シュピース – 現代画家に受け継がれる熱情
こんにちは、坂本澄子です。前回に続き、今日もシュピースのお話を。
彼の残された少ない作品の中でもとりわけ有名なのは、『風景とその子供たち』ではないでしょうか。一度見たら忘れられないような強い個性を放ち、主題である牛を連れた農夫がリフレインのように何度も出て来るこの作品。1つのキャンバス上にいくつもの時空間を共存させた、シュピースの作品によく見られる技法が用いられています。
この作品を見て、音楽を感じる人は少なくないと言います。実際、シュピースは羨ましいほど多くの才能に恵まれ、ピアニストであり、作曲家でもありました。ヨーロッパの現代社会の荒廃した世相から逃れるようにバリ島にやってきたシュピースは、第二次世界大戦中にオランダ軍に敵国人として捕らえられジャワ島に抑留されるまで(その2年後に47歳で他界)の約15年間、その地に留まりました。その間に描いた作品の中で、憧れの情景を作品の中に再構成したのでしょう。
ガルーの新作『朝のセレモニー』を初めて見たとき、作品のほぼ中央手前に高くそびえ立つ椰子の木の構図に、シュピースのこの不思議な絵を思わされました。
’95年、シュピースの生誕100年の年に、招待留学でドイツに渡ったガルー(当時27歳)は、彼の作品に直接触れ、圧倒されるほどの強い揺さぶりを感じたそうです。そして、その作品を熱心に研究し、取り入れ、そして、完全に自身の作品として昇華させています。
もうひとり、シュピースに魅せられた人がいます。ガルーの実弟、ウィラナタです。
LALASATI絵画オークションのウェブサイトで、画家としてごく初期の1990年頃に描かれた水彩画の小品2点が17万円で落札されたのを見ました。(写真はそのうちの一点)ほとんど模写のように描かれたこの作品、ウィラナタが当時いかにシュピースに傾倒していたかがわかりますね。
このように初期、前期の作品がオークションで取引されているのを見ると、ウィラナタが画家として多くのコレクターたちを惹き付けていることを感じます。
シュピースの作品は戦争中に多くが失われてしまい、バリ島の美術館でも複製画が展示されているのみです。残された作品はオークションで1億円もの価格で取引され、信奉者の間では伝説的な存在のシュピースですが、同じように南国にわたったゴーギャンなどと比べると、まだまだ過小評価されているのは残念に思います。
そうそう、前回ご紹介したシュピースの著書に走り書きされたメッセージ、まだ解読できておりません。英語、ドイツ語ではないことははっきりしたので、次はフランス語の線をあたっています。ヒントがありましたら、コメントでお知らせいただけると嬉しいです。
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