触れる通りに、聞こえる通りに、匂う通りに…
こんにちは、坂本澄子です。
今日のタイトルは、写実絵画の巨匠、野田弘志さんが著書の中で、「写実絵画とは何か」を語られた言葉からお借りしました。
まるで写真を見ているような精緻な写実絵画に惹かれ、そのコレクションで有名な千葉県のホキ美術館をよく訪れています。360点のコレクションのほとんどを観たでしょうか。
先日の日曜日、企画展『写実って何だろう?』の最終日に行ってきました。ちょうどギャラリートークが始まったところで、いつもより多くの来場者に混じって解説員のお話を伺うと、写実絵画に対する見方が少し変わったことがありました。
島村信之さん。静謐な光と清らかな女性像を描く画家として定評があり、ホキ美術館にも多くの作品が所蔵されています。その清らかなタッチは本当に素敵で、女性の私が見てもうっとりするほど。
ところが、その島村さんが戦闘的な姿のロブスターを描かれたのです。今でこそ、氏の代表作のひとつとなっていますが、当時、それを見た人は「島村さんはこんな絵も描くのか」と驚き、画廊では売れ残りの絵になってしまったのだそう。その迫力に圧倒されつつも、はたと飾る場所を考えるとなかなか手が出せなかったのでしょうね。1年半画廊の壁を飾った後、ホキ美術館に最適の住処を見つけ、瞬く間に人気作品のひとつとなったという訳です。
この作品を描くにあたり、島村さんはなんとロブスターの剥製作りから始められたそうです。生きているロブスターを買ってきて、茹でてて(だから赤いのです)、その身を存分に味わった後、殻をバラバラにしてまるでロボット模型のように。その硬い殻の感触を指先に感じながら、子供の頃に観た戦闘アニメを思い出しながら、組み立てたのです。
それまで、写実絵画といえば、その技術的な巧みさにばかり目がいっていましたが、このエピソードをお聴きして、画家が五感を通じて得た情報を作品としてアウトプットする作業は、決して写真のように単眼的に写し取ったものではなく、画家の思考、感情、感覚などが立体的に作用して、紡ぎ出されるものであることを知りました。そう思って、島村さんの描かれた婦人像を改めて観てみると、光と戯れるような眼差しや肌の美しさが真に迫ってくるわけがわかるような気がしました。
都内からは少し距離がありますが、美術館のモダンな建物にも様々な見所があり、それだけでブログ一本かけちゃうくらいです。そして、併設レストランのイタリアンが美味しいのも嬉しい。駐車場は無料で利用できますので、ドライブがてら如何でしょう。おすすめです。
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作風は異なりますが、ウィラナタの『満月の夜に』を観たときにも、同じ印象を受けました。つまり、画家の五感が感じたことをこの絵から受け取ったのです。
水に映るまばゆいばかりの満月。
湿った空気。
足先に感じるやわらかい草の感触。
田んぼから流れ落ちる水の音。
澄んだ音色を奏でる虫の聲。
篝火の光で浮かび上がる、
田んぼの生き物たち。
それらが、まるでその場にいるかのように感じられるのです。
そんな感覚をぜひ味わっていただきたくて、11月29日、「第6回バリアートサロン」でこの作品を展示します。アクセス人気上位作品もご覧いただけますので、ぜひお越しください。詳しくはこちらをどうぞ! 2015歳末感謝セールも好評実施中!ほとんどの作品が10-20%offです。