満月の夜の思い出を描く
こんにちは、坂本澄子です。
前回のブログで、満月の夜の思い出をお話しましたが、子供の頃の美しい思い出を持つ人がここにもいました。バリ島の画家ウィラナタです。
初めての方に少しご紹介します。ウィラナタは「現代バリ芸術の父」と言われるドイツ人画家シュピースに強く影響を受け、熱帯の幻想的な風景を描き続ける画家。自身の少年時代の思い出を光で表現した独特な心象風景画で定評があります。(特集ページはこちら)
バリ島を代表する美術館、プリ・ルキサン美術館、ネカ美術館(写真は『村の風景』)などがその作品を所蔵・展示しており、世界中から訪れる人々を魅了しています。実は私もそんなひとり。初めてネカ美術館を訪れた時に気になった絵が、実はウィラナタの作品だったのです。それがわかったのは随分後になってからなのですけどね。
以前、アトリエを訪れたとき、彼の奥さんとお母さんが満月の祭礼の準備をしていました。アトリエの中にある小さな祭壇にチャナンを供え、聖水で場を清めていく様子は、バリでは珍しい光景ではありませんが、
「満月は永遠の平安をもらたすんだ」
ポツリと言ったその一言が、私の心の中にいつまでも消えない余韻を残し、彼に満月をテーマに制作を依頼することとなったのです。それがわずか数週間前のこと。
「次々とイメージが湧いて来るんだ。描いていて楽しくて仕方ない」
そんな言葉が添えられて、写真が送られてきました。
(え、もうこんなにできてる?!)
売れっ子作家の彼に依頼して、こんなに早く進んだことは正直初めて。それくらい、この絵にぐぐぐーっと傾倒しているのでしょう。
満月が棚田の水面に写り、明るく照らし出された空間がありました。田圃の脇の小さな祠の回りでは家族が祭礼の準備をしています。そして、ほぼ中央には小さな松明を手に畦道を照らす少年が。きっと画家自身に違いありません。
(彼らしい…)
そう思って何だか嬉しくなりました。今回もいい絵になりそうです。
さて、満月と言えば、嬉しいお知らせが。
私の大好きな写真家、澤野新一朗さんから、来年ついにバリに行くとの連絡がありました。以前このブログでもご紹介させていただきましたが、澤野さんは南アフリカの大地を20年以上に渡り撮り続けている、自然と人の調和をテーマとした写真家。NHKのドキュメンタリーにも取り上げられるなど多忙な毎日。バリ島で満月の夜を撮りたいと、もう随分前から言っておられましたが、ようやくスケジュール調整がつきそうとのこと。
自然と人の調和はまさにバリの人々の生き方にも通じるものがあり、澤野さんには絵画展にもよく来ていただき、「いつかコラボしたいですね」とも。この絵が完成したら、そちらも実現できるといいなあ…と夢を膨らませているところです。
今日から25日まで、澤野新一朗写真展『THE COLOR OF NATURE』が千代田区六番町の飯田弥生美術館ギャラリーで開催されます。アフリカの大地の雄大さと澤野さんの気さくな人柄にきっと癒されますよ。
<関連サイト>