太陽の塔のお腹に入ってきました
こんにちは、坂本澄子です。
太陽がいっぱいのGWが終わったら、冷たい雨ですね。
GWはいかがお過ごしでしたか?
私は、岡本太郎さんの『太陽の塔』の内部が復元されたと聞き、大阪に見に行ってきました。
大学〜社会人前半の20年を大阪のしかも北摂で過ごしたので、「太陽の塔」は身近な存在だったはずなのですが、距離的に近いのと、知っているのとはえらい違い。お恥ずかしながら「内部」があったなんて、この再生イベントがあるまで知らなかったのですよ。
なにしろ、万博が閉幕してもう48年。その間、封印されていたのですから。
この企画展、当時を懐かしむ世代や岡本太郎さんのファンが押し寄せ、随分先まで予約で埋まっているそうですが、ふるさと納税の優先予約枠のおかげで、GWにもかかわらずじっくり鑑賞できラッキーでした。
万博記念公園に到着すると、ゲートで30分待ち。それもそのはず、エキスポランドあり、フリマあり、カレーEXPOありとGWはイベント満載。入場後は比較的空いている太陽の塔を囲む芝生に沿って一周し、太陽の塔をまずは外側から360°鑑賞しました。
お腹についている「太陽の顔」は現在を
頂部の「黄金の顔」は未来を
そして、背面の「黒い太陽」は過去を表しています。
ここまでは多くの方がご存知でしょう。
でも、「太陽の塔」には4つ目の顔があったことは、私を含めて意外に知られていないのでは。
塔の内部にあった「地底の顔」です。
太陽の塔は、もともと万博の会期が終わった後はとり壊される予定だったため、閉幕後は展示物は内部から運びだされ、多くは「川崎市岡本太郎美術館」(などで保存・展示されていますが、「地底の太陽」だけはその後行方不明になっているそうです。
顔の直径が3m、左右のフレアを入れると全長11mの巨大な黄金の仮面、一体どこに…と思うと、なんともミステリアスです。
今回の内部公開では、当時の写真を頼りに復元された「地底の太陽」が地下に展示されています。呪術的な存在と言われ、テーマを支えた世界の仮面や神像が共に展示されています。バリ島とおぼしきお面もありました。
70mの塔の内部にそびえ立つのが、高さ41mの「生命の木」。5色に塗り分けられた幹は五大陸を表すそう。
原始生物から人類の祖先クロマニヨン人まで33種の生き物たちが、進化の歴史を追うように上へ向かって配置され、吹きあげるような生命の力を感じます。
ほとんどのオブジェは修復されたり新たに作り直されて、元の枝に戻されたそうですが、一番大きなプロントサウルスとゴリラだけは、動かせなかったのか当時のまま残されていました。
毛に覆われていたはずのゴリラの頭部は機械仕掛けがむき出しになり、形あるものはやがて朽ちる、半世紀の時の流れを目の当たりにしたようでした。
階段を上りながら生き物の進化の過程を追っていきます。
永久保存が決まってから、補強のため壁を20cm厚くしたり鉄骨部材を入れたことで、その分塔の内部が狭くなり、木の枝がところどころ階段へと突き抜けています。これがなかなかよく、当時の制作意図とは別ですが、一層エネルギーを感じるものになっています。
壁一面が赤い襞のようなオブジェで覆われ、本当に体内にいるような錯覚。音楽、照明が一体となった空間です。
「生命の木」のてっぺんまで上るとそこは踊り場になり、太陽の塔の腕へと繋がっています。
かつては、長さ25mの腕をエスカレーターで斜めに上昇し、腕の先端の開口部から建物の屋上に出ることのできる設計だったそうです。
今はエスカレーターは撤去され、むき出しの鉄骨がライトに照らされ幻想的な光景を描きだしていました。
とにかくスケールが大きく、太陽の塔自体はもちろん、あらゆる展示物が解説などまるで寄せ付けない存在感を放っています。
ほとばしる生命のエネルギーにただ身を任せる…これが「太陽の塔」の正しい鑑賞法のようです。
朝日新聞digital「再生 太陽の塔」に動画付きで紹介されていますので、ぜひどうぞ。
年間アクセスランキングで振り返る2018年
今年も残すところ、後10日。皆様にとって今年はどんな一年だったでしょうか。
恒例となりました「年間アクセスランキング」の発表を通じて、今年のバリアートショールームの一年をご一緒に振り返ってみたいと思います。
今年は、日本のお客様に好まれるモチーフをお願いし、制作段階から積極的に関ってまいりました。
既に販売済の作品もありますが、お目に留まった作品がございましたら、画像クリックして詳細をご覧いただければ光栄です。よろしければ、ご注文制作も承ります。また、年内28日ご注文分まで全国送料無料でお届けしていますので、あわせてどうぞご利用ください。
では、まいります。第10位からのカウントダウン!
