絵の風景に自分もいるみたいに
こんにちは、坂本澄子です。
前回、ガルー(Galuh)さんのまねをして朝日を見に行ったお話をしましたが、実は彼女に影響されたことはもうひとつあるのです。
ガルー(Galuh)さんが絵を描く時に意識していること、それは自分もその場にいるかのように五感と想像力を働かせることです。この作品もそうで、家路につく農夫に自身を重ねて描いたそう。その穏やかに満たされた気持ちが見る人にも伝わるからこそ、共感を呼ぶのだと思います。そう思っているうちに、すぐに売れてしまいました。お客様からのお便りはこちらを見て下さいね。
そこで、私も絵の中に自分がいると意識しながら描いてみました。
素敵な写真に出会うと、投稿者にお願いして描かせていただくことがあります。先日、とても雰囲気のある写真をFacebookで見つけました。それがこの作品です。(写真左)
真っ暗な山道にぽっとあかりの灯ったこの風景。闇があるからこそ、あかりの優しさ、温かさが一層際立っているように感じます。空もこれに呼応するかのように、雲の割れ目から月の光が…。「これ、描きたい!」そう思う一方で、写真だからこそ素敵なのであって、絵に描いたとたん輝きを失ってしまうのではないかという不安が。そう思いながらも諦め切れず、闇の部分に目を凝らして見ると。そこは真っ暗ではなくて、うっすらと空間が広がっているのが見えました。
そこで、その風景の中に今自分がいると想像し、目の前に見える(であろう)風景を描いたのがこちらです(写真右)。嬉しかったのは、ご本人(J.K.さん)に送ったところ、とても喜んでもらえたこと。ここは大学の帰りに毎日通る道なのだそうです。近くには森林公園があり、きっとお気に入りの場所なのだと思います。私が描いた風景はJ.K.さんが見ているのとは違うかも知れないけれど、そこから感じたものを私なりに表現するとこうなったということを理解してもらえたことに感激しました^_^
J.K.さんとの出会いも一枚の写真がきっかけ。それがこの作品(写真左)でした。1枚の写真の中に2つの時空間が存在するとても不思議な感じのする作品です。これを見た時、シュピースの『風景の子供たち』を思い出したんです。シュピースはバリ現代芸術の父と呼ばれ、バリ絵画に大きな影響を与えたドイツ人ですが、逆にバリ伝統絵画からも影響を受けたと思えるふしがあるのですよ。
バリ絵画はもともとインド神話の物語の場面を題材としていましたが、絵巻物なので1つの絵の中に複数の場面(時空間)が描かれています(写真右)。線で区切られたところがひとつの場面。シュピースのバリの風景を描いた作品にも、森で区切られた複数の時空間が共存しているのですよ。もしかするとここからヒントを得たのかも知れませんね。そして、ガルーさんもシュピースの幻想的な作品に惹かれて、現在の作風になったと言います。感動が感動を呼び、時代や空間を超えて繋がっていく、とっても素敵ですね。
先月の作品展の余韻に浸りながら、ガルーさんの作品の特徴をお話してきました。次回はバリの明るい色たちをご紹介します。今朝は東京も雪が降りました。寒いこの季節だからこそ、ちょっと明るい気分になりたいですよね。
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