バリアートショールーム オーナーブログ
2016.4.30

緑にいだかれた午後

こんにちは、坂本澄子です。

ゴールデンウィークですね。ウブドにもにわかに色白の日本人が増えたそうです。このところ円高が進んで、ちょっとラッキーですね^o^

IMG_7435私はというと、初めて新潟に行ってきました。ゴールデンウィークの10日間、「大地の芸術祭」の里 越後妻有2016春が開催中です。

この芸術祭は3年に一度開催されるアートトリエンナーレで直近は昨年開催されました。開催年には列ができるほどの人気作品をゆっくりと楽しめるのが魅力です。

メイン会場の越後妻有里山現代美術館(キナーレ)はモダンな建築で、一面に水を張った中庭をぐるりと取り囲むように設けられた展示室では、モダンアートが楽しめます。

電車の車両をイメージした建物、廃校になった小学校の体育館を活用した倉庫美術館など、各会場共それぞれに面白かったのですが、一番いいと思ったのは、光のアーティスト、ジェームズ・タレルの「光の館」でした。こちらは2000年の回に制作されたものですが、私にとっては、昨夏、瀬戸内海の直島の地中美術館(安藤忠雄設計)で、その不思議な光景にすっかり魅了されて以来、2度目の出会いとなりました。

光の館_空この「光の館」は瞑想を行う場所として、タレル自ら設計を手掛けた和風建築です。

一番の見所は2階にある12.5畳の和室。屋根がスライドして天井にぽっかりと四角い穴が開くのを、畳の上にごろんと横になって鑑賞できます。

私が行ったときは曇り空でしたが、雲が浮かんだ青空だと、見上げているうちに、逆に空を見下ろしているような錯覚に陥り、落ちそうな気分になるのだそうです。

ところで、この「光の館」には宿泊プログラムもあるのです。

光の館_浴室1階にはご覧のような広いお風呂があり、夜になると浴槽にぐるりと埋め込まれた光ファイバーが点灯し、水の中に光の空間ができる仕掛け。

また、先ほどの和室の天井開口部にも秘密が。時間と共に色が変化する間接照明が仕込まれているのです。すると目の錯覚で、空の色まで変わって見えるのだそうです。その他にもいたるところに光の仕掛けがあり、一晩かけてその魅力をたっぷり楽しめるというわけです。

光の館_回廊周りはご覧の通り回廊になっており、溢れるような新緑に包まれています。白い雪をかぶった谷川連峰を遠くに眺め、光の移ろいを感じているうちに、自分自身も自然の一部に溶け込んでいきます。そんな時間は、ウブドにいるときと似ています。

次回はぜひ泊まりで来たいと思いました。

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2016.4.27

バリ芸能の口伝術

2016-04-24 17.08.55

宮廷古典舞踊の華麗な舞

こんにちは、坂本澄子です。
先日、素晴らしいガムラン演奏とバリ舞踊を楽しませていただきました。
演奏をされたのは、以前このブログでもご紹介した櫻田素子さん。今回はリンディックという竹でできた木琴のような形をした楽器です。少し高めの、コロコロと弾むような音色。阿佐ヶ谷のバリ舞踊祭でも素晴らしい踊りを見せてくださった荒内琴江さんと高橋恵美子さんが加わり、濃密なバリ空間となりました。

櫻田さんのお話で特に興味深かったのが、バリ島でのガムランの教わり方です。

リンディック。明るく彩色されてとてもかわいい楽器です。

リンディック。明るく彩色されてとてもかわいい楽器です。

バリの芸能は基本的に口頭伝授。先生がまずお手本を見せてくれるのですが、ピアノ教室などでよくある、楽譜を見ながら、「じゃあ、まずはここまでやってみましょう」と細切れに進めるのではないのだそう。
延々とノンストップ、「そんなに覚えきれないよ~」という状態になりつつ、先生の方もとことん付き合ってくれるのだそうです。
朝、暑くなる前に先生のお宅に伺い、途中お昼を食べに帰り、午後にまた再開。そんなレッスンを何日も重ね、「滞在中に覚えきれないのでは…」と不安がよぎるある日、ふとできるようになる。自転車に乗れるようになるのと同じで、一度身につくと忘れないのだそう。その曲とよい関係を作るために必要な時間なのですね。効率が重視される昨今、何事にも必要な時間があるのだと、大切なことを思い出させてもらいました。

