扉の向こう
こんにちは、坂本澄子です。
夏の暑さもようやく一息つき、
そう遠くない秋の訪れを感じる今日この頃となりました。
今日は私自身の絵のお話を聴いていただけますか。
つい先日、バリの扉をモチーフにした作品3点を仕上げました。
バリ島でよく目にする、細長い観音開きで、
繊細な彫刻と鮮やかな彩色がほどこされた扉。
公と私を区切る場所に置かれているようです。
公道と私邸を隔てる扉だったり、一族が住む敷地内で、家族のスペースと個室を隔てる扉といった具合にです。(バリの伝統的な住居は敷地内に複数の棟があります)
バリ島に行くたびに、細く開かれた扉の向こうにちらりと垣間見える景色に心ときめかせたもので、
そんなバリの扉をいつか絵にしてみたいと思っていました。
小さな習作を描いてみたのが、今年の1月。
その後、大きな絵を3点続けて描きました。
いずれも150cmを超える大キャンバスで、リビングで描いているとまるで壁のよう。自宅で迷路ごっこができそうです。
扉にほどこされた彫刻は、現地で取材してきた写真を見ながら、できるだけ忠実に再現しましたが、
植物の茎の流れるような曲線がとても優美で、描きながらうっとり。
バリの画家さんたちの描く線も、とてもなめらかで繊細。
これはもう技としかいいようがありません。
そのまま描いてはバリの画家さんにかないっこありませんから、自分にしかできない絵を描きたいという思いがむくむくと湧いてきました。
そこで、扉の向こうに対する心のときめきを、別の場所の風景(日本の風景)で表現してみました。
バリ島も好きだけど、日本も大好き。
そんな「どっちも!」を描いています。
例えば、右端の絵ですと、
手前の後ろ姿のネコはバリ島にいる自分とします。
そうすると、扉の向こうに見える一本の木は、日本にいる「もうひとりの自分」になります。
毎日の生活の中でも、対象的な2つの何かの間を揺れるような気持ちで行ったり来たりすることって、ありますよね。
仕事と家庭だったり。
いまはもうどちらかひとつを選ぶ時代ではなく、どっちもほしい。
しかも2つではなく、より多くの顔を持っているほうがよいとされる時代へと移り変わりつつある気がします。
これらの作品は以下の絵画展に出品します。
お近くにこられる機会がありましたら、ぜひお立ち寄りいただければ光栄です!
ウィラナタ ご注文制作作品
こんにちは、坂本澄子です。
1月のブログでご紹介したウィラナタさんへの制作依頼。
作品小冊子『光の風景』をご覧になったお客様からのご注文です。
半年の制作期間を経て、先月納品させていただきました。
小冊子に掲載されている元の作品と構図は似ていますが、
画家の新たな工夫が随所にほどこされた、素晴らしい作品に仕上がりました。
天候が急変し、嵐が迫ってきたので、棚田のあぜ道を家路に急ぐ親子の姿です。
細いあぜ道は雨で濡れて滑りやすくなっているので、小さな子供を抱え
場所によって光の強弱や種類、雨脚の色彩や強弱など、前作では表現しきれなかったところを意識しながら描いたそうです。
人々を包み込む雄大な自然は、時として厳しく、破壊的な力を持つこともあります。
それでもなお希望を感じるのは、わずかに明るくなった遠くの空、駆け出した男の子の逞しい生命力のゆえでしょうか。
自然を敬い、共存するバリの画家ならではの視点を感じました。
ウィラナタ作品小冊子『光の風景』『光の風景II』は増刷しました。ご希望の方はこちらからお申込みください。(無料)
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