絵の愉しみ方 〜 知的好奇心に響く絵
こんにちは、坂本澄子です。
桜の季節が待ち遠しい季節になりました。昨日、銀座を歩いていたら、あるギャラリーのショーウィンドウに見事な桜、思わず覗き込んでしまいました。満開のひとえだの桜がぽってりとした陶器に飾られているところまではよくある構図なのですが、背景に特徴があり、藍に染められた小紋のような柄が四角く組み合わされていたり、江戸時代の水墨画を思わせるような風景が描かれていたりと、いにしえから今日に脈々と受け継がれる日本人の美意識を思わせる魅力的な絵でした。
こんなふうに、絵を見て心が動かされるのは、自分の中にある何かが反応するとき。昔見た光景や経験の断片が呼び起こされ、心(あるいは脳?)の中で心地よい波紋が広がっていくような共感と言いますか、これが「いいなあ」と思える瞬間ですよね。
一方、知らないものに対する知的好奇心という絵の愉しみ方もあると思います。展示会に来られるお客様は、バリ島の生活を描いた風俗画にそのような面白さを感じられる方も多いんです。
それまで神話を題材にすることの多かったバリ絵画が、オランダ統治下で西洋絵画と出会ってから、民衆の生活にも目が向けられるようになりました。(ウブド・スタイル)
左の作品はそんなバリの暮しが描かれた佳作。お寺の門前で祭礼の準備をする村の人々の様子が、バリ島の伝統画家ダギン(DAGING)の手によって、生き生きとしたタッチで描かれています。
『村の暮し』 DAGING アクリル画 60cmx45cm 140,000円(税込)
この流れを汲む画家たちの中でひときわ精彩を放っているのが、ジュルジュ(DJULJUL)です。ジャワ島バンドン市にある芸術科(Bandung Institute for Technology)で西洋の近代技法を学んだ後、バリ島に戻り、伝統絵画の魅力を再発見。細密画家として伝統技法と西洋技法を融合した独自の作風で身近な題材を取り上げてきました。
右の写真は、そんな氏の魅力が余す所なく発揮された作品。まだあどけなさの残る若い踊り手と、細部に至るまで精緻に描かれた背景とが、やわらかな色調で見事に調和しています。
『レゴン・ダンサー』DJULJUL アクリル画 65cmx50cm 263,000円(税込)
私はこの作品を初めて見たとき、ほとんど遠近感のない構図で平面的に描かれているにも関わらず、この踊り手の強い存在感に心揺さぶられるような感覚を覚えました。バリ伝統絵画の特徴でもある風景の一部を構成する人ではなく、明らかに、意思を持ったひとりの人間として描かれているこの作品に、西洋絵画を専門に学んだ作家ならではの、バリの伝統と西洋の融合体を見たように感じました。
今日ご紹介したウブド・スタイル以外にも、バリ絵画には様々なスタイルがあり、色々な絵の愉しみ方を教えてくれます。5月の展示会では、バリ絵画の主要スタイルの作品50点を一堂にご覧いただきます。
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『村の暮し』 DAGING 作品詳細/ご注文はこちらから
『レゴン・ダンサー』DJULJUL 作品詳細/ご注文はこちらから