バリアートショールーム オーナーブログ
2016.1.20

コレクターの視点で見た浮世絵のおもしろさ

こんにちは、坂本澄子です。寒いですねー。先週までの暖かさにすっかり油断していました。お風邪などひかれませんよう気をつけてくださいね!

さて、先日上野の森美術館に『肉筆浮世絵 美の競艶』展を見に行ってきました。

日本美術蒐集家であり、シカゴ美術館の理事でもあるロジャー・ウェストン氏所蔵のコレクションから厳選された129点が紹介されています。それでも会場に収まりきらなかったようで、前期・後期に分けて展示されていました。(前期も行けばよかったと後悔しきり。。)

美人画に焦点をあてた作品構成は、当時の人々の生活がどのようなものだったかを窺い知ることができる興味深い内容。例えば、下記の2点(『時世粧百姿図』より。初代歌川豊国の作)はいずれも遊女たちの寛いだひとときを描いたものですが、官許の吉原(左)と品川(右)とでは随分雰囲気が違うんだなあと。

品川の遊女たちの逞しいこと。お客が残したワタリガニを手づかみで食べる三人組の豪快な食べっぷり。そして、はだけた浴衣姿で、あるものは三味線を弾き、あるものは窓際からぼーっと遠く海を眺めるといった具合に、苦界に暮らしつつもつかの間の休息を楽しむ様子が感じられます。

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当時のファッションもおもしろいです。着物の柄や色からその頃の流行が窺え、鮮やかな色と渋い色を組み合わせた粋な配色には描き手のセンスさえ感じました。また、人物の生き生きとした表情も面白く、一点ずつ丁寧に鑑賞していたら、あっという間に閉館時間。名残惜しく、会場を後にしました。

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先頭を歩く花魁の艶やかな姿に目を奪われますが、よく見ると後ろの女性たちの着物もなかなか味わい深いです

ウェストン氏は自分のギャラリーの静かな空間で、蒐集したこれらの作品を飽かず眺めながら、同じ絵師による複数の作品、同じ画流の異なる絵師、異なる画流の作品などを隣同士に並べては、顔、髪型、着物、落款などの違いを研究し、そこに描かれたものから背景にある、日本の文化・慣習などへと理解を深めていったそうです。バリ絵画もそうですが、風俗画には描かれた背景にある、その土地や時代の文化へと広がっていく楽しみがありますね。

今回展示されていたのは、量産可能な版画ではなく、大名や豪商などから注文を受けた絵師が高価な画材を使って腕を振るった一点物の肉筆画ばかり。見応えたっぷりのコレクションでしたが、ウェストン氏はいったいいくら投資したのでしょうね(笑

それぞれの国や地方に素晴らしい作品がありますが、私が特にバリ絵画を専門にご紹介しているのは、著名作家の作品でも手の届く価格であることに魅力を感じているからなのです。物価水準の違いから来るメリット。これは気軽に美術蒐集が楽しめるチャンスかも知れませんよ。

「どんな作品があるの?」と興味を持たれた方は、ぜひ「バリ島の美術館に選ばれた作家たち」をご覧になってみてください。

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