必要な時間をたっぷりかけるのは絵画の世界も同じ。細密画『少年たちとケチャダンス』はA4程度の小さな作品ですが、画家のライさんは1ヶ月以上もの時間をかけて、この作品に向き合いました。篝火に照らされ赤く染まった少年たちの顔はひとりひとり異なり、葉っぱの一枚一枚まで丁寧に描かれています。

少年たちのケチャダンス

『少年たちのケチャダンス』RAI 25cmx35cm アクリル/紙 ¥60,000

時間をたっぷりかけてもお値段はとってもリーズナブル♪ そこもまた魅力ですね。

<関連ページ>

ライ作品ページ  細密画で有名なクリキ村在住の画家

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2016.4.23

二毛作的な生き方 伊藤若冲展

こんにちは、坂本澄子です。

大変光栄なことに、私の二毛作的な生き方をノンフィクション・ライターの大宮知信さんが、著書『人生一度きり!50歳からの転身力』(電報社)で取り上げてくださいました。この本には他にも、人生の後半戦を別の世界で生きる決意をした50人が紹介されています。それまでのキャリアの延長線で独立・転職するのとは違い、リスクを伴いますが、それぞれに思いがありチャレンジする姿には、「私たちもまだまだいける」と思わされます。

そんなふうに、それまでと180度違う生き方をして画家になった人がいます。前回ご紹介したアンリ・ルソーもそうですが、日本人にもすごい画家がいました。伊藤若冲、江戸時代中期の画師です。

1716年京都の生まれ。実家は京都の青物問屋で、23歳の時に父の後を継ぎますが、40歳の時に弟に家督を譲って隠居の身となり、画師としての遅いスタートを切りました。どの画派にも属さず、試行錯誤を重ねながら独自の画風を確立、85歳で亡くなるまで制作意欲は衰えず、好きな画業に打ち込み続けました。

gunkeizu_jakuchu (1)生誕300年となる今年、東京都美術館若冲展が始まり、さっそく行ってきました。寺院に伝わる襖絵などから中国渡来の花鳥画を模写し、写実絵画を学んだ若冲は、身近な動植物を題材にした花鳥画、鳥獣画を多く残しています。

一番惹かれたのは、10年以上の歳月をかけて相国寺に寄進した30輻の「動植綵絵」。思わず見入ってしまうほど、精緻を極めた動植物図。梅、桃、鳳凰、孔雀などの華麗な題材はもちろん、魚、貝、水辺の虫、爬虫類、両生類に至るまで徹底して描きこまれた作品は、まさに生命の謳歌と仏様への感謝です。特に鶏は自宅の庭で何羽も飼い、写生を重ねたというだけあって、その力強い生命力はひしひしと伝わってきます。

でも、若冲の魅力はそれだけではありません。そう感じたのが、二双の屏風からなる『鳥獣花木図屏風』。動物たちが集まった地上の楽園が描かれています。

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『鳥獣花木図屏風(一双)』伊藤若冲 江戸時代

060721_06よく見るとモザイクのように小さなマス目があり、その一ます一ますに違った塗り方がされ169x374cmの大作を構成しています。写実を極めたからこそできる簡略化と想像力によって、モダンアートと見紛うような新しさを感じました。おそらく後期の作品だと思いますが、画師としての評価を得た後も、常に新たなテーマにチャレンジし続けるところはすごいと思いました。

どれも実物をぜひ見ていただきたい作品ばかり。開催は5月24日まで。5月8日までは8Kスーパーハイビジョンの特別映像もあり、こちらもちょっと見物です。

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51dDLZQJX3L._SX339_BO1,204,203,200_娘がこの4月から就職し新しい道を歩き始めました。毎日悩んでは立ち止まり、また歩き出す姿は約30年前の私と同じ。若冲の生き方を見ると次の30年は、もう一回分別の生き方ができると勇気をもらえました。

このブログを読んでくださっている方には同世代の方も多いと思います。そこで、冒頭にご紹介した、『人生一度きり!50歳からの転身力』(大宮知信著)を3名の方にプレゼントしたいと思います。応募多数の場合は抽選とさせていただきますので、4月30日までにこちらのフォームに書籍希望と書いてお申込みください。

