イダ・バグース・マデ・トゴッグ
「アマドの3つの秘宝」(1937)
#001
Batuan Style【バトゥアン・スタイル】
〈主な特徴〉
- インド叙事詩やヒンドゥ神話の物語をテーマ
- 暗めの色彩
- キャンバスいっぱいに描かれた平面的構図
コロニアル時代にバトゥアン村に滞在した外国人は画家でなかったため、この地域の絵画は西洋の影響をあまり受けませんでした。暗い色彩、画面いっぱいをモチーフで埋め尽くした独特の描き方がバトゥアン・スタイルとして台頭し始めたのは1930年代のことです。
バリの古典絵画は「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」などのインド叙事詩やヒンドゥ神話の物語を題材として描かれることが多く、バトゥアン村の画家たちもテーマとして主に文学、宗教、舞踊を取り上げてきました。
バトゥアン・スタイルの作品はユニークではっきりとわかる特徴があります。ひとつの作品に描かれたいくつかの場面は物語的要素を持ち、全体としてひとつのストーリーの中で描かれています。また、小さく様式化された人物が空間を埋め、西洋技法の特徴のひとつである解剖法はほとんど用いられていません。絵は暗くミステリアスな雰囲気を持ち、宗教テーマの作品では装飾的な群葉や茂みに囲まれて行われる儀式を効果的に描き出しています。
しかし、このスタイルも年月を経る中でいくつかの変化が見られるようになりました。そのひとつが観光客を風刺的に描き、バリ人と外国人観光客とのユーモラスな邂逅を描写する画家たちです。バリの観光開発が急ピッチで進む中、このような作品はバトゥアンの画家たちの解説による一種のジャーナリズム的記録と言えるかも知れません。
さらに物語の世界と村人の日常生活をひとつのストーリーで描く作家も現れました。構図や色彩上の工夫において様々に進化し続けています。