2017/6/1-12/20の閲覧開始数に作品掲載時期を加味してランキングしました。
いつも多くの方に見ていただき、大変嬉しく思っています。ありがとうございます!
キャンバスのまま飾ってもステキです
こんにちは、坂本澄子です。
寒くなってまいりました。
先日、富有柿のふるさと、岐阜県揖斐郡大野町から、甘くて美味しい柿をたくさん送っていただきました。
食後のスイーツとして上品な甘さを楽しんでいましたが、送ってくださったお客様から、ちょっと変わった食べ方を教えていただきました。早速試してみたところ、!!!
その1:エビチリ。いつもの作り方に柿を加えるだけ。私の場合、Cook DOを使い、ソースを入れたところで、食べやすい大きさに切った柿1個分を投入。ボリュームアップしてお腹も大満足でした〜。
その2:カレー。やわらかくなった柿を皮をむいてそのまま投入、野菜と一緒に煮込みます。コクが出てとてもおいしいです。
ぜひお試しあれ。
さてさて、師走がやってまいりました。
クリスマスのデコレーションを飾ったら、やっぱり絵もほしくなりますよね〜!
絵が一枚あるだけで、お部屋の華やかさがグンとアップします。
バリアートショールームでは、届いたその日に飾っていただけるよう、それぞれの絵に合った額装をしてお届けしていますが、
大きめの作品の場合、キャンバスのままで飾っていただくのもステキですよ。
すっきり飾れて、周囲のインテリアにもすっと馴染みます。
Budiの新作『実りの木 III』はそんな飾り方をしていただけるよう、キャンバスの側面にも絵を加えました。奥行き5cmの木枠を使用していますので、夜は照明で影ができ、浮かび上がるような立体感がでます。
いまなら全国送料無料でお届け(12/28まで)します。特にラージサイズの絵はお得。関東なら¥2,646、関西なら¥3,348、九州(南九州)ならなんと¥4,320の送料が無料になります。この機会にぜひどうぞ!
人生100年時代の生き方 取材いただきました
ここ10年、いろんな方の絵を見ていますが、最初に作品を見て、その後ご本人にお会いすると、あらっと思うことがよくあります。
エネルギーに満ちた筆使い、躍動感溢れる構図に、若い方の作品だとばかり思っていると、実は80代のおじいちゃんだったなんてことはしょっちゅう。年齢を重ねて、逆に益々チャーミングで愛らしいおばあちゃんもいっぱい。
私もそんなふうになりたいと、人生の後半戦の生き方をぼんやりと考えていた頃、バリ絵画に出会い、あれよあれよという間に、それまでとは全く違う道を歩き始めることになりました。
独立してこの5年間、色々ありました。何がつらかったかって、展示会を開いて、お客様に来ていただけるのを待つときの孤独な時間の長さ。この絵がいいと情熱を注ぎ込んでも、そう思うのは自分だけではないのかと、考えてしまったことも。
でも、その度にお客様との新しい出会いがあり、絵を持つことをとても喜んでくださる姿を見ると、この仕事をやっててよかったと、しみじみ思うのですよ。
そんな行きつ戻りつを何度か繰り返しているうちに、人生の後半戦は、人からどう見られるかではなく、自分自身がどう思うのかが大切なのではないかと考えるようになりました。
私のそんな生き方を、人生100年時代のコンシェルジュ「Ageless」さんのコラムで、3回シリーズでご紹介いただいています。
取材して記事を書いてくださったのは、元テレビ東京のキャスターの槇徳子さん。
メディア業界のご出身だけあって、インタビューの中で、キラリとしたものを見つける目と、それらをつなぎ合わせてストーリーを構成されるプロのお仕事を真近に見せていただきました。
私の苦労した話に柔らかな表情で耳を傾けながら、こんなふうにされてはどうですかと、ひとつひとつ親身に考えてくださったのにはとても感激しました。取材に来られて、相談に乗ってもらえるなんて、思いませんもの。笑
ご自身も10年前に独立され、広告戦略のコンサルタントとして、幅広い活動をしておられる槇さん。それでも独立された当初は「私も同じように苦労しました」と、さらり。
