アトリエ訪問 〜 田園風景を眺める場所から
こんにちは、坂本澄子です。
その人の内面にまで迫る描写力で定評のある写実画家のWayan Bawa ANTARA(アンタラ)。いつか私を描いてほしいという願いがついに実現しました。昨年完成したウブド郊外の新しいアトリエも気になっており、現地パートナーの木村さんにさっそく取材に行ってもらいました。
そのアトリエは、大きく開かれた2階の窓から田園風景が見渡せる場所にありました。バルコニーに出ると、田んぼはちょうど刈り取りを終えたところで、普段は湿気の多いバリですが、その日は心地よい風が感じられるほど。
アンタラさんにはこれまで何度かお会いしていますが、気に入った写真をお渡し、それを元に描いてもらうことにしました。
広いアトリエのほぼ中央には、原木から切り出した一枚板の大きなテーブルが置かれています。アンタラさん、ここにスケッチブックを立てかけるようにして座ると、チャコールペンシルを持つ手が猛スピードで動き始めました。その集中力たるやすごいものです。見る見るうちに白い画用紙に輪郭が現れ、目を描くとそこにいのちが宿りました。
待っている間、アトリエの中を見せてもらっていると、きれいな装丁の画集が目にとまりました。昨年ジャカルタの老舗ギャラリー”GALERI HADIPRANA”が開催した、国内で最も輝いているアーティストたちの作品展『Bridging two worlds』向けに作られたものです。ぱらぱらとめくってみると、このアトリエの紹介とともにアンタラさんの作品が大きく取り上げられていました。”Golden Harvest”をテーマに描いたという黄金色に輝く抜けるような田園風景は、まさしくこのアトリエのもたらした新たなインスピレーションでしょう。
近年の経済の発展は目覚ましいものがあり、首都ジャカルタなど大都市の富裕層、中間層を中心に、アンタラさんのような人気作家の作品が飛ぶように売れているそうです。
そうこうしているうちに絵が完成しました。
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後日額装してこんなに立派なポートレートに。ちょっぴりくすぐったい気分です。
「いくつになっても精一杯生きていたいし、そんな自分を信頼する画家の手によって残しておきたい」、アンタラさんには私の気持ちをしっかりと受けとめてもらえました。宝物としてずっと大事にします。
一方、木村さんから送ってもらったこれらの写真を見ながら、日本は経済だけでなくアートに於いてもアジアの中心にいると言えるだろうか…と考えさせられました。
絵画だけでなく、音楽や文芸、日本の伝統芸能など芸術全般に対して政府や民間企業が拠出しているお金は、日本とインドネシアの経済規模を考えたとき桁違いに小さいのではないでしょうか。芸術家が日本で食べていくのは難しいし、優秀な人は海外へ活躍の場を求めて出て行ってしまう。鑑賞する側も美術館には行っても、日常の中で身近にアートを愉しむという発想になかなかなれないのではないかと思いました。
日本人は毎日を心豊かに過ごすことをもっと考えてもいいのではないでしょうか。私も微力ながら、アートのある毎日を愉しむ提案を続けていきたいと思っています。
アンタラさんの肖像画制作に関するお問合せはcontact@balikaiga.comまで。
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