちがいなければこのサイトは実現できなかったし、新たなビジネスのスタートをきる事もできなかったと思います。この場をお借りして、中山さん、加藤さんに深くお礼を申し上げると共に、素晴らしい仲間がこのホームページ、そして私の活動そのものを支えてくれているのだということをお伝えしたいと思います。まだ始まったばかりで、改善すべき点、新たに取り組むべき点が多々あると思いますが、このサイトが皆様のお気に入りのひとつとなり、皆様に対する何らかの価値を提供する場となりますよう努力を続けていきたいと思います。

2013.4.17

表現者としての私

こんにちは、坂本澄子です。いつもバリ絵画のご紹介をしているので、今日は私自身が絵を描くことについて、お話をさせていただきたいと思います。

近日公開予定の「バリアートショールーム」の私のプロフィールの中でも触れているのですが、自分の楽しみで絵を描いています。最初は見よう見まねで、次に好きな画家の作品を模写をかなりやりました。マグリット、ゴッホ、マチス、クレイ、ルソーなど。ようやくオリジナルな作品が描けるようになったのはここ2〜3年でしょうか。

縁あって5年前から東京荒川区の絵画教室に通っていますが、明輪勇作先生がふと口にされた言葉によって大変勇気づけられたことがあります。それはこんな言葉でした。「人生の後半戦の入り口が絵の世界ではむしろ新人。これまでの人生でいいものがいっぱい蓄積されている。後はそれを取り出しキャンバス上に再構成する技術さえ身につければ、いい絵が描けるようになるよ」

坂本澄子「ウブドの思い出」 パステル P30

坂本澄子「ウブドの思い出」
パステル P30

以来、絵を描くことは私にとって心を解きほぐす時間、自分の内側にあるものをアウトプットする機会へと変わっていきました。そんな中いつか描きたいと思っていたのがバリの風景。私が行くのはなぜかいつも雨期で、昼過ぎから強いスコールが降ります。大抵1〜2時間降るとやんで、雲間から明るい空が顔を出すのですが、水田に映った空がイメージとして頭の中にありました。それを取り出して表現してみたい。明輪先生の熱心なご指導の下、その作品が先日ようやくでき上がりました。中央美術協会の東京中美展に出品、優秀賞をいただくことができ、二重の喜びとなりました。

バリの画家さんたちも同様に絵に向き合う時様々な想いがあるのではないかと思います。今度、アトリエを訪ねる時にはそんなお話も聴ければと思っています。

2013.3.27

【4月19-21日】原画でしかわからないバリ絵画展の見どころ

4月19日〜21日、東京のパレットギャラリー麻布十番にて、バリ絵画展「青い海を描かない作家たち」を開催します。近年、画像処理技術は格段に進歩していますが、それでも現物を見て初めて伝わることは意外に多く、私が原画にこだわる理由もここにあります。今日は、そんな表現者たちの制作意図と工夫をご紹介します。東京近郊にお住まいの方が中心になってしまいますこと、お許しくださいね。

 GALUH「黄昏の静謐」

GALUH「黄昏の静謐」 油絵/キャンバス 60㎝×40㎝

GALUH「黄昏の静謐」
油絵/キャンバス 60㎝×40㎝

この作品を見て、水田への映り込みの方が実際の空よりも明るいことを初めて知りました。写真ではやや沈んだ印象を持たれるかも知れませんが、原画を前にすると周囲の落ち着いた色調がゆえに、手前の鏡のような静穏さが尚の事感じられるのです。暮れなずむ空を映して朱と藍が淡く滲み合う水面と家鴨たちのシルエットの対比は心憎いほど繊細な表現力。画家自身が「最も苦心し、最も気に入っている箇所」と称した場面です。同じシュピース・スタイルの画家である実弟クパキサン氏の作品も2点展示します。早朝と黄昏時の空気感の違いも見ていただきたいポイント。なお、展示会期間中に「黄昏の静謐」を購入(インターネットでのご注文も承ります)されたお客様にはGALUHさんからのプレゼントを用意しています。

ANTARA「Sweet Daydream〜夢見る頃」 アクリル/キャンバス 60㎝×50㎝

ANTARA「Sweet Daydream
〜夢見る頃〜」
アクリル/キャンバス 60㎝×50㎝

ANTARA「Sweet Daydream〜夢見る頃」

先週仕上がったばかりの最新作。少女の淡い甘美な想いがキャンバスいっぱいに伝わり、幸せな空気に包み込まれるようです。バリの砂を絵の具に混ぜて下地を作るのがANTARA作品の特徴。きめ細かい砂の温かな質感は氏の創作テーマである”LOVE and JOY”とバリ女性の肌の色を表現するのに一役買っています。今回ANTARA氏の作品は本画2点、木炭スケッチ2点を展示します。スケッチも見どころのひとつ。州都デンパサールの美大に在学中、最優秀デッサン賞を受けたこともあるほどの腕前。その清新なタッチは人物の内面性までも描き出しています。期間中に本画作品を購入(インターネットでのご注文も承ります)されたお客様にはANTARAさんからのプレゼントをご用意。詳細は展示会初日に発表します。

