バリアートショールーム オーナーブログ
2015.8.29

私事で恐縮ですが

こんにちは、坂本澄子です。

今日は私事で恐縮ですが、嬉しいことがありましたので、どうかおつきあいください。

私も以前から趣味で絵を描いていましたが、今回思い切って応募してみた二科展に初入選しました。つらかった時に私を支えてくれたある風景を描いたもの。今日はそんな私の絵にまつわる思いをお話させていただきたいと思います。

世界に繋がる窓2

30歳を過ぎた頃、駅前で見かけた絵画教室のポスターがきっかけで、小さな娘を連れて絵を習い始めました。休日くらいは何か一緒にできればと思ったのです。いろんな意味で大変な時期でしたが、不思議と絵を描いていると、他のことは忘れられるんです。そんな自分に、いつか絵に関する仕事ができたらいいなあと漠然とした憧れを思っていました。

外資系企業に勤めていたこともあり、外国人の家庭に招かれることが多かったのですが、どのお宅もお部屋を飾ることの上手なこと。住まいという空間を心地よいものにするためのエネルギーが全然違う、ひいては、生活の質も違うと感じていました。家族の写真やちょっとした記念の品がオブジェとして飾られ、ポスターや複製画ではない本物の絵がさりげなく暮らしの中に取り込まれているのがとても印象的でした。

私が贈った絵はダラスの自宅に飾られている

私が贈った絵は今もダラスの自宅に飾られている(手前)

中でも、英語の先生だったサンドラとは、一昨年アメリカに帰国するまで10年に渡り親しくさせてもらいました。母親のような存在だった彼女が整えた部屋はとても居心地がよく、夫婦揃ってアート好きの自宅には大小様々な絵が飾られていました。ご贔屓の作家だったり、友人が描いた絵だったり、私がクリスマスにプレゼントした絵ですらも、ベッドルームに飾ってくれていました。審美眼といいますか、自分なりの美のモノサシをちゃんと持っているのです。また、それぞれの絵とご自身の個人的な経験がちゃんと紐付いている、それが毎日の生活を豊かにしているのだと感じました。

そんな絵のある暮らしに憧れていた頃、勤続記念に長期休暇が取れ、たまたまバリ島を訪れました。そこで様々なアートや作家と出会い、こんな魅力的な絵が、しかも、手の届く値段で買えることに正直驚きました。これなら、日本で「本物の絵のある暮らし」を提案できるかも知れない。漠然とした思いが、現実味を帯びてきたのはその時からです。物販というよりも、サンドラの家で感じたような、絵があることで作り出される精神的な作用や生活の質といった「物質的な価値以外の何か」を感じてもらえる仕事がしたいと思いました。

出会いと偶然に導かれ、長年過ごしたIT企業を卒業し、絵画の世界に飛び込んだのは3年前のこと。最初は何もかもが初めてのことで、バリ島で画家を訪ね絵を買ってくることも、日本で絵画展を開くことも、ウェブサイトを作り、ブログに文章を書くことも何もかもが試行錯誤の毎日、でも、とてもエキサイティングでした。

しかし、それも一巡すると、できないことの方がだんだん目につくようになってきました。日本で絵を売ることは想像していた以上に難しく、次第に手元資金も少なくなり、焦る気持ちだけが日々強くなるばかり。また、営業として外を飛び回っていた前職と違って、1日のほとんどの時間を一人で過ごすことの孤独さといったら。独立した経験をお持ちの方なら、誰でも一度は通られた道ではないでしょうか。

何かしなくてはいられない焦燥感からか、夜が明ける前によく目が覚めました。マンションの19階の窓の外はまだ薄暗く、眼下に広がる高速道路や建築中の街並み、次第に明けゆく空と海を見ながら、弱い自分と戦っていると、そんな早朝でも高速を走っている車や外を歩いている人が結構いるんです。あのトラックは、この前絵を運んでくれた運送会社の車かも知れない、犬を散歩させているあの人は来月ジョイントで展示会をする住宅メーカーの人かも…などと想像を巡らせると、私のこの小さな仕事も、多くの人々の協力で成り立ちお客様へと繋がっている、そして、それはいつかまた私のところへ戻ってくる。そんな目に見えない繋がりを感じて、とても勇気づけられました。感謝から祈るような気持ちでした。バリの人たちのように。

それからは、せっかくできた時間を大切にして、毎日絵を描き、バリ絵画はもちろん、絵に関する勉強をし、美術館やギャラリーに足しげく通うなど、自分が望んだ、絵の世界を「楽しむ」毎日を心がけました。その頃の自分を思いながら描いたのが、入選作品『世界に続く窓』です。これまでしてきたことが小さな実を結び、方向性として間違っていなかったと嬉しく思うとともに、またひとつ次の視界が開けたように感じました。

今回の入選を励みに、これからも「本物の絵のある暮らし」をご提案する活動を続けていきたいと思います。

<関連ページ>

第100回記念二科展公式ホームページ 9月2日〜14日@国立新美術館

 

私事で恐縮ですがへの3件のコメント

  1. 投稿者上原けさみ

    二科展ご入選、おめでとうございます。素敵な絵ですね。優しい色合いが好きです。
    ショールームの経営は大変だろうと創造していました。絵を飾ることが、生活を楽しくしてくれて、どんなに素晴らしいことだとしても、まだ多くの日本人には理解してもらえなさそうな気がします。
    私もアメリカに2年近く居たので、あちらのことはおっしゃっていることが良くわかります。
    一人で事業を立ち上げることの大変さや孤独感も若い頃、経験しました。
    3年前の決断はすごいと思うと同時に、もったいないと思いました。
    でも、好きなことに取り組む時間が増えておられること、良かったです。
    二科展、是非見に行きたいです。これからも頑張ってください。

  2. 投稿者日暮若菜

    坂本澄子さま

    こんにちは、ウブドのワカナです!
    いつも大変お世話になっております。

    この度は、二科展ご入選おめでとうございます☆
    坂本さんの優しい雰囲気が絵に良く表れているなと思っております。
    動物好きな私は、猫に反応してしまいました(笑)

    また、独立されてバリでの買い付けなど一筋縄でいく事が皆無ですから
    ご苦労されただろうと、容易に想像致します。
    いつもブログもサイトもステキで、見習いたい面のたくさんある坂本さんのサイト。
    これからも、キラキラと輝きながらご活躍してくださいませ♪
    本当におめでとうございました~!!

    ワカナ

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