<関連ページ>

バリ島の花鳥画なら 68歳のLABA氏も生命力あふれる鳥獣画を描いています

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2016.4.20

熱帯の密林の中へ

こんにちは、坂本澄子です。
アンリ・ルソーが好きで、バリ絵画が好きという人は意外に多いのでは。実は私もその一人なんです。「ルソーって哲学者⁉︎ 」という方がおられたとしても、この本を読んだら、きっとルソーのことを好きにならずにはいられないでしょう。

原田マハさんの『楽園のカンヴァス』ー ミステリー、恋愛小説、ビジネス小説、アート…、様々なジャンルがてんこ盛り。ぐいぐいと読者を引っ張っていく展開の速さと意外な結末、そして最後は心に爽やかな風が吹き抜けていく、そんな小説です。

大学時代に美術史を専攻し、MoMA(ニューヨーク近代美術館)に勤務、また、キュレーターとしての経験も持つ著者ならではの作品。アートに対する深い造詣と、小説としての面白さがダブルで押し寄せてきますよ〜。

物語の中にはルソー、ピカソなどたくさんの絵が出てきますが、この本のタイトルとも密接に関係しているのが、ルソー最後の作品『夢』です。MoMAにキュレーターとして勤務する主人公ティムが、この作品を前に次のように思う場面があります。

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『夢』アンリ・ルソー 1910年 ニューヨーク近代美術館

「作品の舞台は、密林。夜が始まったばかりの空は、まだうす青を残し、静まり返っている。右手に、ぽっかりと明るい月が昇っている。鏡のような月だ。

月光に照らし出される密林は、うっそうと熱帯植物が密集している。名も知らぬ異国の花々が咲き乱れ、いまにも落ちそうなほど熟した果実が甘やかな香りを放つ。ひんやりと湿った空気のそこここに、動物たちが潜んでいる。その目は爛々と、小さな宝石のように輝いている。

遠く近く、聞こえてくるのは笛の音ー黒い肌の異人が奏でる、どこかせつなくなつかしい音色。耳を澄ませば、そのまま彼方へ連れ去られてしまいそうなほど、深く静かな旋律」(原田マハ著『楽園のカンヴァス』より)

この箇所を読んだとき、初めてウブドを訪れたときの記憶に重なりました。

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ルソーの絵が好きなあなたにぜひご紹介したいバリ島のアーティストがいます。Dewa Nyoman LABA(デワ・ニョマン・ラバ)

写真のように、作品のほとんどが緑、緑、緑です。ニュアンスの異なる緑が巧みに配置され、絵に深みをもたらしています。まるで密林に迷いこんだように、森の匂いやひんやりと湿った空気がからみついてきます。遠くの村からかすかにガムランの音色も聴こえてきそう。

LABA_tropical forest (1)

『熱帯の森の中で』LABA アクリル/キャンバス 100x150cm    400,000円

今年68歳のLABAさんは、熱帯の森に暮らす動物たちを描き続ける、巨匠格のアーティスト。深い緑とユーモラスな動物たちに、私自身いつも癒されています。あなたもこの癒されるような深い緑に包まれてみませんか。LABA作品ページはこちら。また、この作品に関するお問い合わせはこちらから承ります。

<関連ページ>

LABA作品ページ ・・・お求めやすい小さな絵もあります

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2016.4.16

宮川香山展 成功の陰にはたゆまぬ努力

こんにちは、坂本澄子です。

サントリー美術館(六本木・ミッドタウン3F)で開催中の「欧米を感嘆させた明治陶芸の名手 宮川香山」展にぎりぎり間に合いました。(〜4月17日)

宮川香山は、江戸末期の1842年に京都に生まれ、明治・大正に活躍した日本を代表する陶芸家です。大英博物館などで作品所蔵されるなど、世界的にも名声を得た秘訣は、文明開化の街・横浜へ活動の場を移したこと、たゆまぬ研究を続け、常に時代が求める以上のものを創作し続けたことではないかと思いました。

KozanPoster002 (1)会場に入って最初の作品から、一気にひきこまれました。器から這い出る2匹のカニ。硬い甲羅と脚がガサゴソと音を立てて今にも動き出しそうな迫力です。(画像はパンフレットより)

横浜に移ったのは、明治維新を迎え、父の代から有力スポンサーだった武家層にはこれまでのような販売は見込めないと感じたから。全国から輸出用の商品が集まる横浜で、欧米の愛好家に向けた陶器制作を始めたのは明治3年のことでした。欧米で好まれるのは装飾性。そこで生み出されたのが、陶器の表面をリアルな浮き彫りや造形物で装飾する技法「高浮彫(たかうきぼり)」だったというわけです。

