ヤングアーティスト派の巨匠
こんにちは、坂本澄子です。
暖かくなってきましたね。若葉の緑も次第に濃くなり、ケンの散歩道で見かける名も知らぬ可憐な花々が、黄色、ピンク、紫と目を楽しませてくれています。気分も上々です^o^
絵にも、こんなふうに見る人の気持ちを高揚させてくれる作品がありますよね。バリ島ではオランダ人画家アリー・スミットに師事した若い画家たちが、まさにそうでした。1956年にウブドのペネスタナン村に腰を落ち着けたスミットは、自分を慕ってやってくる地元の若い画家たちに、色鮮やかな絵の具を与えて、自由に描かせました。彼の色使いに魅せられた画家たちは、バリの伝統絵画に特徴的な細密さに、極彩色を取り入れるようになったのです。かつてのヤングアーティストたちは、今では巨匠と呼ばれるように。今日はそんな画家の作品をご紹介します。
LONDO – 1948年バリ島ペネスタナン村生まれ。アリー・スミットの最も初期の弟子のひとりです。家鴨使いとして家計を助けていた少年時代、アリー・スミットと出会い、彼の主宰する”Young Artist Organization”に加わったことから、大きく人生が変わったのです。では、さっそくその作品をご覧ください。
『村の生活 〜 稲刈り風景』 LONDO アクリル画 40cmx60cm 106,000円
ヤングアーティスト派の作品は左右対称で並行的な構図が一般的ですが、LONDOの作品は少し高い位置から俯瞰したものが多く、のびやかな広がりを感じます。そして、細部に目を向けると、色使いに画家のセンスが。例えば、田圃で虫をついばんでいる家鴨たちには茶色の中にピンクをアクセントに使ったり、田圃の水に深い群青を混ぜたりと、ドキッとする配色が見られるんですよ。
LONDOの作品はバリ島のアルマ美術館に所蔵されており、展示室で見ることができます。私も実際に見てきましたが、氏の作品の特徴である効かせ色が使われており、明るい気持ちになりました。(注:効かせ色とはファッション雑誌でよく使われる言葉で、アクセントカラーとか、回りと調和しつつ、ちょっと洒落た色使いをいいます。読者の方からご質問をいただきましたので、注釈を追加します)
氏の作品はLALASATIなど絵画オークションでも、安定した価格で取引されています。
『村の生活 〜 稲刈りの風景』、ぜひ現物をご覧いただき、元気の素をチャージしてくださいね。5月18日(月)〜23日(土)の「春のバリ絵画展」@東京・京橋にて展示販売します。
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『村の生活 〜 稲刈り風景』LONDO ・・・作品詳細、ご注文はこちらから
ヤングアーティスト・スタイル ・・・’70年代に一世風靡したポップな作風
アリー・スミット・・・バリ絵画に最も影響を与えた画家
初めてのアートに花鳥画② 飾りやすい横長サイズ
こんにちは、坂本澄子です。
前回はバリ絵画の入門編として、日本人に最も親しみやすい花鳥画から、熱帯の森に棲む動物たちを描く巨匠LABA氏の作品をご紹介しました。今日はその第二弾として、「飾りやすい」1:2の横長作品をご紹介しま〜す。
これまで「バリアートショールーム」では、エベン氏の花鳥画を中心に横長サイズを扱ってきましたが、毎回すぐに売れてしまう人気ぶり。ソファの後ろに飾ってよし、チェストの上に飾ってよし..と、場所を選ばず、すぐに素敵な空間が作れるスグレモノです。
写真はエベン氏が描いた『キバタンとプルメリア』です。キバタンはオウムの一種で、冠羽が特徴。通常は右の鳥のように一本伸びているだけですが、左の鳥のように扇のように広げることができるのです。きっとエベン氏は左の雄鳥が雌鳥にモーレツアプローチ?しているところを表現したかったのでしょうね。
『キバタンとプルメリア』EBEN 40cmx80cm アクリル画 24,000円(バリ島からの配送料込み)
