ほっとする風景がここにも 〜 横須賀美術館 谷内六郎館
こんにちは、坂本澄子です。
この春最後の桜を求めて三浦半島へ行って来ました。途中、「海辺のミュージアム」として以前から関心を持っていた横須賀美術館に立ち寄ったのですが、そこに併設されている谷内六郎館で懐かしい作品に出会いました。
谷内六郎。ある年齢以上の方はご記憶の片隅にあるのではないでしょうか。週刊新潮の表紙を25年にわたり飾っていた、絵本のような優しい光景を描く画家です。
1956年の『週刊新潮』の創刊と同時に掲載が始まり、1981年に心不全で亡くなるまで休むことなく描き続けられた表紙絵はなんと1336点。生前画家が「毎日だって僕の絵を見てもらいたいんだ」と熱っぽく語っていた通りの画家人生です。
私が訪れた時は、「いつも鉄道をみてた」をテーマに汽車(電車よりも汽車という呼び名が似合います)のある風景51点が展示されていました。女の子と身体が一回り小さい男の子(多分姉弟なんでしょうね)、ネコなどが登場し、そのやさしい関係性までが情緒溢れる筆致で表現されています。そして、それぞれに400字ほどの「表紙の言葉」が添えられているのですが、これがまた絵に深みを持たせ、記憶の奥底にあった淡い思い出がひとつまたひとつと引き出されていくようで、実に濃厚な時間が過ごせます。
この展示が面白いのは、「週刊新潮」の実際の表紙が4点ほど展示されており、原画との対比を楽しめること。画家は制作にあたり水彩と併せて砂や鑞などの素材も取り入れているのですが、当時の写真・印刷は原画とは異なった風合いを出しており、これがまた、退色したインクの味わいと共になんとも言えないレトロな感じを創り出しているんです。まさに時の経過が生み出すアートですね。
谷内六郎館では年間4回、約50点ずつ作品を入れ替えながら展示をしており、次は4月12日から同じく<週刊新潮表紙絵>展で、今度は家族をテーマにした展示『家族の時間』が始まるそうです。
谷内六郎さんが描き続けた家族愛、懐かしい風景、素朴な人々、夢見るような空想世界は「バリアートショールーム」でご紹介しているウブドの画家たちが表現しているものとどこか似ている気がします。失われつつある…、でも、これからもずっと大切にしていたいものです。
ところで、横須賀美術館は海に向かって建つモダンな白い建物。思わず入ってしまいたくなるような佇まいです。地元作家の作品を中心に昭和の匂いを感じる作品を所蔵・展示しています。屋上展望室に上がると向かいに房総半島が見えました。東京湾に荷物を運ぶ大型船舶がゆっくりと行き交い、穏やかな春を感じる一日でした。
ここでオマケのクイズです。
谷内六郎館は白い箱を2つ並べて真ん中をガラスの通路でつなげたような構造をしています。左の写真はその通路から海を撮ったもの。ぱっと見て答えてください。この船は東京湾に入ってくるところでしょうか。それとも出ていくところでしょうか? 答えは土曜日のブログで^o^
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