「闘鶏」大地への流血で悪神を鎮める
こんにちは、坂本澄子です。ひな祭りも終わり、いよいよ春がやってきますね。
「神々の棲む島」バリ島。バリ・ヒンドゥ教には古来からの精霊信仰が融合しているので、精霊ロ・ハルス(Roh Halus)を敬う風習が今でも残っています。ウブド市街地のところどころに作られた細い路地。祖先の霊や精霊の通り道と言われているんですよ。自治体や地域住民がお金を出し合って作っているそう。年配の人ほど信仰深く、この女性もここを横切るときにそっと黙礼をしていました。
天界の神に対し、地界には悪神ブト・カロ(Bhuta Kala)がいて、人間を病気や災いで苦しめると言われます。神々や精霊への供物はチャナンと呼ばれて祭壇に置かれますが、悪神ブト・カロが悪さをしないように地面に供える供物をチャルと言います。闘鶏による大地への流血もこの悪神への捧げものとされているんです。
今日はその闘鶏のお話。
バリの民家の軒先に1羽ずつ竹で編んだ籠に入れられた雄鶏をよく見かけます。これは闘鶏用に男たちが手塩にかけて(まるで恋人のように!)育てているもの。一旦負けてしまうと、即刻肉にされるという過酷な運命が待ち受けていますが、これが村の男たちにとっては儀式であると同時に、何よりの娯楽なんです。
しばしば絵画のモチーフとしても取り上げられます。写真の2点はプリ・ルキサン美術館所蔵の作品で、いずれもウブド・スタイルで描かれたもの。男たちがそれぞれの場所を陣取って闘鶏に興じている姿が生き生きと描かれていますね。オランダの植民地だった1920年代にルドルフ・ボネなど西洋画家の影響を受けて、骨格や筋肉を意識したよりリアルな人物像が描かれるようになりました。庶民の生活が題材として登場するようになったのもこの頃です。
ところで私、ニワトリと言うとちょっと哀しい思い出が…。子供の頃ニワトリを飼ったことがあるんです。お祭りの夜店で買ったヒヨコのピーちゃんが大きくなり、白い大きなニワトリ(ハクショクレグホン)に^^; それが毎朝5時前からコケコッコーと鳴き出すので、ご近所迷惑とうちの母がハラハラしどおし。そして、ついにある日、知人の田舎に連れていかれちゃったのです。「広い場所に行けてよかったじゃない」と母。ところが20年以上も経った頃、もう時効だと思ったのか、「実はあれは食べられたのだ」とカミングアウト。「えー、何。いまさらっ(泣&怒)」
だからという訳ではありませんが、「バリアートショールーム」には残念ながら闘鶏の作品はありません(^0^; でも、豹やカエル、文鳥などを描いたユニークな鳥獣画はありますよ。3月29、30日の「バリアートショールーム1周年記念 展示即売会」@表参道で全作品(約40点:バリ直送品を除く)を公開。是非見にきて下さいね。開催概要はこちらです。