二毛作的な生き方 伊藤若冲展
こんにちは、坂本澄子です。
大変光栄なことに、私の二毛作的な生き方をノンフィクション・ライターの大宮知信さんが、著書『人生一度きり!50歳からの転身力』(電報社)で取り上げてくださいました。この本には他にも、人生の後半戦を別の世界で生きる決意をした50人が紹介されています。それまでのキャリアの延長線で独立・転職するのとは違い、リスクを伴いますが、それぞれに思いがありチャレンジする姿には、「私たちもまだまだいける」と思わされます。
そんなふうに、それまでと180度違う生き方をして画家になった人がいます。前回ご紹介したアンリ・ルソーもそうですが、日本人にもすごい画家がいました。伊藤若冲、江戸時代中期の画師です。
1716年京都の生まれ。実家は京都の青物問屋で、23歳の時に父の後を継ぎますが、40歳の時に弟に家督を譲って隠居の身となり、画師としての遅いスタートを切りました。どの画派にも属さず、試行錯誤を重ねながら独自の画風を確立、85歳で亡くなるまで制作意欲は衰えず、好きな画業に打ち込み続けました。
生誕300年となる今年、東京都美術館で若冲展が始まり、さっそく行ってきました。寺院に伝わる襖絵などから中国渡来の花鳥画を模写し、写実絵画を学んだ若冲は、身近な動植物を題材にした花鳥画、鳥獣画を多く残しています。
一番惹かれたのは、10年以上の歳月をかけて相国寺に寄進した30輻の「動植綵絵」。思わず見入ってしまうほど、精緻を極めた動植物図。梅、桃、鳳凰、孔雀などの華麗な題材はもちろん、魚、貝、水辺の虫、爬虫類、両生類に至るまで徹底して描きこまれた作品は、まさに生命の謳歌と仏様への感謝です。特に鶏は自宅の庭で何羽も飼い、写生を重ねたというだけあって、その力強い生命力はひしひしと伝わってきます。
でも、若冲の魅力はそれだけではありません。そう感じたのが、二双の屏風からなる『鳥獣花木図屏風』。動物たちが集まった地上の楽園が描かれています。
よく見るとモザイクのように小さなマス目があり、その一ます一ますに違った塗り方がされ169x374cmの大作を構成しています。写実を極めたからこそできる簡略化と想像力によって、モダンアートと見紛うような新しさを感じました。おそらく後期の作品だと思いますが、画師としての評価を得た後も、常に新たなテーマにチャレンジし続けるところはすごいと思いました。
どれも実物をぜひ見ていただきたい作品ばかり。開催は5月24日まで。5月8日までは8Kスーパーハイビジョンの特別映像もあり、こちらもちょっと見物です。
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娘がこの4月から就職し新しい道を歩き始めました。毎日悩んでは立ち止まり、また歩き出す姿は約30年前の私と同じ。若冲の生き方を見ると次の30年は、もう一回分別の生き方ができると勇気をもらえました。
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