KozanPoster001こちら、展示のポスターにもなった、愛らしい猫の姿がほどこされた蓋つきの器です。意外に小さな作品ですが、口の中の舌や歯、耳の中の軟骨、さらには毛の一本一本まで精緻に表現されています。

見ていて楽しかったのは、どの作品にも物語性を感じること。作品には対になっているものも多いのですが、Before&Afterや対になるモチーフが表現されていました。例えば、眠そうな顔をしたミミズクの周りでからかうように飛び回るスズメたち。突如、カッと目を見開き飛び立ったミミズクに、びっくりしたスズメたち。慌ててバランスを崩して落ちそうになるものがいたりと、思わず吹き出しそうになりましたw

明治10年代の半ばになると、KozanPoster002 (2)優美な磁器制作へと大きく方向転換します。当時、工房では数十名の職人が制作にあたり、主に海外からの注文を受けていましたが、この経営を息子の二代目香山に任せて、釉下彩の研究に取り組みました。

釉下彩というのは、釉薬と呼ばれる焼き物の表面を保護し艶を出すためのうわぐすりの下にほどこす彩色のこと。焼きあがった後に絵を描く上絵付と違って、熱によって思わぬ色に変化するのが、苦労でありおもしろいところなのだそうです。

研究熱心だった香山の残した帳面には、色の調合と焼いた後の結果が何百通りも記録されており、中には「大ベケ」と朱書きがされていました。これはやってみたけど失敗という意味。成功の陰には、人知れぬ努力と数多くの失敗があるのだと、勇気づけられました。

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ところで、バリ絵画にも少し似たところがあるのです。なぜウブドにこれほど多くの画家が集まっているのでしょうか。

オランダ統治前のバリ島は群雄割拠の時代。画家や彫刻師などの職人もそれぞれの群国に点在していました。ところが、オランダ軍によって次々と平定されると、スポンサーを失った画家や職人が、ウブドに集まってきました。ウブドの王様はオランダとうまく付き合っていたからです。

1920〜30年にヨーロッパからバリ島への観光ラッシュが始まると、伝統的なバリ絵画は西洋人好みの明るい色彩を取り入れたり、熱帯の幻想的な風景を描いたりと、様々なスタイルへと進化していきます。それが現在のバリ絵画の主要スタイルの基礎となりました。

これが売れるとなると、すぐに真似するのはどこも同じですが、独自の作風を大切にし、研究を怠らない画家の作品は息長く残っています。「バリアートショールーム」ではそんな作家の作品をご紹介しています。特に、ウィラナタさん、アンタラさんには絶えず新しいものを作品に取り入れていこうとする高い志を感じます。

4月23日(土)の「第8回バリアートサロン」では、様々に進化したバリ絵画の主要スタイルを飾りやすい小品を中心にご紹介します。詳しくはこちらをどうぞ!

<関連ページ>

第8回バリアートサロン 4/23 バリ絵画の歴史と進化を小品をご覧いただきながらご紹介

バリ絵画の歴史と進化

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2016.4.13

新作情報:ソキのアトリエから

こんにちは、坂本澄子です。

嬉しいお便りをいただきました。3年前になるでしょうか。ご家族の記念にと4羽の野鳥が描かれた絵を買ってくださったお客様がありました。ご主人と奥様、元気な男の子2人の4人家族です。「うちと同じだ」とその作品を選ばれました。その後、お子様も成長され、最近広い場所に引っ越しされたそう。それまでその絵はご主人の書斎にありましたが、引っ越しを機にリビングに。「これがもうぴったり。長男も喜んではしゃいでます」と写真を送ってくださいました。

もうめちゃめちゃ嬉しかったです。こうして絵を大切にされていること。そして、バリアートショールームのことを思い出してくださったこと。本当に感謝です。これからも仲のよいご家族で「絵のある暮らし」を愉しんでくださいね。

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さて、お願いした絵の様子を見に、ソキさんのアトリエに伺いました。横幅130㎝を超える『バリ島』の下絵がほぼ出来上がりつつありました。下絵の段階から、エネルギーがじんじんと伝わってきて、いい作品になりそうなオーラ全開。さすがソキさん。今週後半からは彩色に入れそうです。

