バリ島美術館巡り① プリ・ルキサン美術館
こんにちは、坂本澄子です。今日からバリ島の美術館巡りを3回シリーズでお届けします。
ご紹介する3つの美術館はいずれもインドネシア共和国の教育・文化大臣により公式開館、財団により運営されていますが、それぞれコレクションにこだわり、特徴があります。プリ・ルキサン美術館は設立が最も古く、バリ伝統絵画を中心に作品を所蔵、ネカ美術館は戦後〜現代絵画に比重が置かれています。特に、オランダ人画家のアリー・スミットの作品及びその影響を受けたヤング・アーティストたちの作品は独立したパビリオンが設けられているほど充実。そして、最も新しいアルマ美術館は、絵画だけでなくバリの伝統舞踊や劇、ワークショップなどを通じて広くバリの伝統文化を発信しており、同じ精神で活動したバリ近代芸術の父ドイツ人ヴァルター・シュピースの功績も紹介されています。ありがたいことに、これらの美術館はパンフレットだけでなく、それぞれの作品解説に英語、インドネシア語と並んで日本語があり、作品の理解を深めるのにとてもよい環境です。ウブドを訪れたら、これらの美術館でぜひ本物のバリアートの世界に浸ってみて下さいね。
<プリ・ルキサン美術館の精神>
プリ・ルキサン美術館は1956年開館、オランダ人画家ルドルフ・ボネによる構想と所蔵絵画の寄贈で始まりました。その精神は1936年のピタ・マハ運動に遡ります。バリ島は1920年代に「最後の楽園」としてヨーロッパで脚光を浴びて以来の観光の島、バリ絵画はお土産品として人気が出ると、同じ図柄パターンでいわば流れ作業的に大量生産された粗悪品が出回るようになりました。これに対して、バリ伝統美術の保存と発展を使命として発足した芸術家たちのコミュニティが「ピタマハ芸術家共同体」です。この創設者がボネとシュピース、そこに当時のバリ絵画を代表する画家たちが加わりました。プリ・ルキサンとは「絵画の王宮」という意味、まさにこういった精神を受け継いでいるのです。
<充実した伝統絵画のコレクション>
バリ伝統絵画の土台となったカマサン・スタイルの17世紀初頭の作品やバトゥアン・スタイル、そして、西洋技法を取り入れ村人たちの日常の生活を描いたウブド・スタイルの作品が充実しています。闘鶏は最もポピュラーな題材で、男たちの興奮した表情や雄鶏の激しい動きが生き生きと描かれています。バトゥアン・スタイルはインド叙事詩の物語の場面を描いた作品が多く、私はこの分野にはあまり詳しくありませんが、薔薇色の瞳を持つ英雄ラーマ王。略奪されていたシーター妃を取り戻すシーンなど人気のある場面は色々な画家の作品に登場します。一度じっくり勉強し、またブログの中でご紹介したいと思っています。
このプリ・ルキサン美術館、ウブドの中心部の大変便利のよい場所にあります。入場料5万ルピア(約500円)でドリンクもついていますので、ショッピングに疲れたら是非立ち寄ってみて下さい。そして、この「バリアートショールーム」で扱っている画家の作品も見て来て下さいね。(ウィラナタ, ソキ, ガルー作品を所蔵)
7月10日〜15日のバリ絵画展「緑に抱かれる午後 〜 Deep into the Forest 〜」にも是非お越し下さい。
【お詫び】ネカ美術館の外観写真が誤って掲載されておりましたので、訂正致しました。(2013/06/21)