絵を何倍も引き立ててくれる名脇役
こんにちは、坂本澄子です。
バリ島は雨季のまっさかり。連日のように雨が降り、湿度は90%を超えます。「洗濯物が乾かないわ〜」と友人からもぼやきメールが。
そんな中、ウィラナタの新作を土曜日に発送したとの連絡がありました。冬の移送に神経を使うのは、この劇的な気候の変化に耐えながら、絵と共にはるばる日本にやってくる額縁のこと。なにしろ、気温差20℃、湿度の差に至っては50%ですから(^o^;
これまでも何度か泣かされました。反ったり、隙間があいたり、ツヤが失われたりと、何かとトラブルが多いのは実は額縁なんです。もちろんある程度の修復はできますが、作品をベストな状態で見ていただきたい今、それは頭の痛い課題のひとつ。
ウィラナタの新作は60cmx80cmとサイズが大きいので、悩みました。いっそのこと額縁は日本で作ろうかとも。
バリ島の寺院には必ずある、広く深く大地に根を張った大木。バリの人たちは大きな樹には精霊が宿ると言います。生命力溢れる逞しい幹、やさしく包み込んでくれるような深い緑を見るとき、ゆかりの地で育った、無垢の木の額縁で包んであげたい…、やはりそこは譲れないんですよ。
現地パートナーの木村さんに相談したところ、「トラブルの原因は乾燥が不十分なことなんです」と思案顔。そして、数日後、「いいものが見つかりました」
それは10年前にジャワ島東部の木工所で作られたチーク材の額縁でした。注文制作で作られたものですが、何らかの理由で納品されないまま、ゆっくりと時間をかけて乾燥されました。いつも額縁をお願いしているウブドの額縁屋さんが、4年前にたまたまその存在を知り、一目見て気に入りすぐに購入。その額縁にふさわしい絵が現れるのをずっと待っていたという次第。
写真を送ってもらうと、かっちりとした上品な作りに、磨き込まれたなめらかな木肌を見せていました。
「10年経ってこの状態のよさですから、日本に持って行ってもまず大丈夫」と木村さん。
これがその額縁です。私も一目で気に入りました。この素敵なエピソードにも。
10年後にようやく出会えたベストパートナー。この10年間は強さと美しさを手に入れるために必要だった時間です。人と人とに出会いがあるように、作品と額縁にも出会いがありました。そして、この作品がいつかどなたかの元へ嫁ぐのも、また出会いだと思います。
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