そんなこんなですっかり意気投合し、11月のバリアートサロンは槇さんをゲストにお迎えし、対談トークスタイルで進めていきたいと準備中です。
槇さんご自身も大のアート好き。ご自宅のリビングには所狭しといろんな作家さんの絵が飾ってあるそうです。絵を持つ楽しみから、人生後半戦の生き方まで、いろんな話が飛び出しそうです。
ぜひ、遊びに来てくださいね。トークショーのあとは作品展示をご覧いただけます。
バリアートのある暮らし リビングが明るく
残暑厳しい毎日、いかがお過ごしでしょうか。
16kgに迫るケン(フレンチブルドッグ6歳)を抱っこしてマンションの下まで降りるだけで、もう汗がダラダラ。私にもダイエット効果がありますかしらん 笑
さて、お客様からのお便りをご紹介する「バリアートのある暮らし」、今日のお客様は東京・足立区にお住まいのKさまです。
先日の「文鳥5作品・今なら額縁が選べます」の企画で、いい絵に出会えました!とさっそく購入くださいました。
ご夫婦揃って絵がお好きで、ジャンルにはこだわらず、気に入った作品をお部屋に飾っておられるそうで、ポスターから始まり、次にリトグラフ、そして最後に原画に行きつかれたそうです。
「やはり原画は違いますね。想像していた以上のクオリティの高さに大変満足しています。
詳しくはこちらをどうぞ。
次の土曜日はバリアートサロンへ
こんにちは、坂本澄子です。
3月25日土曜日、久しぶりのバリアートサロンを開催します。今回はなんとテレビカメラが入ります。
N放送協会さんのEテレ、人生の折り返し地点に差し掛かった私たちの世代を元気にしたいという新番組で、取り上げていただけることになりました。きっかけは2年前の「夕刊フジ」のコラム「人生二毛作」でご紹介いただいたときの記事。私のちょっと無謀な、会社員からの転身物語を読んでくださったプロデューサーさんから取材の申し込みがあったというわけです。
「本当に私でいいのでしょうか?」
正直悩みましたよ。だって、バリ絵画の仕事も絵描きになる夢も、まだまだこれからですから。もっとカッコよく成果を出している方が他におられると思ったのです。
「いえ。ビジネスをテーマにした番組ではなく、人にフィーテャーし、生き方を紹介する番組ですから」
「なるほど、そうですか」
中に向こう見ずな私のような輩が混じっていても、それはそれでいいかも…と、お受けすることにしました。
取材を受けて驚いたこと。こんなに?と思うほど、丁寧に取材をされるんです。あやふやに答えていると、それはどうしてですか?と鋭いツッコミが(^o^; でも、そのおかげで、この4年間を見つめ直すよい機会になりました。
実は、独立して1年が経った頃が精神的に一番辛かったのです。以前の私は、お客様から頼りにしていただき、部下からも頼りにされ(されてないか^o^;)、それなりに忙しい毎日を過ごしていたのが、いまの私は世の中の役にたっていると言えるだろうか。そんなふうに考えて、社会に繋がれない孤独や焦燥感に飲み込まれそうになったものです。
でも、いまこうして振り返ると、そのつらかった時期があったからこそと思うことが意外に多いのですよね…。そういえば、先日前職時代の仕事仲間と女子会をしたのですが、逞しい彼女たちも同じようなことを言っていました。
「絶好調のときよりも、むしろ苦しかったときに学んだことの方が生きているよね」
挫折したり、傷ついたりしながらも、夢を捨てきれずに走り続けるのは、若者たちの専売特許ではなく、私たちのような折り返し世代にもあてはまるのではないでしょうか。そんな思いを胸に、バリアートサロンでもお話しさせていただきたいと考えています。
取材&撮影が入りますとご案内したせいか、まだお席が残っています^o^; ぜひ遊びにいらしてください。私がバリ島で最初に出会った絵、この仕事を始めたとき背中を押してくれた絵、新たな方向性に気づかせてくれた絵など、この4年間のエピソードを盛り込みながら、バリ絵画の、そして、絵のある暮らしの魅力をお伝えできればと思っています。
第10回バリアートサロン、3月25日(土)14:00〜15:00。詳しくはこちらをどうぞ! お申し込みをお待ちしています!
