アトリエ訪問③ ウィラナタ-後編
こんにちは、坂本澄子です。
今日はバリ島アトリエ訪問記、ウィラナタの後編をお届けします。
その小さめの絵は、ウィラナタさんの描くいつもの作風とは違っていました。
新しい題材、技法に挑戦するとき、小さめの習作からスタートすると話してくれたことを、まさに実践中というわけです。
昨年は10点の絵を描いたそうです。
大きな作品が多く、しかも緻密な描き方を思うと、その集中力には驚くばかり。
でも、それよりすごいと思ったのは、よくこれだけ新しい絵のイメージが次々と湧いてくることです。
「そのインスピーレーションは、一体どこから?」
「風景を見て回ることと、あともうひとつは、インターネットで西洋の風景画を見ること」
それを聞いて、ようやくいつもと違うと感じた理由がわかりました。
光と人物の関係がいつもと逆になっていたのです。
西洋絵画は人物に光を当てて描かれることが多いのに対して、ウィラナタさんの作品の多くは逆光で描かれています。
すると、カメラを向けた時と同じで、人物は暗くなり、周囲を包む風景へと、見る人の意識は広がります。
それが幻想的とも言える独特の雰囲気を作り出し、作品の魅力ともなってきたのですが、ウィラナタさんはそれで満足することなく、新しいことにチャレンジされていたわけです。
現在の洗練された作品は、このような人知れぬ努力の積み重ねがあったからこそだったのですね。
もう一点、描き始めたばかりの作品がありました。
そのときは、まだざっくりとした明暗と配色程度だったのですが、それが先日ほぼ完成し、写真を見せてもらいました。
ペネノン(Penenon)とは、ウィラナタさんの村に伝わる、伝統的な陶磁器を作る場所のことで、日本の窯とは違い、このように屋外にあるのが一般的だとか。
このように特徴的な形をしており、飲み物や硬貨を入れて使われるそうです。
陶磁器を焼く女性、天日干しされた壺を確認する男性、沐浴する女性…
光の中で滲んで見えるような、あの逆光の世界です。
残念ながら、この作品は注文を受けて描いたものだそうで、みなさまにご提供することはできませんが、ウィラナタさんの作品に関心を持たれた方には、過去作品の小冊子を差し上げています。(残数わずか)
今回の訪問で、ウィラナタさんの絵に向き合う真摯な姿を目にし、ますます応援したいと思うようになりました。
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