バリアートショールーム オーナーブログ
2016.2.10

リトグラフ vs 肉筆画

こんにちは、坂本澄子です。

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ギャラリーから東京駅丸の内改札が見える

先日、東京駅まで出たついでに、初めて「東京ステーションギャラリー」に入ってみました。駅舎が改装されてから、丸の内北口を通るたびに気になっていた場所です。

やっていたのは、企画展「パリ・リトグラフ工房idemから ー 現代アーティスト20人の叫びと囁き」。偶然入ったのですが、その日が最終日でした。

パリのモンパルナスにある「idem Paris」は、100年以上もの歴史を持つリトグラフ工房。深緑色の鉄製の扉を開けると、7、8mの天井高の小型体育館のような場所に、年代もののプレス印刷機が重い音を立て、棚にはナンバリングされた大小様々なサイズの石版がずらり、壁にはここで制作された版画やポスターがところ狭しと飾られています。ちなみに、プリントインクや薬品を落として石版は再利用されます。

かつてはピカソやシャガールも制作を行ったこの工房で、ひょっとすると彼らと同じ石版が使いながら、20人の現代アーティストたちが職人と協働で作り上げたリトグラフ作品、120点が展示されていました。

ところで、リトグラフには大きく分けて二種類があるのをご存知ですか?ひとつは複製として版画を作るケース。もうひとつは最初からリトグラフという技法を用いて制作を行うケースです。作品価値が高いのはもちろん後者で、今回展示されていたのもそんな作品ばかり。

日本では一点物よりも、リトグラフやシルクスクリーンなどの版画作品を購入する人の方が圧倒的に多いですし、「バリアートショールーム」の展示会を見に来られるお客様にも、「ガルーさんの作品をリトグラフにする予定はないの」と訊かれることもあります。いままで素通りしてしまっていたリトグラフの魅力に、今日こそ気づくことができるかも知れない、なんて期待もあったのですが…。

スクリーンショット 2014-12-17 8.13.19やっぱりなんだかピンと来なかったのですよ。モダンアート作品としての、メッセージ性だったり、作家の世界観みたいなものには興味を持ちましたよ。でも、じゃあ、ガルーさんの絵をリトグラフにするかと言われたら、それはやはり違うと思ったのです。工房の卓越した職人技で、あの光の繊細さが再現できたとしても、画家が思いを込めながら時間をかけて筆を運んだ作品そのものとは明らかに違います。

なぜリトグラフなのか。価格的な理由が大きいでしょう。嬉しいことに、バリ絵画は著名作家の一点ものでもちょっと頑張れば手が届く価格。ですから、これからも「世界でたった一枚の絵」にこだわっていきたいと思っています。

IMG_6782ところで、今回の展示会にはひとつ面白い試みがなされていました。『楽園のカンヴァス』の著者原田マハさんの最新作『ロマンシエ』とのリンクです。小説の中に登場するリトグラフ工房「idem」とその展覧会。これがリアルに実現したのが、今回私が見た展示というわけです。

Romancier。フランス語で「小説家」という名のこの作品、さっそく買っちゃいました。外見はイケメン、中身はまるきり乙女。アーティスト志望の主人公、美智之輔の軽快な語り口にぐいぐい引っ張られるように読んでいます。小説がどんなふうにリアルへと繋がっていくのか楽しみ!

<関連ページ>

ガルー作品ページ    この光の繊細さがリトグラフで表現できるでしょうか

東京ステーションギャラリー 100年前の赤煉瓦が残る素敵な美術館

リトグラフ工房 idem Paris    工房の様子がたくさんの写真とともに紹介されています

『ロマンシエ』原田マハ 

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