あ〜、奥が深い – バリ舞踊とのコラボ
こんにちは、坂本澄子です。昨日バリからガルーさん(Ni Gusti Agung GALUH)の新作2点が届きました。はやる気持ちを抑え、子供の頃のサンタさんのプレゼントのように、一晩眠って今朝開けてみました。朝陽の中で見る風景は写真よりもずっと∞繊細で、田んぼの水面に映る空の色に吸い込まれそうになりながら、しばし我を忘れていました。新春1月に東京・日本橋のGallery KAIでガルー作品展を行います。昭和の空気漂う凛とした空間で静謐な作品をゆっくりとご鑑賞下さい。
好評開催中のバリ絵画展『五感を満たす食卓②バリの妖精たち』、残り6日間となりました。最終日の30日は『バリダンス、ゆく年来る年』が開催されます。バリ舞踊+バリ絵画のコラボをお楽しみ下さい。くわしくはこちらをどうぞ。
さて、今日はそのバリ舞踊のお話です。
ゴメンナサイ、正直に告白します。実は…バリ舞踊って観光客向けのアトラクションってちょっとだけ思ってました。でも、そのイメージが全く塗り替えられてしまうほどの素敵な舞台でした。
23日、渋谷のバリカフェ・モンキーフォレストで、バリ舞踊とバリ絵画のコラボレーションライブが行われました。公演されたのは「Naga Jepang」の皆さん。主宰の荒内琴江先生は’04-’06年にインドネシア国立芸術大学に留学しバリ舞踊を学び、日常生活の信仰の中に生きているバリ芸能の素晴らしさを日本に伝える、まさにバリ舞踊の伝道師です。
舞踊にせよ、絵画にせよ、降臨した神々をもてなし、そして自らも愉しむ芸能・芸術として、バリの人々に大切に育まれてきました。元は村の祭祀で舞う踊りでしたが、’20〜30年代にバリ島に滞在したドイツ人シュピース(バリ現代芸術の父と呼ばれ、絵画の世界でも大きな影響を与えた人です)によって、外国人にも親しみやすい舞台芸術としてリメイクされ、現在は宗教儀礼とは切り離されたプログラムとして演じられています。
皆さんもよくご存知の「ケチャ」と「バロン」は絵画の題材としてもよく取り上げられる大変ポピュラーなものですが、今日は美しい踊り手たちの演目を中心にご紹介します。舞踏宮廷物語を扱ったストーリー性のある壮大な演目、神話の登場人物を扱った演目、鳥や動物たちの舞で構成される花鳥もの、さらには戦いの若き勝利者を扱った戦士ものなど、実に様々な様式があるんですよ。「Naga Jepang」さんの公演プログラムを引用しながら、ハイライトをご紹介しますね。
『オレッグ・タムリリガン – Oleg Tamulilingan』
ミツバチの求愛を描いた踊り。優雅なメス蜂の踊りは女性舞踊の真骨頂とも言え、匂い立つような色香を感じさせる近藤ゆまさんが演じました。対するオス蜂はまるで宝塚の男役スターのような凛々しい荒内琴江さん。おふたりによる恋の駆け引きの様子を愉しませていただきました。美しい衣装、優美な動きに熱い視線が絡み合い、ぴったりと息の合った演技にため息。
『レゴン・クラトン・ラッサム – Legong kraton Lasem』
優美な宮廷物語のレゴン・クラトン。ラッサム王は森で出会ったランケサリ姫の美しさにひと目で心を奪われ、自分の城に連れて帰ります。王は執拗に結婚を迫りますが、既に婚約者のいる姫は頑なに拒み続け、怒った王は姫の国と戦争をすることを決めます。戦いに向かう途中、王の前に不吉の象徴とされる鳥が現れ、「おまえはこの戦いで血を吐いて死ぬだろう」と予言します。王は恐れを感じながらも不吉な鳥を追い払い、戦場へと向かうのでした…。
若き勝利者の踊り。女性が男装をして踊るこの踊りは、青年期の若者が感じている自信と不安、喜びや恐れなどを表情豊かに描いています。力強く、躍動感にあふれ、ダイナミックな中にも繊細さを感じる踊りでした。ちなみに私は最前列で鑑賞させていただいたのですが、射抜かれてしまいそうなほどの荒内さんの目ヂカラに圧倒されました。
わかりやすい解説付き、踊り手の息遣いが直接伝わってくる距離での鑑賞とあって、とても身近に愉しむことができました。目や手など常に身体のどこかを動かし表現力豊かなバリ舞踊。その技術的な難易度はもちろんのこと、芸術としての粋を極めるため、荒内先生を始め、短期留学を重ねては研鑽を積む踊り手さんも多いと伺いました。バリ舞踊、これからちょっと目が離せなくなりそうです。
そういえば、バリ島では公演を終えた踊り手さんが衣装メイクそのままでバイクで帰宅するところに出くわすことがあります。まさに日常生活における信仰に芸能が生きる島だと感じさせられます。
<関連サイト>
いよいよ30日まで。バリアートショールームのFacebook pageで毎日作品を紹介しています。
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