このキバタンは野鳥画家EBEN氏の好きなモチーフのひとつで、初めて彼のアトリエで絵を教わったときも、この鳥を題材にバリ絵画の手ほどきをうけました。羽毛の柔らかい感じを出すのがとても難しいのですが、EBEN氏の持つ筆が、薄めの黒ですっと影を引くだけで、胸元のフワフワ感が出てくるのを魔法のように感じたものです。その時の様子は2013年5月のブログに「バリ絵画の描き方講座」としてご紹介していますので、あわせてどうぞ^_^
残念なことに、そのEBEN氏、現在は専業画家をやめ、銀行に勤務されています。大学では法律を学び、40歳を超えて何か別の可能性を切り拓いてみたくなったのかも知れません。銀行マンとしての仕事という人生の新しい側面を得て、氏の作風にも新たな息吹がふきこまれるかも。そんな気持ちで見守っていきたいと思います。「キバタンとプルメリア」は画家として最盛期の頃に描かれた貴重な作品です。
そして、もう一点。同じく野鳥画家、特に文鳥を描かせたらこの人と定評のある、RAKA氏の『ランと文鳥』をご紹介します。氏の作品はご覧の通り、様式化された描き方とグラデーションの使い方に特徴があり、モダンなインテリアにも難なく馴染みます。シンプルなシルバーのボックスフレームに額装してお届けします。
『文鳥とラン』RAKA 40cmx80cm アクリル画 38,000円(バリ島からの配送料込み)
私自身もEBEN氏の特大の作品(100cmx200cm)を自宅に飾っています。初めてバリ絵画に出会うきっかけとなったのが氏の作品でした。そこから、様々なスタイルを持つバリ絵画の幅広さ、奥深さに引き込まれ、バリ絵画を日本に紹介する仕事を始めました。
手頃な価格で日本人の感性にも合うバリの花鳥画、あなたの初めてのアートにいかがでしょうか。実物は5月18日(月)〜23日(土)@東京・京橋で開催予定の春のバリ絵画展2015でご覧になれますよ〜! 50点を一堂に展示しますので、花鳥画以外にも様々なバリ絵画のスタイルを楽しんでくださいね。
初めてのアートは花鳥画をいかがですか?
こんにちは、坂本澄子です。都内の桜の名所として有名な目黒川、「とうとう咲いているのを発見しました〜」と、お客様からメールをいただきました。来週あたりから一斉に咲き始めそうですよ。
さて、前回のブログでご紹介した『カエルの親方』に「帰ると蛙をかけたコンセプトがおもしろい」、「よかった〜、私も嬉しいです」など、様々な反響をいただきました。バリの花鳥画(プンゴセカン・スタイル)は私たち日本人にとっても、親しみやすいスタイルですね。
『カエルの親方』と並び、ずっと見守ってきたのが、写真の『少年たちの情景』です。こちらも、初めてLABA氏のアトリエを訪ねたときに、惚れ込んだ作品。
風の強い乾季(7、8月)は今でも凧揚げが盛んですが、カイトではなく、昔ながらの凧とそれを見上げる少年たちの素朴さがいい味出してます。それもそのはず、今年67歳になるLABA氏が少年時代を思い出しながら描いた絵なんですから。背景の緑は少しずつ異なる色が配置されており、それが絵に深みをもたらしています。箱から出して飾るたびに、吸い込まれそうになるほどの絵力。「いい絵にはやはり人を惹き付ける何かがある」、素直にそう思える作品です。
この他にも、プンゴセカン巨匠LABA氏らしいユニークな動物画を取り揃えています。
若い豹はLABA氏の人気のモチーフ。50x40cmのちょうどいいサイズで、場所を選ばず飾れます。(画像をクリックすると作品詳細情報がご覧になれます)
こうして見ていると、まるで森のなかにいるみたいですね。これから日本も緑眩しい季節へと向かいます。あなたの初めてのアートを見つけに来られませんか?春のバリ絵画展、5月18日(月)〜23日(土) @東京・京橋で開催します。
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春のバリ絵画展・・・バリ絵画の主要ジャンルの作品から50点を一堂に
LABA・・・プンゴセカンの巨匠、画家と作品ページ
