パウル・クレーの絵の面白さ
こんにちは、坂本澄子です。
先日、宇都宮美術館に『パウル・クレー だれにもないしょ』展を見に行ってきました。宇都宮美術館と言えば、マグリット(美術の教科書でもおなじみの「大家族」も所蔵)、シャガール、カンディンスキー、クレーなど、20世紀を代表する巨匠たちの作品を中心に約6500点もの充実したコレクションを持ち、前から気になっていた美術館でした。
実は私自身、クレーにはちょっとした思い入れがあります。抽象と具象の間にあるミステリアスな雰囲気に憧れて、何点も模写した時期があります。暗号のように作品にしのばせられた記号、不思議な形をした物体など、「これは何なのかしらん」と考えているうちに、いつの間にかクレーの世界にはまりこんでいました。
今回の展示は様々な工夫を凝らしながら、そのミステリアスな魅力を解明してくれています。
クレーはキャンバスの裏側に別の絵を描いていたり、もとは大きな一枚の絵だったものを切断して複数の作品に仕上げたりと、おもしろい制作をしています。会場では、壁の両側から2つの作品を鑑賞できたり、もとの大きな作品の全体が見れたりと、謎解きのヒントが与えられます。
例えば、こんな展示がありました。町と人物を描いた一見穏やかな風景なのですが(左写真:『窓辺の少女』、切り取られた作品を並べてみると、その視線の先には女性の死体が横たわり、あたり一面に第一次世界大戦直後の荒涼たる風景が広がっています。
ところで、前回のブログでバリ絵画の価格についてご紹介しましたが、この点においても、クレーはとてもユニーク。ギャラリーとの契約を解除して以降、クレーは作品価値を自らコントロールし、作品一点一点に「価格ランク」をつけました。通常、絵の値段は作家ごとに号あたりの金額がだいたい決まっており、号単価50,000円の作家の場合、10号(長辺53cm)の作品だと500,000円が目安となります。が、クレーの場合は作品に対する自己評価で価格設定され、最高ランクである「特別クラス」は売らずに手元で大切に保管されていました。
こんなふうに制作の背景がわかると、新たな視点を持って作品に向き合うことができます。都内からですと少し距離がありますが、里山に囲まれた美しい公園が美術館までのアプローチを楽しませてくれます。そして、レストランもなかなか。窓の外を見ながらのランチは、まるで森の中にいるみたいです。この企画展は9月6日まで。ドライブがてらいかがですか。
バリ絵画も描かれた題材や背景がわかると、何倍も楽しめます。という趣旨で毎月開催している「バリアートサロン」、次回は8月23日(日) です。バリ島の暮らしを描いた風俗画をご紹介しますので、詳しいご案内はこちらをどうぞ。
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宇都宮美術館 『パウル・クレー だれにもないしょ』展 公式サイト