スコールにうたれて
こんにちは、坂本澄子です。
このところ大気が不安定で、あちこちで局地的な豪雨がすごいですね。気象庁のナウキャストを見ると、赤く表示された強く降っている範囲が、ごく狭い地域にピンポイントで点在しているのがよくわかります。日本列島は亜熱帯化していますね。
雨降りの朝ってちょっと憂鬱。それは同じなのか、雨降りを描いた風景画は少なく、インターネットで検索してみても、出てくるのは子供の絵日記ばかり。そんな中、雨降りも悪くないと思える風景画に出会いました。少し前に六本木のサントリー美術館で開催されていた歌川広重展でのことです。広重といえば、昔、永谷園のお茶漬けに入ってた「東海道五十三次」を一生懸命集めましたっけ。
入ってすぐのところに展示され、大勢の人が足を止めて見入っていたのが「大橋あたけの夕立」です。滲んだようにたれ込める暗雲から降り注ぐ雨は、太さと角度を微妙に変えた2種類の線で描かれています。面刷りでシルエットだけを描いた遠景とあいまって、奥行きと共に、ザーッという音が聞こえてきそうなほどの臨場感を感じさせました。まさに今で言うゲリラ豪雨ですね。
版画ゆえの産物かも知れませんが、雨を線で表現するのは日本独特なものだそうです。浮世絵は19世紀に、輸出用の陶芸品が割れないための包み紙としてたまたま海を渡り、ヨーロッパの人々の目を引きました。特に印象派の画家に強い影響を与え、ゴッホはこの作品を模写しています。
バリ島のウィラナタは熱帯の激しい雨をモチーフに描きました。常に新しいことに挑戦するタイプの画家ですから、実に様々な題材を取り上げています。朝、昼、夕方、夜といった時間帯の違いやお天気。ひとりの静かな時間もあれば、大勢で賑やかに過ごす作品も。その幅の広さがファンを惹きつけ、1枚、また1枚とコレクションを増やしていく愉しみに繋がっているのだと思います。
今日はそんな雨の風景から3点をご紹介します。雨は白く煙った空気、風にしなる椰子の木、波立つ水田の雨紋などで表現されています。
広重とはまた違った表現ですが、まるでその場にいるようなリアルさはさすが。部分的に明るい空は、激しく降ってカラリと晴れる熱帯特有のスコールを思わせます。
傘の代わりにバナナの葉で雨をしのいでいるのがバリ島らしい。
何年か前にウィラナタのアトリエを訪ねたとき、急変する空の雨雲にこだわり、様々な表現上の試みをしていました。人気作家でありながら、とことん極める姿勢には心うたれるものがありました。
ウィラナタの作品は作品ページをご覧ください。ご希望のテーマで注文制作も承ります。詳しくはこちらをどうぞ。