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Young Artist Style【ヤング・アーティスト・スタイル】

〈主な特徴〉

  • 独創的な明るい色使いが特徴
  • 祭礼や農耕、闘鶏などの日常生活をテーマ
  • 左右対称、並行型の独特の構図でモチーフを配置、ストーリー性がある

オランダ人画家アリー・スミットの影響により1960年代に一世を風靡した極彩色を用いた様式

オランダ人画家が教えた色の世界】
戦前のヨーロッパの画家たちはバリ絵画に遠近法と解剖法をもたらしましたが、戦後バリにやってきたアリー・スミットは色彩を与えました。1956年のことです。島内でいくつもの場所に移り住んだ後、腰を落ち着けたのがウブドのプネスタナン村。ある日、家鴨使いの少年たちが椰子の葉で砂絵を描いているのを見かけ、強く心を引きつけられます。そして、少年の一人に自分のところに来て絵を習ってみないかと声をかけました。後にヤング・アーティストの第一人者となったイ・ニョマン・チャクラです。それから一年も経たないうちに教え子たちは40人にのぼりました。スミットの教え方は決してアカデミックなものではなく、常に実践的で、キャンバス、絵筆、絵の具の基本色などの画材を与えて、色の混ぜ方を教えると後は自由に描かせるというものでした。
【ヨーロッパでも一世を風靡】
弟子たちはスミットの大胆で独創的な色使いを取り入れつつも、バリ絵画の伝統的要素を大切にし進化させていきます。例えば、左右対称あるいは併行的な構図や祭礼、農耕生活などのバリならではのモチーフを継承しています。一方、ぎりぎりまで簡素化したモチーフを反復的に描き、絵の具を平面的に塗り太めの輪郭線で囲む技法はスミットから学んだものでした。このような斬新な色使いで描く若い画家のグループはやがてヤング・アーティストと呼ばれるようになり、1960年代にはシンガポール、ホノルルなど海外でも展覧会を開き、ヨーロッパ、特にイタリアに多くの作品が輸出されるなど大きな成功を納めました。
【さらなる磨きをかけ次のステージへ】
このように短期間に成功を納めたヤング・アーティストですが、作品を大量生産するために、いわゆる流れ作業が横行するようになりました。下絵を描く人、色を塗る人、サインをする人といった具合です。このような芸術性の低下によって、別のスタイルに鞍替えをする画家たちも出てきました。
その中にあって、最初の原点に立ち返り、真摯な姿勢で制作活動を続けている画家もいます。イ・ケトゥト・タゲン、イ・ニョマン・ロンド、イ・ケトゥト・ソキらです。ソキ氏の作品はバリアートショールームでも扱っていますが、ロックバンドTHE BOOMのアルバムジャケットを飾ったこともあり、日本にもファンが多い画家です。

  • アリー・スミットと
    ネカ美術館に設けられた彼のパビリオン内部

  • イ・ニョマン・チャクラ「婚礼」(1970)
    ネカ美術館所蔵

  • イ・トゥット・ソキ「バリの村落」(1968)
    アルマ美術館所蔵

Artists このスタイルの作家

  • Soki

    【ソキ】

    伝統様式にポップな極彩色を持ち込んだヤング・アーティスト

  • LONDO

    【ロンド】

    俯瞰的な構図と独創的な色使い、ヤングアーティスト派の巨匠