バリ絵画のあるオフィス② 絵にもご縁があるんです
こんにちは、坂本澄子です。
今日も嬉しいお話です。『カエルの親方』がついに嫁ぎました。深い緑が特徴的なプンゴセカンの巨匠LABAの動物画です。同じ時期に仕入れた他の作品が次々と売れていく中、このカエル君は少しユニークな存在に映ったのでしょうか、長く「バリアートショールーム」に留まってくれました。
実はこの作品、初めてLABA氏のアトリエを訪ねたときに一目惚れして、小さめのサイズで描いてもらったものなのです。以来、展示会のたびに「きゃー、カエルが入れ墨してる〜」と、若い女性のお客様の人気者^o^
さて、この絵を購入してくださったのは、神奈川県伊勢原市に本社がある、届晋運輸(かいしんうんゆ)の社長古葉千雄様(写真)です。トラック5台からスタートし、20周年を迎えられた今では、200台のトラックとドライバーさんを抱える規模に成長されました。それでも、創業当時は、ドライバーさんを採用しても、翌日来てくれるのは5人中、3、4人…。といったご苦労も経験され、自らハンドルを握る傍ら、ドライバーさんたちが無事で帰って来てくれるようにと祈るような気持ちだったそうです。その思いは今も変わりません。
そんな願いを「帰る=カエル」とかけて、蛙の絵を探し始めたのはもう随分前だそうですが、なかなかこれという出会いがなかったとのこと。そんな中、たまたま古葉様とお会いする機会があり、創業当時のことを伺っていたところ、そんなお話になり、「カエルならいい絵がありますよ!」となったわけです。「日本にはないタイプの絵ですね」と気に入っていただきました。
2月28日のバリ絵画のある暮し⑫で、B様がいみじくも仰った「来るべき場所に来てくれた絵」がここにもありました。人と人に出会いがあるように、人と絵にもご縁があるのですね。そう考えて、お客様からのお便りや投稿写真を改めて拝見すると、たとえ時間がかかっても、どの絵も最もふさわしい場所への嫁いでいったのだと思えて嬉しくなります。
そんなあなただけの1枚を見つけにいらっしゃいませんか? 春のバリ絵画展、5月18日(月)〜23日(土)まで、バリ絵画の様々なジャンルから選んだ50点が一堂にご覧になれますよ。
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春のバリ絵画展 … 5月18日(月)〜23日(土)@東京・京橋
お客様からのお便り … バリ絵画のある暮しはこんな感じです
LABA 作家と作品のページ … バリ版鳥獣戯画、深い緑に癒されます
バリの神様⑤ 戦いの女神ドゥルガー 〜 バトゥアン絵画を楽しむ
こんにちは、坂本澄子です。
ついに!暖かくなってきました〜。堅く閉じていたつぼみも、開花に向け動き始めましたね。
先日ご紹介したバリの古典絵画(カマサン・スタイル)に次いで、伝統的な技法を今に受け継ぐのがバトゥアン・スタイルです。カマサン村が古都にふさわしい、落ち着いた佇まいを見せているのに似て、バトゥアン村も写真の通り、風情ある町並みです。高い塀の上からバリ島に特徴的な赤瓦の屋根が見える通りを歩くと、なんだか子供の頃住んでいた場所を思い出すような懐かしさがあります。
オランダ統治下において、ウブドが多くの外国人画家を受け入れたのに対し、ほとんど西洋の影響を受けなかったのがバトゥアン村。そのため、ヒンドゥ神話を題材に、やや暗めの色使いで、画面いっぱいにびっしりと描く伝統的な手法が今も残っています。やや暗めになるのは、下絵を描いた後、墨で陰影をつけてから彩色するためなんです。この描き方は西洋絵画の影響を受けたバリ絵画の他のスタイルにも見られます。
さて、今日ご紹介するのは戦いの女神ドゥルガーです。神話によると、天界を攻め、自分たちを追放したアスラに対する神々の怒りの光から誕生したとされ、10本あるいは18本の腕にそれぞれ神授の武器を持った姿で描かれることもあります。そんな恐ろしい一面を持つ一方で、顔はとても優美で美しく、三大神のひとりであるシヴァ「終わりの日に世界の破壊を司る神」の神妃でもあります。
