ちょっと不思議な世界 ひとつの絵に異時空間
こんにちは、坂本澄子です。ここ数日の寒の戻りに、一度納めた厚手のコートをまた引っ張り出しました。この週末は暖かくなってくれるといいですね。
さて、今日は少し私事を含めておつきあいくださいませ。
バリ絵画に最も影響を与えた外国人のひとり、ドイツ人画家ヴァルター・シュピース(Walter Spies)の不思議な作風に魅せられて、没後70年以上経った今も、バリ島にはシュピース・スタイルと呼ばれる幻想的な風景画を描き続ける画家たちがいます。
それらの作品の一番の特徴は、画家自身を風景の中に置き、その目を通じて見た風景を描いていることです。それによって、見る人もまた、同じ風景の中にいるように感じます。例えば、『光の風景』でウィラナタは、右手前に立つ青年として自身を表現しました。私たちは彼の五感を通じて、傾きかけた陽のまぶしさやけだるい暑さ、水田の青臭さまで感じているわけです。(画像をクリックすると作品詳細がご覧になれます)
そして、もうひとつの特徴が、ひとつの絵に複数の異時空間を描くことです。シュピースは『風景とその子供たち』『鹿狩り』といった作品の中で、木立や水を使って画面を分割しましたが、ガルーの『朝のセレモニー』では、中央に高い椰子の木を置くことで、緩やかな分断を作り出すことに成功しています。(画像をクリックすると作品詳細がご覧になれます)
そういった不思議な感じが何とも好きで、私自身もいつか身近な風景を題材に描いてみたいと思っていました。そして、ある写真にヒントを得て、最近描いたのがこちらです。
実は、この画面分割の技法、源氏物語などの絵巻物で私たちもよく目にしているんですよ。多くは物語の場面が雲によって区切られていますね。このやり方はバリ島でも『ラーマヤナー』など神話を描く際によく用いられました。シュピースはおそらくこの技法をバリ島滞在中に見て、自身の絵にも取り入れたのではないでしょうか。互いに触発されつつ、また新たなアートが生まれて行く。ちょっと素敵ですね〜。
先程の私の作品は16日(木)まで開催中の東京中美展(新宿世界堂6Fのギャラリーフォンテーヌ)に出品しています。入場無料なので、もしお近くに行かれることがありましたら、覗いてみてくださいね。優秀賞をいただいちゃいました^o^
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