バリアートショールーム オーナーブログ
2016.10.22

素敵な絵を買いました

こんにちは、坂本澄子です。
先日、ある作品にひとめぼれして、久しぶりに自分のために絵を買いました。葉書大の小さな抽象画です。
うちには畳1畳分もあるバリ絵画をはじめ、絵で溢れかえっており、最近では私自身が描いた絵も含めて家中の壁を占拠しています。唯一、見つかったスペースが玄関。シンプルな空間に何か我が家らしいアクセントが欲しくなりました。
家族が帰ってきた時にはやさしく「おかえり」、友人が訪ねてくれた時には明るく「いらっしゃい」、そんな、小さくても優しい存在感がある絵があればいいなあと思っていたときでした。

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『コンポジション』 明輪勇作

最初は色に惹かれました。一つは暖色系(写真)、もう一つは淡い寒色でまとめたクールな作品です。両方ともそれぞれに魅力があり、どちらかに一方なんてとても決められず、結局その日は買うことができませんでした。

それから2週間後、幸いその絵はまだありました。飽かず眺めていると、どちらも顔に見えてきました。暖色系の方は笑った顔があちらにもこちらにも。なんだかホッとさせられます。寒色系の方はおとぼけロボットや動物たちの顔に見えてきました。

作家の明輪先生に制作意図をお聞きすると、今から10数年前、あるご友人を想いながら、パソコンのグラフィックツールで描いたのが原型。時を経て、不透明水彩で描きなおしたのだそうです。なるほど!人の喜怒哀楽が伝わってくるようなあたたかい雰囲気はそこから来ていたのだと納得しました。そして、それぞれ違ったイマジネーションの世界に引き込まれ、ますますもって決められなくなり。。

さらに2週間後。私のことを待ってくれていたかのように、その絵はまだそこにありました。こうなったらと、二つとも買っちゃいましたというわけです。幸い、玄関には左と正面に壁があり、それぞれ1点ずつ飾ることにしました。

かくして、玄関に絵がある生活の始まり。洗面所とお手洗いに通じるドアがあるため、通行回数は思った以上に多く、どの方向から来るかによって、見える絵が異なるのも楽しみに。そして、見るたびに違ったものが見えたり、一色だと思っていたところに、いろんな色の点描が隠れていたりと、新しい発見もありました。
実は抽象画を購入したのは初めてなんです。初めて絵を買われる方も、きっとこんな気持ちになられるのではないでしょうか。悩んでおられる方、ぜひ思い切って!本物の絵は想像以上にいろんなことを語りかけてくれますよ。

初めて絵を購入されるあなたにも、手頃な価格で質の高いバリ絵画。おすすめです。

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気軽に飾れるバリアート ・・・初めて絵を購入される方に

バリ島の美術館に選ばれた作家たち ・・・目の肥えたコレクターにも自信を持ってオススメします。

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2016.10.8

絵の具からバリ絵画を見ると 番外編

こんにちは、坂本澄子です。

描き手の視点から絵画を見るこの企画、もともと前編・後編の2回のつもりだったのですが、どうしてもこれはお伝えしたくて番外編を作っちゃいました。

バリ絵画でよく使われるアクリル絵の具、苦手なことはグラデーション、でしたね。でも、花鳥画などで花びらや羽毛に柔らかな陰影をつけたいとき、やっぱり必要なのです。そこで登場するのが竹筆。これを使うと、グラデーションがなんと一瞬でできてしまうのです。

dsc01298竹筆というのはシャープなエッジのついた、竹製のヘラのようなもの。前編でもご紹介した通り、アクリル絵の具は乾くと水に溶けないので、上から色を重ねやすいのが特徴でしたね。その特徴を利用して、少なめの水で溶いた絵の具を竹筆のエッジの部分につけて、最初は強く、後半はシャっと流すようにすると、下色の上に別の色がいい感じにぼけてくれるのです。シャっシャっではなく、狙いを定めてただ一度、シャっ!がポイントです。

