絵の具のおはなし
こんにちは、坂本澄子です。
今日は絵の具のお話を。バリ絵画の多くはアクリル絵の具で描かれています。水彩絵の具のように水に溶いて使い、乾くと耐水性になるため、上から自由に色が重ねられます。その手軽さからか、最近は日本の公募展をみても、若いアーティストを中心にアクリルで絵を描く人が増えてきたと感じます。
バリ絵画に特徴的な、黒で陰影をつけた上に色を重ねる塗り方には、アクリル絵の具が適していると思います。微妙に色調を変えて、色を塗り重ねることにより、あの深〜い癒しの緑色が出せるのですね。乾きが早い分、難しいのはグラデーション。でも、そこはさすがプロ。ヘラのような形をした竹筆を横向き使って、色と色の境目を丁寧にぼかしていきます。竹筆は縦向きに使うとシャープなラインが描けるスグレモノなのです。
最近は美術学校で絵を学び、西洋技法で制作を行う画家さんも増えてきましたので、モダンなスタイルの作品には油絵の具もよく使われています。バリ島に行った際に、現地で絵を購入して、クルクルと巻いて持ち帰る方もおられると思いますが、油彩の場合はヒビが入りますので、注意してくださいね。持ち帰る場合はアクリル画がオススメです。
さて先日、埼玉県朝霞市にある絵の具メーカーのクサカベさんの工場に伺い、絵の具の製造工程を見せていただきました。油絵の具は顔料に植物油脂を混ぜて作られますが、粘度が高く重いため、化学製品のようにパイプラインで流して…と機械化するは難しいのだそう。町工場の素朴な雰囲気の中で数々の色が生まれていました。
<絵の具は5つの工程からできています>
①ミキサー:顔料と乾性油、さらに助剤を配合して大型ミキサーでよぉ〜く混ぜます。
②ロール:混ぜた材料を3本の太いロールに流し入れ、回転させながら練り上げます。これによって、顔料の塊がほぐれて、油と均一に練り合わされます。滑らかでツヤのある絵の具はこの工程からだったんですね。
③品質検査:出来上がった絵の具を色、かたさ、粒子の大きさなどから確認します。これは基準色サンプルと付き合わせ、ほとんどが人の目によるチェックです。
④醸成:絵の具を缶に詰めて寝かせます。これは発色をよくするため。習作用で1週間、プロ用で2〜3週間。最高級品になるとなんと1年も醸成します。
⑤充填:自動充填機でチューブに詰めます。見ていてメカ的に一番面白かった工程。特にラベラーの刷毛がクルクルと回って糊付けしラベルを貼っていくところは単純ですが、実に正確。
驚いたのは、それぞれの工程に思っていた以上に人の手が入っていること。どれくらい練るかも工員さんがヘラを使ってそのかたさを確かめながら細かい調整を行っておられました。
こうして完成した絵の具。同じ量でも色によって値段が随分違います。その差、約5倍。ちなみに一番高いのがバーミリオン(朱色)。原料が高いのと、荒い粒子を細かくすりつぶす分、工程が増えるためなのだそうです。
絵の具は日本国内はもちろんアジアにも出荷されています。もしかすると、バリ島で描かれている絵も日本で作られた絵の具が使われているかもしれませんね。ご興味のある方は、「エベンさんのバリ絵画の描き方講座」(blog 2013/5/29)でバリ絵画の描き方を紹介していますので、読んでみてくださいね。
さてさて、第6回バリアートサロンを開催します。16時からの回はまだ若干お席に余裕があります。12時まで申し込み受付中ですので、今年最後ですので、ぜひこの機会にどうぞ!申し込みはこちらから。お待ちしています。