林檎が語りかける”アートのある暮し”
こんにちは、坂本澄子です。台風が去っていったら急に蒸し暑くなりました。いよいよ夏本番ですね。
昨日の夜、東京メトロ有楽町線で帰宅中のこと。「今夜はとても月がきれいです。美しい月を見上げながら気をつけてお帰りください」と車内アナウンスが。なんと風流な車掌さん!地上に出た後、思わず夜空を見上げると、雨上がりの雲が途切れたところからほぼまんまるなお月様がニコニコ顔を出していました。
昨日は銀座のArt Space RONDOに、7月29日のウィラナタ新作鑑賞会『光の風景』の打合せに行ってきました。その前日に届いたウィラナタの風景画は想像を超える出来映えで、ギャラリーのどこに展示しようか、照明はどうしようか、どんなお話をしようか…と、オーナーの丸山則夫さん、小林清美さんと楽しい会話で盛り上がりました。
実は、昨日RONDOにお邪魔したのはもうひとつ目的がありまして、金曜日からRONDOで開催中のAPPaLE展「りんごの里帰り」に、半年間手塩にかけて磨いた木の林檎を持っていったのです。通常、彫刻家が作品を最後まで仕上げますが、この企画、最後の磨きの工程を購入してくれた人に委ねるというものなのです。作家は八ヶ岳の麓に住む彫刻家の藤岡孝一さん。林檎は左の写真のようにまだゴツゴツと荒削りな状態で、8段階のサンドペーパーとオイルのキット付きで購入者に引き継がれます。「りんごの里帰り」というのは、林檎たちがRONDOに戻ってきて一堂に会するという訳です。
帰ってきた林檎たちを見ると、木の種類や磨き方で成長した姿が随分違います。里親はみんな「うちの子が一番可愛い」と親バカな状態(^o^;なんですが、仕上げにクルミの油を使った人もいれば、庭に咲いた椿のつぼみを砕いて抽出したという手製の椿油で磨いた人もいて、それぞれにこだわりが。オイルは最初のうちぐんぐん入っていきますが、どこかで飽和点に達するみたいで、全体がしっとりと潤った感じになります。
ちなみに、私は昨年12月に楢の木でできたちょい色白の林檎を購入し、オリーブオイルで磨きました。縦横に走った線が楢の持ち味だそうで、繊細な模様が何とも言えない味わいを出しています。この林檎、他と比べると一回り小さめ(右写真の中央)ですが、掌で包んだ時の感じが、手の小さい私にはちょうどいいんです。最初はゴツゴツ、ザラザラしていた表面が磨きが進むにしたがって、滑らかに、そして最後にはツルツルになる。そんな触感の変遷をこの半年間楽しんできました。機会あるごとにそっとなでてやると、これからもさらに表情が変わっていくのだそう。これもアートと暮らすことならではの楽しみですね。
このユニークな企画は、RONDOに集まってくる作家やお客さんたちとの何気ない会話から生まれました。最後まで自分でやらなきゃ気が済まない作家も少なくない中、藤岡さんはとても柔軟に受け止めて、「じゃあ、やりましょうか」と言ってくださったそう。RONDOにはそんな心と心、感性と知性が触れ合うような不思議な雰囲気があります。月に3〜4回、こんな独自性のある企画展示を行っており、今回ご一緒できることをとても楽しみにしています。
このステキな空間を『光の風景』はどんなふうに彩ってくれるでしょうか。ウィラナタ新作鑑賞会『光の風景』、どうぞお気軽にお越しください。7月29日(火)16:00〜20:00@Art Space RONDO 銀座、詳細はこちらです!
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