ふとアトリエの中を見ると、こんなかわいい作品が目に飛び込んできました^o^ 丸いフレーミングがオシャレな作品です。(画像をクリックすると詳細がご覧いただけます)

『バリの暮らし』SOKI 50x50cm アクリル/キャンバス 100,000円(税込)

神様と繋がり、自然と共存することで豊かさを手に入れてきたバリの人々。そんな伝統的なバリの生活をこよなく愛する、ソキさん定番のモチーフです。中央に描かれているのは豊穣の女神デウィスリを祀った寺院。色とりどりのフランジバニ(プルメリア)の花々が門前の地面を飾っているのは、神様へのおもてなしです。清らかな水が豊かな大地を潤し、若い青田と黄金色の稲穂という成長段階の異なる田んぼが同時に描かれるのは、バリ島ならではの風景です。蝶が軽快なリズム感をもたらし、見ているだけで楽しくなってくるこの作品、5種類の中からお好きなフレームが選べる額縁チョイス付きでお届けします。

<関連ページ>

ソキ作品ページ エネルギー溢れる作品をお楽しみください

4/23 第8回バリアートサロン ソキの小さい作品を多数展示

バリアートのある暮らし 4羽の野鳥の絵を買った理由とは

 

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2016.4.9

西洋絵画との融合

こんにちは、坂本澄子です。4月のお天気は変わりやすいですね。いいお天気だと思って薄着で出かけたら、夕方から風が出てきて寒っ。でも、ラッキーなことに、上野で遅咲きの桜に出会えました。

東京国立博物館に「日本近代絵画の巨匠 黒田清輝」展を観に行ってきました。生誕150年と言えば、明治維新直前の1866年、薩摩藩士の子として生まれ。文明開化の先陣を切って、18歳でパリへ留学しています。

Kohan法律を学ぶための留学でしたが、自身の中にあった絵に対する思いが湧き上がり、養父を説得して絵の世界へ。9年に渡るパリ滞在中に見事サロン(公展)への入選を果たし、帰国後は日本洋画の普及・発展に尽力しました。避暑に訪れた箱根芦ノ湖で、後に妻となる照子さんを描いた『湖畔』は、歴史や美術の教科書ではおなじみですね。そういえば…と、母から譲り受けた切手帳を開けてみたら、ありました!

今回の展示をみて、すぐれた画家には2通りのタイプがあると思いました。ひとつは自ら描き手として制作に専念するタイプ。もうひとつは、制作+様々な活動を通じて時代を啓蒙し、流れを作る指導者タイプです。とすれば、黒田清輝は紛れもなく後者。そんな画家としての生涯が、会場をパリ時代と帰国後の二つに分けて紹介されていました。前半はパリで画家デビューを果たし、めきめきと頭角を現していく姿を、そして帰国後は、絵画グループ白馬会の立ち上げや東京美術学校(現・東京藝術大学)西洋画科の発足・後進の育成に尽力し、日本洋画の礎作りに奔走した様子が感じられます。

見応えのある作品展示の中で、一番惹かれたのが『昔語り』です。帰国直後に訪れた京都で着想を得て、画家としての最高潮期に、西洋絵画の構想画を日本のモチーフで描くことを試みた大作です。残念ながら焼失してしまい、現物は見ることができませんが、この制作のために、登場人物6人それぞれにデッサンや下絵を重ね、入念に準備した様子が展示されており、特に絵を志す人にとても参考になると思います。これらは黒田記念館のサイトにも紹介されていますのでぜひ。

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さて、ここでバリ絵画のアンタラさんをご紹介させてください。バリ島・デンパサールの美大で西洋絵画を学び、西洋絵画の技法でバリ島のモチーフを描き続けている画家です。その点で少し黒田清輝に似ていますね。

アンタラ氏の作品にはいつも祈りがある

『海の女神に祈りを捧げる』ANTARA 100x150cm

単にバリ島の文化・風習を描くだけでなく、彼の作品には常に祈りが感じられます。アンタラ氏の特集記事でその魅力に触れてみてください。

<関連ページ>

アンタラ特集記事

アンタラ作品ページ

アンタラ氏の制作風景動画(2分)