素敵な絵を買いました
こんにちは、坂本澄子です。
先日、ある作品にひとめぼれして、久しぶりに自分のために絵を買いました。葉書大の小さな抽象画です。
うちには畳1畳分もあるバリ絵画をはじめ、絵で溢れかえっており、最近では私自身が描いた絵も含めて家中の壁を占拠しています。唯一、見つかったスペースが玄関。シンプルな空間に何か我が家らしいアクセントが欲しくなりました。
家族が帰ってきた時にはやさしく「おかえり」、友人が訪ねてくれた時には明るく「いらっしゃい」、そんな、小さくても優しい存在感がある絵があればいいなあと思っていたときでした。
最初は色に惹かれました。一つは暖色系(写真)、もう一つは淡い寒色でまとめたクールな作品です。両方ともそれぞれに魅力があり、どちらかに一方なんてとても決められず、結局その日は買うことができませんでした。
それから2週間後、幸いその絵はまだありました。飽かず眺めていると、どちらも顔に見えてきました。暖色系の方は笑った顔があちらにもこちらにも。なんだかホッとさせられます。寒色系の方はおとぼけロボットや動物たちの顔に見えてきました。
作家の明輪先生に制作意図をお聞きすると、今から10数年前、あるご友人を想いながら、パソコンのグラフィックツールで描いたのが原型。時を経て、不透明水彩で描きなおしたのだそうです。なるほど!人の喜怒哀楽が伝わってくるようなあたたかい雰囲気はそこから来ていたのだと納得しました。そして、それぞれ違ったイマジネーションの世界に引き込まれ、ますますもって決められなくなり。。
さらに2週間後。私のことを待ってくれていたかのように、その絵はまだそこにありました。こうなったらと、二つとも買っちゃいましたというわけです。幸い、玄関には左と正面に壁があり、それぞれ1点ずつ飾ることにしました。
かくして、玄関に絵がある生活の始まり。洗面所とお手洗いに通じるドアがあるため、通行回数は思った以上に多く、どの方向から来るかによって、見える絵が異なるのも楽しみに。そして、見るたびに違ったものが見えたり、一色だと思っていたところに、いろんな色の点描が隠れていたりと、新しい発見もありました。
実は抽象画を購入したのは初めてなんです。初めて絵を買われる方も、きっとこんな気持ちになられるのではないでしょうか。悩んでおられる方、ぜひ思い切って!本物の絵は想像以上にいろんなことを語りかけてくれますよ。
初めて絵を購入されるあなたにも、手頃な価格で質の高いバリ絵画。おすすめです。
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バリ島の美術館に選ばれた作家たち ・・・目の肥えたコレクターにも自信を持ってオススメします。
絵の具からバリ絵画を見ると 番外編
こんにちは、坂本澄子です。
描き手の視点から絵画を見るこの企画、もともと前編・後編の2回のつもりだったのですが、どうしてもこれはお伝えしたくて番外編を作っちゃいました。
バリ絵画でよく使われるアクリル絵の具、苦手なことはグラデーション、でしたね。でも、花鳥画などで花びらや羽毛に柔らかな陰影をつけたいとき、やっぱり必要なのです。そこで登場するのが竹筆。これを使うと、グラデーションがなんと一瞬でできてしまうのです。
竹筆というのはシャープなエッジのついた、竹製のヘラのようなもの。前編でもご紹介した通り、アクリル絵の具は乾くと水に溶けないので、上から色を重ねやすいのが特徴でしたね。その特徴を利用して、少なめの水で溶いた絵の具を竹筆のエッジの部分につけて、最初は強く、後半はシャっと流すようにすると、下色の上に別の色がいい感じにぼけてくれるのです。シャっシャっではなく、狙いを定めてただ一度、シャっ!がポイントです。
