想像力up講座:その視線の先にあるものは?
こんにちは、坂本澄子です。秋も深まってきました。空気が澄んで、昼間の景色も夜の街灯りもとてもきれいですね〜。
前回から大人の絵の愉しみ方をご紹介していますが、風景画を愉しむコツは「その風景の中に自分も入ってみること」だと私は思います。
そこで、今日はアンタラさんの最新作『豊穣の女神』の風景に入り込んでみたいと思います。
さっそくむっとした熱さが感じられましたか?では、そこには何が見えますか?
やはり、真っ先に目の前の美人に目が行きますよね〜。これはバリ島の神様なんです。『神々の島』バリ島にはたくさんの神様がおられますが、ここに描かれているのは、デウィスリ(Dewi Sri)という「豊穣の女神」なんです。
その他には何が見えますか? 人がたくさんいますね。
ちょっと拡大してみます。 この小さな塔みたいなものはDewi Sriを祀った祠(ほこら)で田圃ごとに建てられています。右側でひざまずいている女性は豊作を感謝しているようですね。左側の男性は? 丸く束ねられたものがいくつも見えますね。これは刈り取った稲を束ねたものですが、丸い形になるのは、穂先だけを刈っているからなんです。
あたりを見回してみると、たくさんの人がいます。何だか楽しそうに働いています。誰々のところはこの前子供が生まれて…、なんて明るい声が聴こえてきそうです。バリ島にはバンジャールと呼ばれる村人たちの自治組織があり、隣組ごとに共同で、農作業、冠婚葬祭、宗教行事など、生活全般に渡る様々なことにあたっています。実りは、家族や隣人たちとの関係を豊かに潤し、それは神様から来るものだと、アンタラさんが教えてくれました。
あなたにはどんな音が聴こえますか。匂いはどうでしょう。
少し先には川が流れていますね。バリ島では雨は北部の山岳地帯に多く降り、その雨水が南部の平野部へと流れますが、1000年以上も続くスバックと呼ばれる仕組み(水利組合)があり、田圃に平等に水が行き渡るようになっています。このスバックのお陰で、バリ島には水を巡る争いがほとんど起こらなかったと言います。
彼方の上空には鳥が群れをなして飛び、どこまでも続く地平線を見ていると心が次第に開いていきませんか。では、ゆっくり視線を手前に戻してみて下さい。稲穂が重そうに実り頭を垂れています。ゆっくりと女神に視線を戻してみると、慈悲に溢れたお顔。でも、女神は一体何を見ておられるのでしょう。この視線の先には何があるのでしょうね。
自由に想像力を働かせて考えてみて下さい。
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