その女神ドゥルガーの戦いの場面を描いた作品がこちら。上部中央を見てください。少年のような表情で、大蛇ナーガと戦う勇ましい姿が描かれています。周囲に目を移すと、森の中には野獣や魔物が潜み、神々との戦いが繰り広げられています。一見、平面的に描かれているように見えますが、この森の奥には何があるんだろうと、見る人に想像させる余韻のようなものがあります。
(画像をクリックすると作品詳細がご覧になれます)
『戦いの女神ドゥルガー』GENDRA アクリル/紙 34x54cm 85,000円
作者のゲンドゥラ氏の作品は、これまで国内外の数々の伝統絵画展に出品されており、神話を題材にした緻密な描写に定評があります。
私自身はバリ絵画に出会った当初、花鳥画や風景画といった入りやすい絵に惹かれました。しかし、この作品もそうですが、じっくりと見せ、じわじわとしみ出してくる深い味わいを感じます。そして、伝統が持つものの価値が見えてくると、作品に親近感と愛着が湧いてくるんです。
こんなふうに、多彩なジャンルという幅広さと、じっくり楽しめる奥の深さの両方を兼ね備えたバリ絵画。5月18日(月)〜23日(土)開催予定の「春のバリ絵画展」では、主要スタイルから50点を選び、一堂に展示します。
<関連ページ>
春のバリ絵画展 5月18日(月)〜23日(土)@東京・京橋
バトゥアン・スタイル バリ絵画の伝統スタイルの魅力をご紹介
一足早いお花見をアートで
こんにちは、坂本澄子です。
まるで真冬に逆戻りしたような寒さですね。今朝の東京の気温は3℃、昨日は窓の外が真っ白になるほど、みぞれまじりの冷たい雨が横殴りに降っていました。なかなかすんなりと暖かい春はやってきてくれませんね。でも、そんなときこそじっと我慢。春はもうそこまで来ています。
さて、今日は私事ですみません。
桜の季節が待ち遠しくて、アートでお花見を楽しもうと、RONDO(1月に『幻想心象風景画』展を行った銀座一丁目のギャラリーです)のオーナー丸山則夫さんが、『一枚の絵』展を私の描いた桜の絵で企画してくださいました。
この『一枚の絵』は毎回違う作家の作品1点だけを展示して、その時間その場所に偶然居合わせた人たちどうしで、絵を前に色んなことを語ってみませんかという主旨で開催されているもの。もちろん、一人黙って絵の世界にひたるもよし、その絵から感じたものを自由に語り合うもよし、一番心地よいスタイルで気軽に絵を楽しめます。
今回、展示する桜は昨年秋にある公募展のために制作した100号(130cmx162cm)のアクリル画。昨年4月に山梨県の清春芸術村で出会った、樹齢80年の見事な桜の大樹がモデルです。園内をぐるりと取り囲むように10本以上もある桜が最後の美しさを見せてくれていました。そのうちの2本が寄り添うように立ち、まるで一本の木のように見え、風に乗って花びらが舞う姿がとても印象的でした。昼間の風景でしたが、満月の夜に脳内変換して描いています。
楽しみなのが、RONDOの照明。1月に来てくださった方は、ウィラナタさんの『満月の夜に』が幻想的に浮び上がったのを覚えておられるでしょうか。今回もとびきりの照明にしたいと、工夫してくださってます。
奥の小部屋には今回の展示に向けて描いた9点の小品を展示します。私がこれまで実際に出会った桜からイメージした情景を、オムニバス風の作品に仕上げてみました。こちらも展示の方法にちょっと新しい試みをしています。
この展示会、明日行います。もしお近くを通られることがあれば、お気軽にお立ち寄りくださいませ。きっとほっこりとした時間が過ごせますよ〜。
一枚の絵「桜の季節を紡いで」
日 時:2015年3月12日(木) 13:00〜20:00
18時からライトアップした一枚の絵を見ながらお飲物を。
場 所:Art Space RONDO 東京メトロ有楽町線「銀座一丁目」徒歩1分 地図
よろしければぜひどうぞ!
