モノクロームな風景にいだかれる
こんにちは、坂本澄子です。
バリの風景と言えば、鮮やかな色彩を思い浮かべますよね。でも、このときは違いました。
ジンバラン湾に陽が沈む頃、空はやわらかなサーモンピンクに染まり、漁を終えた船がゆっくりと戻ってきました。淡い朱はグレーへと変わり、まるで薄墨を流したように、その深みを増していきました。やがて、あたりは闇と静寂に包まれ、波の音だけが私の心を浸すように、いつまでも耳に残りました。
これを見たとき、私はガルーさんの描いた『黄昏の静謐』を思いました。水田が夕暮れの空の色を宿し、淡い朱からやがて来る夜を感じさせる青みがかったグレーまで徐々に変化していく様が、ガルーならではの繊細な筆使いで描かれています。家鴨たちが影絵のように見えるのは、まさに静謐なモノクロームの世界です。
この絵を素晴らしいと思うのは、見る人の視線をいざなう絵作りです。
最初に目を惹きつけられるのは中央にある高い椰子ではないでしょうか。そして、この絵の中で唯一強い色が使われている女性の姿に視線が落ちると、今度は、彼女が見ている家鴨使いの少年の方へといざなわれます。水田に映る空の色の美しさと言ったら、グラデーションがうっとりするほど見事。この静寂な風景に、家鴨のシルエットが面白さと動きを加えています。これらを堪能した後、少年の視線を追うように棚田の方へと導かれ、最後は遠景の山々の向こうにすーっと抜けていきます。こんなふうに、絵全体を楽しませてくれた後は、先ほどの波の音のようにすがすがしい余韻を残してくれるんです。
「本物の絵が持つ力」を感じる瞬間です。ぜひ実物を見ていただきたいと思いました。そこで、この『黄昏の静謐』を9月27日(日)開催の第4回バリアートサロンで展示することにしました。当日はバリ絵画の歴史とともに、様々なジャンルの作品をご紹介しますので、ぜひお越しください。詳しくはこちらをどうぞ。
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第4回バリアートサロン開催のご案内 9月27日(日)11:00〜@有明ショールーム
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