上の写真は、画家のエベンさんにバリ絵画の描き方を教わったときのものですが、この技法を使ったのが、白のプルメリアの花びらと中央のバナナの葉の茎の部分のぼかしです。エベンさんはこの竹筆を葉っぱのくっきりとした輪郭線を描く時にも使っていました。余談ですが、輪郭線は東洋絵画に特徴的なもの。光による明暗で立体を表現する西洋絵画ではほとんど見られません。
竹筆は画家が手作りすることが多く、パーツの大小に合わせて様々な幅のものがあります。
花鳥画と言えばこの人!と言われるラジック氏も10本近い様々なサイズの竹筆を使い分けていました。これで、右写真のような花びらのみずみずしさや野鳥の羽毛のやわらかさを表現していくわけですね。
いかがでしたか?絵の具を通してみたバリ絵画。
描き手の感性があふれた絵作りは、写真とは違う絵ならではの魅力ですが、それを下支えしているのは画家の持つ技術力です。今回ご紹介したように、画家それぞれに様々な工夫をしており、それがバリ絵画の質の高さにつながっています。あなたのご自宅にもバリアートをいかがですか?
絵の具からバリ絵画を見ると 後編
こんにちは、坂本澄子です。
箱根の鄙びた温泉に日帰り湯治に来ました。ひんやりとした空気にのって金木犀の香りが漂っています。秋ですね。
これまで、絵がお部屋にあるとこんなにステキですよと、絵を買ってくださる方の立場で書くことが多かったのですが、私自身も絵を描くようになってから、描き手の思いや工夫を知っていただくことで、別の楽しみ方ができるのではないか、と思うようになりました。
小中学校時代、絵を描いた経験がおありでしょう。私の場合は、最初に絵を習った先生から、「この葡萄を見たとき、何て感じましたか?おいしそうと思ったなら、そのおいしさが、みずみずしいと思ったら、そのみずみずしさが表現できているか、それだけを考えて描きなさい。そして、葡萄をよく見たら、紫だけでなくいろんな色が見えてくるでしょ、それらを全部使って描きなさい」と教えられました。写真とは違う「絵ならではのおもしろさ」を教えてくださった最初の恩師です。
さて、アクリル絵の具のお話です。
アクリル絵の具を使っていろんな描き方ができます。薄く溶いて、澄んだ透明な色を塗り重ねることで出せる深みのある色については、前編でお伝えした通りです。
逆に、油彩画のように筆あとを残し、盛り上げて描くこともできます。また、メディウムを使えば、ダイナミックに絵肌を変えることも。メディウムというのは、キャンバスや紙に定着させる糊のようなもので、絵の具だけでなく、いろんなものを混ぜることができます。そこに砂を混ぜたのがアンタラ氏です。
人物画で定評のあるウブドの画家のアンタラ氏は、家族や隣人へのあたたかな眼差しをテーマに、作品を発表し続けています。ある時、下塗りの段階で、砂を絵の具に混ぜることを思いつきました。バリ島に伝わる砂絵が、ヒントになったのでしょう。大きさの異なる砂の粒によって光が拡散することで、ふんわりとやさしい表情を出すことができました。
←『夢見る頃』(部分) ANTARA 60x50cm
実は、そんなアクリル絵の具にも苦手なことがあります。グラデーションです。乾くのが早い分、違う色を混ぜて徐々に変化させるのは難しいのです。乾きを遅くするメディウムを混ぜて、筆の先で少しずつぼかしながら色を馴染ませることもできますが、効果的なのは油絵の具との併用。アクリル絵の具で描いた上に、油絵の具で微妙なニュアンスをつけていくのです。
この方法を用いて描いたのがこちら『豊穣の女神』です。アクリル絵の具で一通り描いた後、人物の肌や遠くの空に溶け込むような霞んだ風景など、繊細な描写が必要な部分を薄めに溶いた油彩で仕上げています。