バリの神様④ 神話に登場する化身たち〜古典絵画の魅力
こんにちは、坂本澄子です。
前回は「バリの神様」シリーズ第3弾として、世界の秩序を司る神ウィシュヌをご紹介し、10以上の化身があることをお話しましたが、いったいどんな化身なのでしょうね。今日はバリ絵画を通じて神話の世界にお連れしたいと思います。
はい、「ラーマヤナー」の主人公のラーマ王子はまさにそんな感じに描かれています。写真は、ラーマ王子(左)に、シータ妃がさらわれたことを猿王ハヌマン(右)が報告している場面ですが、異母弟のラクシュマナと並んで立った姿は、貴公子然としていますね。
「ラーマヤナー」はヒンドゥ教の神話のひとつ。物語のあらすじについては、以前ご紹介していますので、こちらも併せてお読みになってみてください。ところでこの物語の一番の見せ場は、シータ妃を取り戻すために、魔王ラワナ(日本の昔話でいうところの鬼)とその一味を相手に、猿王ハヌマン率いるサル軍団が大乱闘を繰り広げる場面です。その様子を描いた作品がこちら。(画面をクリックすると詳細がご覧になれます)
『ラーマヤナー〜魔王と戦うサル軍団』 ムリアティ作 アクリル画 60x80cm 59,000円(税込)
敵味方入り乱れながらの大乱闘、サル軍団が魔王の手下をちぎっては投げ、ちぎっては投げ…?、迫力ある戦いの場面がキャンバスいっぱいに展開されています。
「ラーマヤナー」では貴公子として描かれているウィシュヌですが、別の化身であるクリシュナは全く印象が異なります。こちらの作品を見てください。注:左に小さく描かれた涼しげな顔の方ではありませんよ。クリシュナは中央です。
『マハーバーラタ〜クリシュナ』 ムリアティ作 アクリル画 68x78cm 90,000円(税込)
何本もの手にそれぞれ違った武器を持ち、額にある第三の目は火を放つとも。その雄姿は猛々しく、またどこかユーモラスでもあります。ちなみに、千手観音像はクリシュナをモデルにしているとの説も。
これらの作品はカマサン・スタイルと呼ばれ、影絵に端を発する最も古典的な技法で描かれています。墨で陰影をつけた下絵に赤、青、茶、黄の4色で彩色、人物描写が平面的、顔は斜め45度に描かれるのが特徴です。
作家は14世紀から続く古典絵画を継承するカマサン村出身の女流画家ムリアティ。古典絵画ならではのプリミティブな味わいに加え、女性ならではの色使いが洗練された魅力を添えていますね。
5月18日(月)〜23日(土)のバリ絵画作品展では、バリ絵画の主要スタイルを網羅する50点を展示します。今回はアートルキサンさんの協賛で行い、今日ご紹介した作品を始め、ウェブサイト掲載の古典絵画の実物を見て購入できるチャンスですよ。どうぞお楽しみに。
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バリの神様③ 宇宙の秩序を司るウィシュヌ
こんにちは、坂本澄子です。「バリアートショールーム」は御陰さまで3月1日で2周年を迎えました。いつも応援してくださり、ありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願い致します!
さて、「バリの神様」シリーズ、これまで女性の神様が続きましたので、今日はヒンドゥ教の3大神のひとり、ウィシュヌをご紹介したいと思います。バリ絵画にもよく描かれる神様です。
ウィシュヌも前回のデウィ・スリ(稲の女神)に劣らず、バリの人々から慕われている神様。神話『ラーマヤナー』の主人公ラーマ王子をはじめ、なんと10以上の化身があり、それぞれに物語があるんです。
3大神であるブラフマー、ウィシュヌ、シバはそれぞれ「宇宙の創造を司る」、「宇宙の秩序を司る」、「宇宙の終わりの日に破壊を司る」という役割を担っていると言われています。人間の暮しに最も関わりがある神様という意味でも、親しみがわいてきますね。
そんなバリの人々の考えを表現した作品がこちらです。
『ウィシュヌとガルーダ』ARIMINI アクリル/紙 25cmx36cm 160,000円(税込)
画面中央では、村人たちが神社に供物を捧げ、黄金色に実った稲の豊作を感謝しています。そのすぐ横で、手のひらから泉を涌き出させ、田植えが終わったばかりの田圃に水を送っているのがウィシュヌです。
睡蓮が美しい花を咲かせ、蝶が舞い、たっぷりと水を湛えたこの水田に、やがて豊かな実りが訪れることを感じさせてくれます。このように世界のサイクルを維持し、そのサイクルの上で信仰と一体となって生活する、バリの人々の暮しを守ってくれる神様がウィシュヌというわけです。
この作家アリミニ(ARIMINI)はバリで最も著名な女流画家のひとり。その作品はアルマ美術館で常設展示されています。これは小さな作品ですが、これだけ様々な色を使いながら、美しく調和しているところは、ウィシュヌの「秩序」に通じるものがあると感じました。また、細部に至るこだわりには並々ならぬものがあり、細い線の一本一本まで意識を張り巡らしていることがよくわかります。
例えば、水田の水をよく見てください。上の田圃から下の田圃へと水が流れ、隅々まで水が行き渡っていますよね。(バリ島には1000年以上に渡って受け継がれてきたスバックと呼ばれる水利の仕組みがあります)そのよどみない流れを繊細な曲線で描き込んでいるのがご覧になれるでしょうか。
こんなふうに、どの部分を見ても見応えのある作品です。こんな作品がうちにあるなんて、ちょっとすごくないですか。この作品は実物がご覧になれ、ウェブからもご購入いただけます。
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アリミニ (ARIMINI) 画家プロフィールと作品詳細はこちらをどうぞ