人の心に寄り添える絵
こんにちは、坂本澄子です。
この秋最初の金木犀の香りに出会いました。9月もあともうわずかですね。
月日の流れる速さに、いつも驚かされます。
さて、今日は私の作品のことをお話させてください。
今年5月、私の作品ページをご覧になった方から、制作依頼のメールをいただきました。
大切な方を失くしてお力を落とされているところ、『星降る夜』とそこに書かれた文章を読まれ、背中を押されたと書いてくださっていました。
その作品は、5年前の冬、長年勤めた会社を辞めて、新しい世界に飛び出す決心をした頃に描いたもので、そのとき見た風景が私の背中をポンと押してくれたのでした。
状況は違えど、そこにご自身の心情を重ね合わされたそうで、その絵をもう一度描いてほしいというのがご依頼でした。(元の作品は10年来の友人がアメリカに帰国した際に贈ったため、手元にはありませんでした)
初めてメールをいただき、その方の哀しみの深さを想像すると、期待される絵が自分に描けるだろうかと逡巡し、しばらくお返事ができずにいました。
すると、その方は諦めずに何度かお便りをくださり、時間的な猶予がいただけるのであれば…ということでお引き受けしました。
二科展の方が一段落してから集中して描き、つい先日無事にご依頼主にお届けすることができました。
着手する際にイメージ作りのために作った詩を添えてお送りしたところ、とても喜んでくださいました。
「心に響きました。そうなのですね。そうなのです。何度も読み返しました」
そして、最後にこうありました。
「この絵と詩を毎日見て、勇気を持って歩いていきたいと思います」
私自身もそのお言葉に励まされ、絵を描くことを通じて、人の心に寄り添っていきたいと、思いを新たにしました。
最後に、その絵と詩をご紹介したいと思います。
『星降る夜に』
キーンと澄み渡った冬の空に
こぼれる満天の星が瞬(またた)く
ほのかな明りを残す地平線
遠く山並みがシルエットを描き出す
人はどこから来て、そして、
どこへ行くのだろう
君と出会い、過ごした時間は
つかの間の宇宙の瞬(またた)き
眩(まぶ)しいほどの光を放ち
深い闇へと吸い込まれていった
ひとり残され
生きてく意味さえ、見つけられぬまま
僕は今日もひとり
この風景を見ている
葉をすべて落とした一本のケヤキ
冬の寒さを物ともせず
ピンと背筋を伸ばしている
細く張った枝のひとつひとつが
あふれる星の光を受けて
いま七色に輝き出す
凛とした君の強さを想い
冷たい空気を吸い込むと
少しシャンとした気分になる
「前を向いて、歩いて行きなさい」
そっと背中を押される声がした
一歩踏み出す勇気はまだないけれど
その声が今の僕を支えている
おつきあいくださり、ありがとうございました。