バリアートショールーム オーナーブログ
2013.6.12

バリ島美術館巡り③ アルマ美術館

こんにちは、坂本澄子です。梅雨の季節、毎朝天気予報をチェックしてお出かけのことと思います。ところで、宇宙天気情報というのがあるのをご存知ですか?「活動領域1765でCクラスフレアが発生し、太陽活動はやや活発でした。今後1日間、太陽活動は静穏な状態が予想されます」と、まあこんな感じです。「降水確率は50%です」と言われると、折りたたみを鞄に入れとこうかとなりますが、太陽活動が活発なときは??この情報はどんな風に使われているのでしょうね。さらには、オリオン座のペテルギウスが爆発すると太陽がふたつ見えるような状態になるとの説もありますが、640万光年前の出来事を見るわけですから、想像するだけで深淵なロマンを感じます。

時間と空間を超えて心象風景をシュールリアリスティックなタッチで表現したのがドイツ人画家ヴァルター・シュピース。彼は画家としてだけでなく、写真家、音楽家、舞踏家などとしても活躍し、現代バリ芸術の礎を築いたと言われています。その画風はシュピース・スタイルとして現代に受け継がれ、「バリアートショールーム」でもガルーウィラナタなどこのスタイルを代表する作家の作品を紹介していますが、シュピース自身の作品を見たいという方にはアルマ美術館をお勧めします。ブログ34_アルマ美術館

と言う訳で、「バリ島美術館巡り」最終回はアルマ美術館です。既にご紹介したプリ・ルキサン美術館ネカ美術館が絵画という表現方法にある程度限定しているのに対して、絵画を中心に舞踊、音楽、演劇などバリの芸術全般を見据えた展示・活動をしているのが特徴。例えば、作品の展示スペースで地元の子供たちが踊りを披露していたり、祭礼用の衣装やバロンが展示してあったり(写真左)、時にはこれを使用したパフォーマンスが見られるといった具合です。展示室もバリ伝統建築をベースに大きな吹き抜けが設けられ(写真中央)、壮大かつ雰囲気のある空間を創り出しています。

左から「プレアンガー高原の水田(1923)」「高台からの眺望(1934)」「別れ(1921)」

左から「プレアンガー高原の水田(1923)」「高台からの眺望(1934)」「別れ(1921)」

ヴァルター・シュピースに関する展示は、3美術館中もっとも充実しています。残念ながら彼の作品のほとんどは戦争で失われたり、島外へ流出してしまっているため、展示されているのは複製画ですが、それでもこれだけの作品がまとまっていると、シュピース独特の世界観の一端を伺い知ることができます。写真も充実していますので、シュピース・ファンの方は是非アルマ美術館を訪れてみて下さい。広い敷地内には舞踏用の野外ステージ、ホテル、レストランもあります。それらの建物をつなぐ南国庭園も美しいので、作品を堪能した後は散歩がてら歩いてみるのもいいですよ。

ブログ34_アリミニ作品

アリミニ「Life of Bali」
アルマ美術館所蔵

どこの美術館でもそうですが、見覚えのある画家の名前を見かけると、つい見入ってしまいます。美術館には大抵大きなサイズの作品が展示されています。バリ伝統絵画は精緻に描き込んだものが多いので、これだけの作品を完成させる集中力、空間捕捉力、描写力はどれほどのものだろうと、いつもその才能に感心させられます。アルマ美術館にはアリミニソキラバガルー(ギャラリー部門所蔵)、ウィラナタ各氏の作品が所蔵されていますので、訪れる機会がありましたら是非見てきて下さい。

アルマ美術館所蔵の画家の作品購入はこちらから

2013.6.8

バリ島美術館巡り② ネカ美術館

こんにちは、坂本澄子です。梅雨の中休み、というより、「もしかしてまだ入ってなかった?」と思うくらい、過ごしやすいお天気が続いてますね。気象庁による梅雨入り発表(宣言ではない)は“◯◯が何日続いたら”といった明確な基準がある訳ではなく、現在までの天気経過と今後一週間先までの見通しに基づくあくまで予報、つまり、後から修正もありなのだそうです。

ネカ美術館見取り図さて、今日は美術館巡り第二弾、ネカ美術館のご紹介です。観光でバリ島に来て、どこか一つだけ美術館に行きたいという方がおられたら、私は迷わずネカ美術館をお勧めします。16世紀の影絵芝居をルーツとして誕生。神話の世界を描きながら発展し、1920年代には西洋技法と融合。その後いくつかのスタイルに分かれて進化したバリ絵画の歴史を、体系だって学べる展示構成になっているからです。西洋絵画の影響については、色彩においてアリー・スミット、解剖学に基づく人物描写でルドルフ・ボネ、そして遠近法を用いた風景描写でヴァルター・シュピース。彼ら西洋人画家の作品も多数展示されているため、どのように影響を受けたのかがよくわかります。

アリー・スミットのパビリオン

アリー・スミットのパビリオン

特に, アリー・スミットの作品コレクションが充実しています。独立したパビリオンに飾られた明るい色彩の風景画の数々に、きっと気持ちも明るくなるはず。 ちなみに、先日ご紹介したバリの遠近法、バリ絵画の描き方はネカ美術館の文献を参考にさせてもらいました。単に作品を展示するだけでなく、バリ絵画をきちんと伝え、守り育てていこうという気概のようなものを感じます。

