バリアートショールーム オーナーブログ
2016.9.1

1500号の超大作 アトリエには5台の脚立が

こんにちは、さかもとすみこです。

素晴らしい画家にお会いしました。遠藤彰子さん、来年古希を迎えられるとは思えないほど、エネルギーに溢れた女性。と言っても、押しの強い感じはなく、自然体での強さ、いくらでもお話していたくなるような、素敵なオーラを持ったアーティストです。

そんな遠藤さんの作品を初めて見たのは今年7月、横浜美術館の所蔵作品展でのこと。横幅3mを超える大作には視点がいくつもあり、見ているうちに大きなキャンバスをぐるりと一回りしてしまうような、なんとも不思議な構図でした。先日たまたまNHKの日曜美術館を観ているときに、相模原の市民ギャラリーで「遠藤彰子の世界展」が開催中であることを知り、最終日に車を飛ばして見に行ったというわけです。

FB_IMG_1472367747381

最新作『眸(まみ)ひらく明日』1000号

いきなり度肝を抜かれました。キャンバスの中でも最大のサイズ、500号を2つ、あるいは3つをつなげた超大作がずらり。ダイナミックな構図と極細の筆で描きこんだ細部の二面性を持つ作品で、天井の高い会場が狭く感じられるほどでした。

メルヘンのようなふわっとした明るさ、楽しさの一方で、どこか不安を感じさせるような面も。その多面性こそが現実の世界を象徴しているのかも知れません。

入り口付近でニコニコと立っておられたのが、当の遠藤さんでした。図録を買っていたら、「よかったらサインでもしましょうか」と声をかけてくださり、お話できる機会にラッキー。制作の上での様々な工夫や人となりを感じさせる楽しいエピソードをいくつもお聞きできました。

特に印象的だったのが、新聞の連載小説の挿絵のお仕事をされたときのこと。これまで、日経新聞夕刊の『刑事たちの夏』(’97〜’98)朝日新聞の『賛歌』(’04〜’05)、毎日新聞の『古い土地/新しい場所』(’10〜’13)と1000点を超える挿絵を手掛けてこれました。

「1点仕上げるのに4〜5時間はかかるんですよ」

毎日のことなので、その間は旅行にも行けないし、学生(武蔵野美術大学で教鞭)から飲みに行こうと誘われても行けない。どうしてもと言われたときには帰ってから描いて、夜中にバイク便で取りに来てもらうといった過酷な日々だったそう。

「ビオラ弾きのお話だったのに、私はビオラをよく知らなかったのね」

FB_IMG_1472369760769

お辞儀している漫画がかわいい

挿絵の仕事は、知らないものも含めて様々な題材を描かなければならない。また、電話の場面が一週間も二週間も続くことがあり、どうやって変化をつけるか工夫せざるを得なかった。それがとても勉強になり、今大作を制作する上でとても役にたっているといいます。絵に対する真摯で謙虚なお姿にじーんと来ました。

比べるのもお恥ずかしいですが、私も3年前に自分で書いた小説をブログで連載しており、そのための挿絵を毎日描いていました。同じ雰囲気の場面が続くとき、どうしても似たイメージしか湧いて来ず苦労した経験があるので、いかに大変なお仕事かがとてもよくわかりました。

しかし、「どんどん頭の中に湧き出てくるから、描いて外に出さないと頭がおかしくなっちゃいそう」と仰るのは羨ましい限り。きっと先生の頭の中には、とてつもない内宇宙が広がっているのでしょうね。

ところで、今回展示された30点は半分なのだと聞き、もう一度「えーっ?!」。来年11月には武蔵野美術大学で全作品が見れる展示会が開かれるそう。もう絶対行きますっ。

 

コメントをどうぞ

※は必須