『豊穣の女神』ANTARA 100x150cm →
しかし、グラデーションを一瞬で作れる伝統的な技法がバリ絵画にはありました。次回はおまけ編として、バリ絵画におけるグラデーションをご紹介します。
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絵の具からバリ絵画を見ると 前編
こんにちは、坂本澄子です。
バリ絵画の多くは、アクリル絵の具で描かれていることをご存知ですか?水て溶いて使う手軽さは水彩と同じ。乾くと水に溶けなくなるので、塗り重ねが自由にできるという利点があります。同じことは油絵の具でもできますが、乾くのになにしろ時間がかかるので、乾いては塗るのを何度も繰り返して、微妙な深〜い色合いを出すという点では断然アクリル絵の具に軍配が上がります。
実は私もバリ絵画との出会いの中で、アクリル絵の具の魅力に触れ、自分でも絵を描くときに使っています。
アクリル絵の具は絵画の歴史の中では比較的新しい画材で、商品化されたのは戦後間もないアメリカで。発色の良さや速乾性からすぐにデザイナーたちに受け入られ、ファインアートの分野でもファンを広げています。
そのアクリル絵の具、なぜバリ島の画家たちの間でこんなに普及しているのか。これは私の想像ですが、バリの自然や風物を表現するのに鮮やかな発色がマッチしていたことと、気候に左右されることなくすぐに乾くことが、ガッチリ彼らのハートをつかんだのではないかと思います。
冒頭でご紹介した塗り重ねの技法を、制作に巧みに生かしているのはLABAさんです。緑いっぱいの花鳥画はバリ島に溢れるほどありますが、やがて見飽きてしまい、何となく安っぽい感じに見えてしまう作品も少なくありません。その原因のひとつは、単調な色使いだと思うのです。
ところが、LABAさんの作品には見ればみるほどさまざまな緑が使われています。色調と明るさの異なる緑が交互に現れ、独特のリズムさえ感じます。薄めに溶いた色を幾重にも塗り重ねる技法によるものですが、透明度の高いカラーセロファンを重ねると下の色が透けて、複雑に色が変化しますよね。これと同じことが絵の具でも起こり、きれいな透明感と同時に深みも作り出しているというわけです。
なかでもおすすめはこちらの『少年たちの情景』。画家が少年時代を懐かしんで描いた作品ですが、絵の手入れをしながら間近に見て、何度「すごい!」と思ったことか。写真だとお伝えしきれないのが残念です。
70x50cmと少し大きめの作品は、前景、中景、背景とそれぞれに見所があります。例えば、雲のようにも波のようにも見え想像力を掻き立ててくれる遠景。風にしなる椰子の木の迫力。模様のように簡略化された稲穂と草地が交互に繰り返されるリズム感など、絵としての面白さに溢れ、また、様々な種類の緑が素朴な表情の少年たちを引き立てながら、全体としてしっとりと調和した作品に仕上がっています。
ところで、アクリル絵の具のもうひとつの特徴はアクリル樹脂が作る強い表面です。一旦乾くと水をつけてゴシゴシやってもビクともしません。私もこれで洋服を何枚だめにしたことか(笑)ですから、絵の前にアクリル板を入れずに額装して、作品そのものの美しさを楽しんでいただければと思っています。おタバコを吸われないのであれば、お手入れは固く絞った柔らかい布でやさしく埃を取るだけでOK。
湿度の高いバリ島では、古い絵のほとんどが朽ちて残っていないという残念な歴史があります。アクリル絵の具の威力で、LABAさんのようないい絵が次の時代に受け継がれていきますようにと、願う今日この頃です。
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