画家と作りあげた至福の時間 - アンタラ
こんにちは、坂本澄子です。
画家にはいろんなタイプがいます。自分の作風を守り、深みを増していく画家、新しいものにチャレンジし続ける画家。画家としての持ち味はもちろん、人となりに触れられるのは、依頼して描いてもらうときなんです。そこで、3回にわたって、注文制作を通じて感じた、3人の画家のそれぞれの魅力をお伝えしたいと思います。
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一昨年の秋のバリ絵画展で展示した「黄色い絵」を覚えておられるでしょうか。あの作品を描いてもらうまで、アンタラさん=人物画という印象がありました。人物を描くことを通じて、バリの伝統のすばらしさを伝えたいというのが、彼の制作に対する思いでしたから。ところが、その少し前、アトリエをウブド郊外に移した頃から、絵が変わってきました。こんなに風景画もうまい人だったんだと、正直驚いたくらいなのです。
海を描いても、田園風景を描いても、細かい描写にも決して手を抜くことがなく、ひとつの絵にとことん向き合う、忍耐強く静かな情熱は、アンタラさんの人柄そのものでした。そして、絵が完成に近づいたある日、私はひとつの相談をしたのです。
「背景に川や木立を加えてみてはどうでしょうか」
空に溶け込んでいくようにまっすぐに続く田園風景は幻想的ですらあり、素晴らしいと感じました。しかし、その一方で、日本人のお客様を考えたとき、背景に変化がある方が好まれると思ったのです。
私の提案をアンタラさんは快く受け止めてくれました。買い手に求められてこそ、仕事として成り立つ。自分のスタイルを持ちながらも決してひとりよがりにならない、プロとしての意識の高さを感じた瞬間でした。
そして出来上がったのが、絵画展で見ていただいたこちらの作品だったというわけです。
絵画展では堂々の看板作品になってくれましたが、会期中に販売することは叶いませんでした。アジアのコレクターたちが新作を待つ人気画家ですから、すぐにこの作品にも引き合いがきて、バリアートショールームで買い取るか、お返しするかの選択を迫られることとなりました。
結局、大きさを必要とするこの作品は、お客様のお部屋に合わせてご注文制作を受ける方がよいと考え、作品を手放しました。しかし、アンタラさんと率直な意見を交わしながら、ひとつの作品を一緒に作り上げたという充実感と画家への信頼は、今日に至るまで色褪せていません。今度はその時間をお客様とご一緒に味わいたいと、恋い焦がれる毎日です。
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「第9回バリアートサロン」ではこんな実例を交えながら、ご注文制作の楽しみをお伝えします。5月29日(日)11:00〜12:00@有明サロン、申込みしてくださった方に詳細のご案内をお送りします。お申込みはこちらからどうぞ。
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