瀬戸内海の小島でアート三昧の旅③ 古い建物をアートに
こんにちは、坂本澄子です。
暑いですね〜。表を歩いていると溶けそうで、日陰を選んでジグザグ歩き(笑)
今日は「瀬戸内海の小島でアート三昧の旅」の最終回をお届けします。
これ、何だと思いますか? 島の多くの人が住む本村地区。そこで見かけたものです。
表札? 私も最初はそう思いました。でもね、なんだか名字らしくない。しばらく歩くとまたありました。デザインは同じですが、「わぁわ」「みせ」「よろず」…、刻まれた文字がそれぞれに異なっています。見つけるたびに写真を撮っていたら、結構集まりました。
ちょうどお昼時、立派な佇まいの古いお宅の一部がカフェに改造されていました。立派な門の横に「おおみやけ」と刻まれているのを見て、お昼はそこでいただくことにしました。蔵のような建物を改修た洒落た雰囲気のカフェ。ランチメニュ2種類はアジアンごはん。私はガパオをいただきました。
お勘定の時に、その表札みたいなものの正体について訊いてみました。
「これは屋号プロジェクトと言いまして…」
お店の方が教えてくださったところによると、島内には同じ名字が多く、昔から屋号で呼び合う習慣があるのだそう。「おおみやけ」は三宅姓です。
しばらく歩くと、あるお宅の壁にヒモで描いたこんな素敵なアートを見つけました。玄関の外に暖簾をかけたお宅もちらほら。道往く人を楽しませるちょっとした遊び心があちらにも、こちらにも。
「屋号プロジェクト」しかり、今では島民あげてアートの島へと変貌を遂げた「直島」ですが、建築家の安藤忠雄さんが初めて訪れた時、ほとんど禿げ山の状態。せっせと苗木を植え、緑を育み、プロジェクトが進行し、やがて島の南側に美術館ができました。それでも、島の人たちにとっては「島の南(住民の少ない地域)に美術館ができた」程度の印象しかなかったそうです。それが変わるきっかけとなったのが「家プロジェクト」。
過疎で空き家になった古い家を譲り受け改修して、空間そのものをアートに生まれ変わらせようという取り組みです。その第一号となった「角屋」は廃屋同然の建物がアーティストの宮島達男さんと島民125人の参加によって、新たな命を吹き込まれました。
土間部分に作られた「シー・オブ・タイム`98 」(写真)。水の中に125個のLEDカウンターが埋め込まれ、それぞれが違う速度で1から9までの数字を刻みます。とてもゆっくりなものから、目にもとまらぬ早さで動くものまで実にさまざま。このカウンターの設定は、下は5歳から上は95歳までの参加者に委ねられたものなんです。
この「家プロジェクト」によって一番元気になられたのがお年寄り。古いものが見直され、新たな価値を持って輝き出す姿を見て、自信を取り戻されたのでしょうね。それが古いものを見直そうという動きにつながっています。ゴミ一つない通りにも、そんな静かな自信と誇りが感じられます。
予告編+3回に渡っておおくりした「直島」旅紀行。いかがでしたか。バリ絵画ではありませんが、アートが人の心に働きかける力を信じ、 自然+建築空間+アートの共演で取り組んだ一大プロジェクト。その思いに共感を深めました。「アートは人の気持ちに働きかけ、こんなにも元気を与えてくれている」、町の空気からもそのことがじんじんと伝わってきた2日間でした。
<お知らせ>
第2回「バリアートサロン」。いよいよ今週土曜日7月18日開催です。
今回はバリ絵画にルネッサンスをもたらしたドイツ人画家シュピースと、彼の意志と作風を今日に引き継ぐ作家たちの熱帯幻想風景画を取り上げます。古いものを見直し、新たな価値を生み出したという点では「直島」と同じ熱い思いを感じます。詳しくはこちらをどうぞ。