バリ絵画を愉しむヒント① バリ人の精神生活
こんにちは、坂本澄子です。バリ絵画には様々なスタイルがあり、風景画や花鳥画のように日本人にも馴染みやすいものから、バリ人の信仰や風物、さらにその背景にあるヒンドゥ教の教えや神話の登場人物を知っていないと理解が難しいものまで多岐に渡ります。そこで、知っているとバリ絵画が面白くなる豆知識をシリーズでご紹介します。1回目はバリ人の精神生活。と言うとちょっと大げさですが、多くのバリ人、特にウブド周辺の村人に共通する価値観をご紹介します。
【神々の棲む島】
バリは年に3回もお米が穫れるほど豊穣な大地、恵まれた自然環境にあります。そのため自然に対する畏敬の念が強く、毎朝夕、祈りと供物を欠かしません。彼らの信仰はヒンドゥ教と古来の土着信仰の融合体であり、精霊を敬う独特な考え方があります。よい精霊だけでなく悪霊もあり、供物(チャナン)を地面に捧げたり、闘鶏を行うのは悪霊を鎮める意味があるそう。精霊は渓谷や道の交わる場所に棲むとされていますが、自由に移動できるよう街の至る所に”精霊の通り道”と呼ばれる幅2〜3mくらいの細い道が作られています。そんな場所を通り過ぎる時には失礼しますとそっと呟くのだそう。
【共同作業が基本の村の生活】
昨年世界遺産に認定されたジャティルイの田園地帯。棚田の美しさもさることながら、1000年以上も続く伝統的な水利システム”スバック”(流水の分配という意味)が高く評価されたとのこと。このようにバリの人たちには何かを共有し共同で事に当たるという考え方があります。周囲との調和を重んじるところは、同じ島国の日本と似ているかも知れません。例えば、農作業はバンジャールと呼ばれる自治の最小単位での共同作業で行われます。トラクターの導入など一部機械化もされていますが、大半はまだ手作業。稲刈りもバンジャールの構成員総出で行い、穂先の部分だけを手で刈り取ります。
【バリ暦による祭礼中心の生活】
島民の95%がヒンドゥ教徒。210日で一回りするバリ暦に基づいて執り行われる祭礼を中心に、村人たちの生活が回っていると言っても過言ではありません。祭礼には様々なものがあり、夕暮れと共に伝統楽団ガムランの音色が低く聞こえてきます。特にクンニガン後の一ヶ月はオダランと呼ばれる寺院祭礼が集中しています。手をかけて準備した色とりどりの供物で寺院を埋め尽くし、僧侶が招かれ神々を召喚します。クンニガンは善が悪と戦って勝利したことを祝う行事、祖先の霊が各家に降り立つ日とされています。祖先の霊を迎えるために、各家の門口にペンジョールと呼ばれる竹飾りが立てられた村道の様子は壮観です。ちょっと日本のお盆に似ていますね。
次回は今日お話した祭礼や風物が絵画の中にどのように表現されているかをご紹介します。