夏が来ると思い出す情景
こんにちは、坂本澄子です。
暑中お見舞い申し上げます。梅雨が開け、いよいよ夏本番を迎えました。南半球にあるバリ島はいまは冬。ウブドでは朝晩気温が20℃前後まで下がると、友人からメールがありました。先週のガルンガンの後も小さなお祭りが続き、バリの人たちはみな忙しくしているそうです。
さて、夏が来ると思い出す情景ってありませんか。
私にもあります。確か、小学校3年生だったと思います、遠い親戚のおばあちゃんのうちに行ったときのこと。そこは広島県北部にある山あいの町で、青い田圃がどこまでも続き、隣の家はと言えば、何百mも歩いていくようなところでした。土間には牛が1頭、裏庭にはニワトリ。毎朝卵を取りに行くのが私の仕事になりました。湧き水で顔を洗うと、冷たい水にシャキッと目が覚めたものです。
ある夜、蛍を見に連れていってもらいました。街灯もまばらで、たよりは足元を照らす懐中電灯と月明かりだけ。闇の中を進むと、やがて、あちらに一匹、こちらにも一匹とほのかな光が。まるで呼吸をしているように、時々ふっと明るさを増します。
「懐中電灯を消して」
あたりはまた闇に包まれました。虫の鳴く声に混じって田圃を流れる水の音。稲の青い匂いと足元にやわらかい草を感じながら、蛍の光を追っていました。
この作品を初めて見た時、そんな子供の頃の情景が鮮やかに甦ってきました。
『満月の夜に』は、画家のウィラナタが子供の頃の記憶を紡ぎ合わせて描いた作品です。4000km離れた南洋の島で、同じように心の風景を持つ画家と出会えたことに感激しました。60x80cmの大きさは、窓から外の風景を見ているような臨場感があります。ウブドの田圃で見る蛍は見過ごしてしまいそうなほどの小さな光ですが、バリにいて日本を思い出す瞬間でした。
みなさまも、この夏素敵な思い出をたくさん作ってくださいね。
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