上の写真は、画家のエベンさんにバリ絵画の描き方を教わったときのものですが、この技法を使ったのが、白のプルメリアの花びらと中央のバナナの葉の茎の部分のぼかしです。エベンさんはこの竹筆を葉っぱのくっきりとした輪郭線を描く時にも使っていました。余談ですが、輪郭線は東洋絵画に特徴的なもの。光による明暗で立体を表現する西洋絵画ではほとんど見られません。

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「青い睡蓮」RAJIG 50x60cm ¥60,000

竹筆は画家が手作りすることが多く、パーツの大小に合わせて様々な幅のものがあります。

花鳥画と言えばこの人!と言われるラジック氏も10本近い様々なサイズの竹筆を使い分けていました。これで、右写真のような花びらのみずみずしさや野鳥の羽毛のやわらかさを表現していくわけですね。

いかがでしたか?絵の具を通してみたバリ絵画。

描き手の感性があふれた絵作りは、写真とは違う絵ならではの魅力ですが、それを下支えしているのは画家の持つ技術力です。今回ご紹介したように、画家それぞれに様々な工夫をしており、それがバリ絵画の質の高さにつながっています。あなたのご自宅にもバリアートをいかがですか?

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2016.10.1

絵の具からバリ絵画を見ると 後編

こんにちは、坂本澄子です。

箱根の鄙びた温泉に日帰り湯治に来ました。ひんやりとした空気にのって金木犀の香りが漂っています。秋ですね。

これまで、絵がお部屋にあるとこんなにステキですよと、絵を買ってくださる方の立場で書くことが多かったのですが、私自身も絵を描くようになってから、描き手の思いや工夫を知っていただくことで、別の楽しみ方ができるのではないか、と思うようになりました。

小中学校時代、絵を描いた経験がおありでしょう。私の場合は、最初に絵を習った先生から、「この葡萄を見たとき、何て感じましたか?おいしそうと思ったなら、そのおいしさが、みずみずしいと思ったら、そのみずみずしさが表現できているか、それだけを考えて描きなさい。そして、葡萄をよく見たら、紫だけでなくいろんな色が見えてくるでしょ、それらを全部使って描きなさい」と教えられました。写真とは違う「絵ならではのおもしろさ」を教えてくださった最初の恩師です。

さて、アクリル絵の具のお話です。

メディウム

メディウムは乾くと透明になります

アクリル絵の具を使っていろんな描き方ができます。薄く溶いて、澄んだ透明な色を塗り重ねることで出せる深みのある色については、前編でお伝えした通りです。

逆に、油彩画のように筆あとを残し、盛り上げて描くこともできます。また、メディウムを使えば、ダイナミックに絵肌を変えることも。メディウムというのは、キャンバスや紙に定着させる糊のようなもので、絵の具だけでなく、いろんなものを混ぜることができます。そこに砂を混ぜたのがアンタラ氏です。

PM006人物画で定評のあるウブドの画家のアンタラ氏は、家族や隣人へのあたたかな眼差しをテーマに、作品を発表し続けています。ある時、下塗りの段階で、砂を絵の具に混ぜることを思いつきました。バリ島に伝わる砂絵が、ヒントになったのでしょう。大きさの異なる砂の粒によって光が拡散することで、ふんわりとやさしい表情を出すことができました。

『夢見る頃』(部分)  ANTARA 60x50cm 

 

実は、そんなアクリル絵の具にも苦手なことがあります。グラデーションです。乾くのが早い分、違う色を混ぜて徐々に変化させるのは難しいのです。乾きを遅くするメディウムを混ぜて、筆の先で少しずつぼかしながら色を馴染ませることもできますが、効果的なのは油絵の具との併用。アクリル絵の具で描いた上に、油絵の具で微妙なニュアンスをつけていくのです。

OM001この方法を用いて描いたのがこちら『豊穣の女神』です。アクリル絵の具で一通り描いた後、人物の肌や遠くの空に溶け込むような霞んだ風景など、繊細な描写が必要な部分を薄めに溶いた油彩で仕上げています。

『豊穣の女神』ANTARA 100x150cm →

 

しかし、グラデーションを一瞬で作れる伝統的な技法がバリ絵画にはありました。次回はおまけ編として、バリ絵画におけるグラデーションをご紹介します。

<関連ページ>

アンタラ氏の作品ページ

 

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