画家紹介④「バトゥアンを進化させた色彩とリズムの調律師 アリミニ」
こんにちは、坂本澄子です。本格的な春の訪れを感じる季節になりましたね。毎朝の犬の散歩コースは早咲きの桜が満開です。
さて、今日はバトゥアン・スタイルに新風を吹き込んだ女性画家アリミニ(AYU NATIH ARIMINI Ni Gusti)さんの紹介です。
バトゥアン・スタイルはバリ伝統絵画を代表する様式のひとつです。バトゥアン村に滞在した外国人は芸術家ではなかったため、西洋の影響をあまり受けず独自の発展を遂げました。このスタイルの画家たちは暗い色彩を用いてキャンバスいっぱいに細かくモチーフを描き込んだ作品を発表しています。アリミニさんは 8歳から画家の兄の手ほどきを受けて絵画の世界に 入り、女性ならではの感性を生かしたポップな色彩とリズミカルな動きを取り入れた作風で新しい流れを 作っています。その作品はバリの主要美術館で所蔵 されると共に国内外に多くのファンを持っています。
日本でも、1985年に開催された展覧会にウブドの女性芸術家協会の主要メンバーとして出品しています。また、漫画家のさくらももこさんとも著書「ももこの世界あっちこっちめぐり」(集英社刊)の取材を通じて交流があり、2005年には氏のデビュー20周年記念で合作リトグラフの制作にも参加するなど、日本との関わりも少なくありません。皆様方の中にもアリミニさんの作品を目にされた方は少なくないかも知れませんね。
アリミニさんはインド神話の登場人物(神)や村人たちの信仰生活を好んでモチーフに取り上げています。この「バリの生活」にもヒンドゥ教で最高神と言われるヴィシュヌを中心に村人たちの生活が生き生きと描かれています。ご覧の通り明るい色使いが特徴で、作品中央のヴィシュヌ神から湧き出た泉の水色と赤、ピンクで彩られた花が作品の中に配置された村人たちの様々な活動(田植え、祭礼、家畜の世話)へと見る人の視線を誘導し、軽快なリズム感を作り出しているのがわかります。
現在は出身のバトゥアン村を離れ、ウブド中心部から車で約一時間の郊外にあるご主人の郷里で創作活動に専念しています。ギャラリーやコレクターからの注文に応じつつ、マイペースで独自の世界を切り拓く毎日、芸術家として理想的な生き方ですよね。