LABA「若豹の憧憬」 アクリル/キャンバス 55㎝×75㎝

LABA「若豹の憧憬」
アクリル/キャンバス 55㎝×75㎝

LABA「若豹の憧憬」

深い緑の密林を背景に、つがいの文鳥を好奇心いっぱいの瞳で見つめる若い豹。LABA氏の描く動物は目に特徴があります。幾つもの色の細い線で描き込まれた瞳は瑞々しい生命力に溢れ、まるで人間のように個性を持って描かれています。画家自ら選んだバリ彫刻が施された額装も作品の一部として味わいを添えています。LABA氏の作品は今回3点を展示します。それぞれ異なるモチーフを扱いながらも作品に共通する独特の世界観“LABA’s WORLD”をお楽しみ下さい。

以下の作品写真はブログ「【号外】バリ絵画展 4月開催決定!」に掲載しています。併せてお読み下さいね。

ARIMINI「バリ島物語 」

画面いっぱいに描き込まれた各場面が全体としてひとつのテーマ(信仰と生活)を形成しています。神話の登場人物と村人の生活が描かれた作品は、ARIMINI氏の得意とするモチーフ。物語にあわせて見る人の視線が画面上を流れるように構図と色の配置に工夫がなされています。今回は作品2点を展示し、会場にはモチーフに関する理解を深めていただくための解説を用意しています。

SOKI「実りの季節」

バリの村人たちの生活が極彩色で描かれた楽しい作品。それぞれの場面の意味を理解できると、バリの文化や村人たちの生活、さらにはその背景にあるものまでも見えてきます。それも絵画の楽しみのひとつ。会場にはそんな仕掛けを用意しています。

RAI「牛飼いのレース」

バリの大地を思わせる茶を基調とした色合いの作品。よく見ると、微妙な色の違いや濃淡による描き込みによって、作品に奥行きと躍動感を与えているのがわかります。時間と手間を惜しみなく掛けて一枚の作品を仕上げる、農民画家RAIさんならではの丁寧な仕事ぶりをご覧下さい。

 【バリ絵画展のご案内】

展示会案内2枚並べ

2013.3.9

【号外】バリ絵画展 4月開催決定!

※7月も開催します。詳しくはこちらから

スクリーンショット 2013-03-09 15.18.10こんにちは、坂本澄子です。先月バリで買い付けした作品が昨日届きました。現地のビジネスパートナーから「今晩のガルーダに乗りますから、明朝には日本に着きますよ」と連絡があった時から、私のテンションは上がりっ放し。画家さんたちを直接訪ねて買ってきたものばかりですから、思い入れは半端ではありません。これらの作品を一刻も早く見ていただきたいと思い、当初の予定を繰り上げ、4月に絵画展を開催します。 バリ絵画にはいくつかのスタイルがありますが、その中から6つを選び、それぞれを代表する画家の作品を中心に約30点を展示販売する予定です。

ラバ「カエルの王様(仮称)」 アクリル 40㎝×50㎝

ラバ「カエルの親方」
アクリル/キャンバス 40㎝×50㎝

1)プンゴセカン・スタイル(熱帯花鳥画)

深い緑の中に配置された原色の花や鳥、あるいは擬人化されたユーモラスな動物たちの姿に心がふっと軽くなるのを感じます。ラバ氏の作品を中心に今回の展示会で最も多くの作品を展示します。ラバ氏はバリのアルマ美術館が作品を所蔵する、プンゴセカンを代表する画家のひとりです。

2)シュピース・スタイル(幻想風景画) バリに移住したドイツ人画家ヴァルター・シュピースに影響された画家たちが描く熱帯風景画です。どこか懐かしい風景が幻想的なタッチで描かれています。非日常の世界へタイムトリップする感覚を味わって下さい。インドネシアを代表する女性画家ガルー氏(当ブログの画家紹介①をご覧下さい)と弟ケパキサン氏の作品を展示します。

アリミニ「バリの生活」 アクリル 35㎝×38㎝

アリミニ「バリ島物語」
アクリル/紙 35㎝×38㎝

3)バトゥアン・スタイル 西洋の影響を受けなかったバリの伝統技法です。遠近感がほとんどなく、画面いっぱいに描き込まれたモチーフが特徴。元来は暗い色を使いますが、明るい色調とリズムで新たな流れを作ったアリミニ氏の作品を展示します。アリミニ氏はガルー氏と並んでインドネシアを代表する女性画家で、作品はプリ・ルキサン美術館、アルマ美術館に所蔵されています。さくらももこ氏の著書「ももこの世界あっちこっちめぐり」(集英社刊)で取り上げられ、氏のデビュー20周年には合作の記念リトグラフが販売されました。今回はそのアリミニ氏の原画をご紹介します。