もう一つ見逃せないのは、展示室の窓、天井、扉などの建具類に見られる、バリ人の美意識の高さです。窓の美しい文様を通して見る中庭の風景はそれだけでひとつの作品と言ってもいいほど。 所蔵作品としては、戦後〜現代作家によるもののウェイトが高いので、もし時間が許せば、プリ・ルキサン美術館にもはしごして(タクシーで10分)、カマサン・スタイル、バトゥアン・スタイルなどのバリ伝統絵画の作品を見て前半を補足すれば、あなたはもうかなりのバリ絵画通です。

展示室の美しい建具類

展示室の美しい建具類(左から窓、アリー・スミット・パビリオンの天井と扉)

ところで、ネカ美術館を出ると、目の前にBBQ屋さんがあります。ここから蒲焼き風のいいにおいが漂ってきて、ついふらふらと吸い寄せられてしまいます。でもここは観光客プライスなので、ぐっとこらえて、もう10分ほど坂道を下った左側にあるお店がおすすめです。ビンタンビールを飲んでBBQを色々頼んでも1人5〜600円もあればお腹いっぱいになります。是非お試しを。

2013.6.5

バリ島美術館巡り① プリ・ルキサン美術館

こんにちは、坂本澄子です。今日からバリ島の美術館巡りを3回シリーズでお届けします。

左から、プリ・ルキサン美術館、ネカ美術館、アルマ美術館。いずれも美しい庭園があり、ゆっくり過ごせる

左から、プリ・ルキサン美術館、ネカ美術館、アルマ美術館。いずれも美しい庭園があり、ゆっくり過ごせる

ご紹介する3つの美術館はいずれもインドネシア共和国の教育・文化大臣により公式開館、財団により運営されていますが、それぞれコレクションにこだわり、特徴があります。プリ・ルキサン美術館は設立が最も古く、バリ伝統絵画を中心に作品を所蔵、ネカ美術館は戦後〜現代絵画に比重が置かれています。特に、オランダ人画家のアリー・スミットの作品及びその影響を受けたヤング・アーティストたちの作品は独立したパビリオンが設けられているほど充実。そして、最も新しいアルマ美術館は、絵画だけでなくバリの伝統舞踊や劇、ワークショップなどを通じて広くバリの伝統文化を発信しており、同じ精神で活動したバリ近代芸術の父ドイツ人ヴァルター・シュピースの功績も紹介されています。ありがたいことに、これらの美術館はパンフレットだけでなく、それぞれの作品解説に英語、インドネシア語と並んで日本語があり、作品の理解を深めるのにとてもよい環境です。ウブドを訪れたら、これらの美術館でぜひ本物のバリアートの世界に浸ってみて下さいね。

<プリ・ルキサン美術館の精神>

中庭を取り囲むように設置された展示室

庭園のような中庭を囲むように3つの展示室が配置されている

プリ・ルキサン美術館は1956年開館、オランダ人画家ルドルフ・ボネによる構想と所蔵絵画の寄贈で始まりました。その精神は1936年のピタ・マハ運動に遡ります。バリ島は1920年代に「最後の楽園」としてヨーロッパで脚光を浴びて以来の観光の島、バリ絵画はお土産品として人気が出ると、同じ図柄パターンでいわば流れ作業的に大量生産された粗悪品が出回るようになりました。これに対して、バリ伝統美術の保存と発展を使命として発足した芸術家たちのコミュニティが「ピタマハ芸術家共同体」です。この創設者がボネとシュピース、そこに当時のバリ絵画を代表する画家たちが加わりました。プリ・ルキサンとは「絵画の王宮」という意味、まさにこういった精神を受け継いでいるのです。

<充実した伝統絵画のコレクション>

バリ伝統絵画の土台となったカマサン・スタイルの17世紀初頭の作品やバトゥアン・スタイル、そして、西洋技法を取り入れ村人たちの日常の生活を描いたウブド・スタイルの作品が充実しています。闘鶏は最もポピュラーな題材で、男たちの興奮した表情や雄鶏の激しい動きが生き生きと描かれています。バトゥアン・スタイルはインド叙事詩の物語の場面を描いた作品が多く、私はこの分野にはあまり詳しくありませんが、薔薇色の瞳を持つ英雄ラーマ王。略奪されていたシーター妃を取り戻すシーンなど人気のある場面は色々な画家の作品に登場します。一度じっくり勉強し、またブログの中でご紹介したいと思っています。

プリルキサン美術館の作品

(左)インド叙事詩「ラーマーヤナ」をモチーフにした作品。それぞれの区切りに異なるシーンが描かれたカマサン・スタイルの絵巻物。(中)闘鶏を描いた作品部分。ウブド・スタイル。(右)展示室の様子。彫刻のコレクションも。

このプリ・ルキサン美術館、ウブドの中心部の大変便利のよい場所にあります。入場料5万ルピア(約500円)でドリンクもついていますので、ショッピングに疲れたら是非立ち寄ってみて下さい。そして、この「バリアートショールーム」で扱っている画家の作品も見て来て下さいね。(ウィラナタ, ソキ, ガルー作品を所蔵)プリルキサン美術館で所蔵されている「バリアートショールーム」の画家

7月10日〜15日のバリ絵画展「緑に抱かれる午後 〜 Deep into the Forest 〜」にも是非お越し下さい。

【お詫び】ネカ美術館の外観写真が誤って掲載されておりましたので、訂正致しました。(2013/06/21)