画家紹介⑥「情熱の熱帯花鳥画家 ラバ」
こんにちは、坂本澄子です。
東京ではここ数日で一気に桜が開花し、あっと言う間に春爛漫。皆さんの街ではいかがでしょうか。画家シリーズも今回が最終回、私が今までで一番元気をもらえた画家、ラバさん(LABA, I Dewa Nyoman)をご紹介します。
ラバさんはプンゴセカン・スタイルと呼ばれる熱帯花鳥画を代表する画家。1970年代に確立した、バリ絵画の中では比較的新しい様式ですが、深い緑を背景に原色の花や鳥獣を描くその色使いは、赤道近くに位置するバリならではの光の具合をよく表しています。
ラバさんの作品に出てくる動物たち、実を言いますと、私自身は最初あまり好きではなかったのです。「こんな動物いるわけない」という斜に構えた気持ちが先に立っていました。ところが、ラバさんの描く動物たちの魅力は目にあると言われ、実際の作品をよく見てみるとなるほど。幾つもの色を使った細い線で描き込まれており、それが動物たちに生命力と独特の個性を与えているのです。それからです、ファンになってしまったのは。
今年、ラバさんに初めてお会いしました。御年64歳、バリの画家としては高齢です。数年前、目の病気から失明の危機に。しかし、多くの人たちの支援で無事に手術を受け、再び絵筆を取る事ができました。当時目に不自由しながら描いた作品の中には、画家として満足の行かないものもあったようです。お会いした時、ちょうど奥のアトリエでそんな作品を手直ししているところでした。「もう年だから、やっぱり目がね」と言いながらも、素晴らしい作品にぐいぐいと引き込まれてしまいます。そして、何より表現者として制作において決して妥協しない姿勢には頭が下がる思いでした。
4月の展示会では、ラバさんの作品は3点展示します。この「カエルの親方」、私なら自宅の仕事机の横に飾ります。仕事でテンパった時にこのユーモラスな表情を見たら、肩肘張ってる自分が滑稽になって肩の力がスッと抜けることでしょう。また、凧揚げの思い出を描いた「子供の情景」もありそうで意外にない作品です。7〜8月はとても風が強く、凧揚げは冬のバリの風物詩。特に男の子にとって懐かしい記憶の一コマです。こんな風に、子供の頃の記憶に励まされることってよくありますよね。不思議と急に凛とした気持ちになるのです。どちらの作品もちょっと心が疲れた時に元気をもらえそうですね。
ラバさんは、私たち日本人にとってもどこか懐かしい素材をモチーフに独特の世界観と内面性を持って描き上げる名人。何度も色を塗り重ねた彼ならではの深い緑の色使いは、あなたの心の原風景を呼び覚ましてくれるかも知れません。