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2016.4.7

素朴派に感じる共通点

こんにちは、坂本澄子です。
画家の中には、死後ようやく作品の価値が認められる作家も少なくありません。私が好きなアンリ・ルソーもそんな画家の一人です。
パリの税関に勤めていたルソーが本格的に絵筆を握ったのは40を過ぎてから。その作品のほとんどは退職してから描かれています。遠近法も明暗法もない描き方に、子供の絵だと揶揄されながらも、65歳で亡くなる直前まで描き続けました。

そんなルソーを敬愛していたのが若き日のピカソ。彼はルソーの絵が古道具屋の軒先で古キャンバスとして売られているのを目にして驚愕します。(若い画家たちは新しいキャンバスを買う金銭的な余裕がなく、古いキャンバスを絵の具で塗りつぶして絵を描いていました)

わずか5フランで手に入れたその作品『女の肖像』は、いまでもピカソ美術館に所蔵されています。ピカソはルソーを本物の創造者として(あるいは伝統的な絵画の破壊者として)心底リスペクトしていたのですね。

 

『蛇使いの女』アンリ・ルソー(1907)

『蛇使いの女』アンリ・ルソー(1907)

私が初めてルソーの絵を間近に見たのは、2010年「オルセー美術館展」でした。展示会のメイン作品としてポスターにもなっていた『蛇使いの女』、写真では何度も見ていましたが、実際の作品を前に鳥肌がたったのを覚えています。

大きな作品でした。絵の向こうには別の世界が存在しているような感覚を覚えたのです。ルソーの登場がシュルリアリズムに影響を与えたのも頷けます。

南の島に漠然と憧れを抱いたのはその時です。

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花の季節が終わるとやがて来る新緑の季節。そんな季節に飾りたくなるのがこちらの作品。ラバ『少年たちの情景』です。何度もご紹介してきましたが、本当に素晴らしい絵です。

ブログ167_少年たちの情景

『少年たちの情景』LABA アクリル/キャンバス 70x50cm ¥160,000

キャンバスが緩んで、一度張り直したことがありました。ピンと張った瞬間、キャンバスの上で絵が蘇りました。決して誇張ではなく、「すごい絵がうちにある」と思いました。奥行きも明暗もありませんが、幾重にも塗り重ねられた様々な緑が、作品にコクのような深みをもたらしています。空なのか、雲なのか、水なのかわからない背景にも心惹かれます。それは、画家が子供の頃に実際に見た光景であり、同時に彼の心の風景なのでしょうね。

4月の「バリアートサロン」は4月23日(土)です。小さな作品をご覧いただきながら、「バリ絵画の歴史と進化」についてお話しますが、展示作品についてはリクエストにも応じます。もちろん今日ご紹介した『少年たちの情景』も喜んで!

 

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2016.4.2

4月のバリアートサロンは

こんにちは、坂本澄子です。

IMG_7335今日は新宿御苑にお花見に行ってきました。もちろんレジャーシート持参で!(なぜレジャーシートなのかは前回のブログを)

東京は花冷えのするお天気でしたが、九分咲きといったところで、桜をたっぷり楽しみました〜。ソメイヨシノはもちろん、白に近い桜からピンクの濃い桜までいろんな種類がありましたよ。私のお気に入りはこれ。ピンクの丸い蕾がとってもキュートでしょ。

先日のニュースで、今年のお花見シーズンの外国人観光客は昨年に比べて6割増と言っていましたが、新宿御苑もとってもインターナショナル。特に東南アジア系の人たちが目立ちました。こんなにたくさんの桜が一度に見られる場所は、日本の他はまずないですものね。

さて、今日は「第8回バリアートサロン」のご案内です。

今回のお題は毎回人気の『バリ絵画の歴史と進化』。様々なスタイルのバリ絵画を、小さな作品でご紹介していきます。いずれもA4前後の飾りやすい大きさで、小さくても見所いっぱいの粒ぞろいの20点を展示します。前回ご紹介した人気女流作家ガルー『花を探して』もぜひ実物を見にいらしてください。 

 

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      日 時: 2016年4月23日(土)14:00〜15:00 

         いつもと時間が変わっていますのでご注意ください。

   場 所: バリアートショールーム 有明

         ゆりかもめ「有明テニスの森」駅より徒歩8分

         りんかい線「国際展示場」駅より徒歩16分

   展 示: バリ絵画の代表的なスタイルから小品20点をご覧いただきます。

   ※ 事前予約制となっております。お申込みはこちらからどうぞ!

 

 

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