2本の染め糸が織りなす奇跡の模様グリンシン
こんにちは、坂本澄子です。
「バリアートショールーム」一周年記念展示会の2日目(3月30日)のこと。東京の天気は雨と強風で大荒れ。「これじゃ、お客様に来ていただけないなぁ」とため息をついていたら、ガラスの向こうから傘を持って歩いてくる人影が。よく見ると、バリ舞踊をされているNさん。きれいでやさしくて、昨秋公演を見せていただいて以来のファンです。
そのNさん、アンタラさんの個展の作品集をご覧になると興奮気味に「これ、すごいですよ!」。何だろうと覗き込んでみると、舞踊衣装に身を包んだ少女たちが描かれていました。
「これはトゥンガナン村に伝わるグリンシンというとても珍しい織物なんですよ」とNさん。
通常、イカット(絣(かすり)は緯糸か経糸のどちらかを染めて織るのが一般的ですが、このグルンシンは経糸、緯糸の両方をに染めて織るため、ダブル・イカットとも呼ばれています。縦横の糸の柄が合うように、点と点を合わせていくとても緻密な作業を繰り返し、完成して初めて模様になるというもの。高度な技術を要するため、この技法が見られるのは世界でもバリ東部にあるこのトゥンガナン村、インドのパトラ、そして日本の結城紬、備前絣、芭蕉布、大島紬だけなのです。
下の写真の左がイカット(絣織り)、右がダブル・イカット(グリンシン)です。
赤・黒・白の3色を用いますが、これはヒンドゥ教の3大神であるブラフマー、ウィシュヌ、シヴァを表す色で、グリンシンという言葉の意味はグリン(=病気)、シン(=なし)、つまり無病息災への願いが込められているというわけです。この貴重な織物、トゥガナン村では奉納舞踊などの祭事の盛装として大切に用いられているそうです。
「バリで時々見かける踊りの絵は、衣装の描写が適当だったりするのですが、アンタラさんの絵はとても丁寧に忠実に描いていらっしゃいますね」とNさん。
そうなんです^o^ アンタラさんは美術大学(the Indonesian Fine Arts Institute)で西洋絵画を学んだ画家ですが、絵の題材はバリの伝統的なものを取り上げています。在学時に最優秀デッサン及び絵画学生として表彰された程の写実描写力を持ち、卒業後わずか3年で「バリ・アートフェスティバル」の招待画家になるなど早くから頭角を現しました。人物はもとより衣装の生地にもこだわり(写真)、模様の美しさや丁寧に織り込まれた質感が伝わってきます。
ところで、現在バリに住む人々の多くは14世紀にお隣のジャワ島から渡来した人たちの子孫、トゥンガナン村の村人たちがいわゆるバリ島の先住民と言われています。今でも純血を保つために村人以外との結婚が許されていない特別な村だとか。またまた、ミステリアスなバリの一面を見せてもらいました。
アンタラさんのどの作品も衣装が素敵ですよ。過去の作品(折りたたんである部分)も見て下さいね。
*****
さて、ここで前回のクイズの答えです。正解は「東京湾から出て行くところ」です。この船、タンカーなのですが、東京湾に入ってくるときは船内のタンクに石油をたっぷりと載せているので、その重みで船体の中程まで海に沈みます。あの写真はぷっかりと浮いてる感じでした。これはつまり空になった状態ということなのです。ちなみに水面に浮かんだ線を喫水線と呼ぶそうです^o^
<関連サイト>
ぶらりっ バリ雑貨の旅 ・・・ 私の大好きなピュア☆ラ☆バリのナナさんのブログから写真と文章を参考にさせていただきました。いつもながらナナさん、取材力がすごいです!