クリスタライゼーション
こんにちは、坂本澄子です。
連休に初めてバリに行かれたOさん。バリ島の画家ガルーさんの絵をご覧になって以来、朝靄の立ち込める幻想的な田園風景を夢にまで見たそう。おかえりになられて早々にお礼のメッセージをいただいたので、「夢に見た風景に出会えましたか?」と伺ってみました。
ところが、Oさん、どうも浮かない反応。バリ島では最高の経験をして、ぜひまた行きたいととても喜んでおられるのですが、風景についてはそれほどでもなかったそうなのです。
「・・・むかしの良さが、壊れてしまいつつあるかも知れませんね」とポツリ。
残念ながら、これはあたっているかも知れません。ウブドに住むガルーさん自身も、数年前から同じように感じているそう。子供の頃の懐かしい風景に会いたくて、久しぶりにその場所を訪ねてみると、「あれ?昔はもっと・・・」と思ってしまうあの感じに似ています。
一方、人の記憶というのも不思議なもので、時の経過とともに、自分にとって好ましいように美化される傾向があるようです。
林真理子さんが著書の恋愛小説の中で、恋人との逢瀬を思い出してはその余韻に耽る主人公の様子を、舐めて口の中で形を変えていくべっ甲飴に喩えておられるのを見て、うまいなあと思ったことがあります。この現象、心理学ではクリスタライゼーションとも言うそうです。
ガルーさんは記憶の引き出しを開け、彼女自身の心のフィルターを通って蓄積された美しい風景を取り出しては、ひとつの絵の中に構成していくのがとても上手な画家。写真とは違う、絵画ならではのバリの風景を心ゆくまで楽しめ、優しさの溢れる作品ばかりです。
Oさんはそんなガルーさんの作品を見て、ご自身の心の風景を思い出されたのではないでしょうか。
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