ライ「牛飼いのレース」 アクリル/紙 25㎝×35㎝

ライ「牛飼いのレース」
アクリル/紙 25㎝×35㎝

4)クリキ・スタイル(細密風景画) モチーフを画面いっぱいに描き込むバリ絵画の伝統手法をさらに緻密にしたスタイルで、クリキ村から発祥、現在も多くの画家が活動しているところから、その名がつけられています。田園地帯のスローライフの中で、何ヶ月もかけ完成させた作品はまさに芸術。プリ・ルキサン美術館の企画展で活躍中のライ氏の作品を展示します。

ソキ「収穫の季節」 アクリル/キャンバス 50㎝×50㎝

ソキ「実りの季節」
アクリル/キャンバス 50㎝×50㎝

5)ヤング・アーティスト・スタイル オランダ人画家アリー・スミットの弟子たちによる極彩色を用いた風景画です。稲刈り、闘鶏、祭礼などバリの伝統的なモチーフを描き込んだポップな作風は見る人の気持ちを明るくしてくれます。ソキ・ギャラリーの作品を中心に展示します。ソキ氏はアリー・スミットの直弟子で、このスタイルの草分け的存在です。作品はプリ・ルキサン美術館、アルマ美術館で所蔵されています。 6)モダン人物画 バリ絵画では新しいジャンルで、若手画家が独創性のある作品を発表しています。バリの伝統画法とは異なる魅力を感じられることでしょう。今回は写実人物画のアンタラ氏(当ブログの画家紹介②をご覧下さい)とポップな表現技法を用いてバリ女性の美しさをメッセージするボリ氏の作品を取り上げます。南国バリらしい色彩感覚やモチーフを織り込んだ作品です。 いずれの作品からも、原画ならではの画家の息づかいや思いが伝わってきます。是非、この機会にバリ絵画の魅力に触れていただければ幸いです。

2013.3.2

ご挨拶「青い海を描かない画家たち」

初めまして、バリ絵画専門サイト『バリアートショールーム』オーナーの坂本澄子です。4月下旬のオープンに先立ち、オーナーブログを開設させていただきます。今日はその第一回ということで、私のバリ絵画や当サイトに寄せる想いをお伝えしたいと思います。 バリ島というと、青い海に囲まれた南国のリゾート地をイメージする方が多いのではないでしょうか。それを仮にバリの「こちら側」とすると、私とバリの出会いは「向こう側」から始まりました。

ゆっくりと時が流れていく

ゆっくりと時が流れていく

「向こう側」ってどんな世界?「こちら側」が楽園なら「向こう側」は発展著しい新興国?

 

いえいえ、私は皆さまを懐かしくて、凛とした気持ちになれるような世界にご案内したいと思っています。

静謐な朝の風景

静謐な朝の風景

 

水田に映り込む空の表情

水田に映り込む空の表情

「向こう側」とはウブドを中心とした山側の地域。ここでは、白み始めた空の表情を水田が鏡のように映し出す頃、一日が祈りで始まります。どこまでも続く緑の田園風景が空と交わるあたりで、雲がゆっくりとその表情を変えていく、そんな世界です。

 

実は私、つい最近まで最もスピードが早いと言われる外資系IT企業にいましたので、このスローライフとのコントラストは鮮烈でした。でも、それがどこか懐かしいのです。なぜなのだろうと考えると、似ているのです、失いつつある日本の原風景に。夏休みに田舎のおばあちゃんちに泊まりに行って、いとこたちと今日はどんな冒険しようかみたいな、ワクワク感があるのです。日本にいながらそんな非日常にタイムトリップできれば最高だと思いませんか?  そんな訳で、ショールームは「青い海を描かない画家たち」による作品で構成していきます。 でも、バリの絵画もお土産屋さんで売っているようなものがたくさんありますよね。本当によい作品をご紹介するために、以下のような基準で作品を選んでいます。 1)モチーフ:バリの文化や自然の美しさを表現している作品 2)高い技術力・表現力:国内外での実績、客観的評価(美術館所蔵、受賞歴、オークションでの取引)が高い画家の作品 3)独創性:伝統技法に加えて表現者としてのオリジナリティを持つ作品 また、表現者たちの息吹を減衰することなくお届けするために、版画は扱わず、画家オリジナルの原画にこだわっていきます。 当ブログは毎週水曜日と土曜日に更新します。次回はバリ絵画の各スタイルを代表する6人の表現者たちをご紹介しますね。

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