一枚の絵が与えてくれるもの
こんにちは、坂本澄子です。
恋人や気の合う友人と絵を観に行くと、ふたりとも同じ絵を気に入ってるんだけど、惹かれた理由や感じ方が異なること、よくありますよね。どちらかがそれを口にすると、「へえ、そんな見方をしていたのか」と感心し、その絵に対する理解がさらに深まったり、その人の知らなかった一面を発見したりするわけです。これによって絵を見る楽しみが何倍にもふくらみます。
ありがたいことに、私にもそんな友人がいます。私が感覚的、直感的に受けとめるのに対して、向こうは、例えば美術館だと、その絵画展のコンセプトや作品の時代背景などの解説がありますが、そういうのをちゃんと読んでいて、「同じ場所を描いているけど、さっき見た絵とは色遣いが違うよね」といった感じで、その背景にあるものを教えてくれるのです。すると、漠然と感じ取っていただけのものが、「だからこんな沈んだ色使いなのか…」とその意味合いがより鮮明に浮び上がってきます。
そういった会話が面白いのは、◯◯のように見えるんだけど、これは何なのだろうというときです。私自身もこんな経験をしたことがありました。夜桜を描いた背景の処理に、藍色のアクリル絵の具の上から、色鉛筆を使って水色をかけました。月夜の明るさを表現する意図があったのですが、色鉛筆は芯が固いため、どうしても鉛筆を運んだ方向に線のような跡が残ってしまいます。これがある人には水面に映った月の光に見えたようです。ところが、別の人には全くそうは見えなかったらしく、「え、どこどこ?!」
これが写真とは違う絵の魅力のひとつだと思うのです。その人の目のフィルターを通じて、どんなふうにも見えるし、絵の具には凹凸があるため光の当たり方ひとつで印象も随分変わります。同じ絵を見た人どうしのそんな会話は、作品に対する見方を深め、さらに立体的な見方を可能にしてくれると思います。
そんな会話を楽しんでいただきたいと、7月29日(火)、「一枚の絵」を前に語り合う場を企画しました。初めて会ったどうしでも意気投合なんてことになるかも知れません。「一枚の絵」はWIRANATA(ウィラナタ)の新作を展示します。バリ島の棚
詳しくはもうすぐご案内しますので、夕方はあけておいてくださいね!