作家×注文者が創り上げた「一枚の絵」(前編)
こんにちは、坂本澄子です。
またひとつ、新たな感動が生まれました。以前ブログで注文制作の様子をご紹介したソキ(I KETUT SOKI)作『BALI ISLAND』、覚えておいででしょうか。展示会にも特別に展示し、多くの方に見ていただきました。
同じお客様から「まだ具体的なイメージではないんですけどね…」と次の制作のご相談を受けたのは4月頃のこと。
「人生の祭礼を一生のつながりとして表現しながら、常に近くで見守る神々をソキさんが描くとどうなるのかな〜、なんて思っています」
「・・・?!」
最初は正直こんな感じでした。そして、お電話とメールとでやりとりを重ね、お客様がイメージされていることがおぼろげながらわかってきました。誕生→成長→成人→結婚→出産→死と続く人の一生とそれぞれの節目で行われる祭礼、そして、それらを見守る八百万(やおろず)の神々。前回の作品がバリ島各地の文化・風習を描いたものだったのに対し、人の一生と神々の役割いう視点で描くもうひとつのバリ島。それがお客様のご要望でした。
しかし…、これをソキさんに何と説明したらよいものやら…。ちなみに、ソキさんは英語は簡単な挨拶程度しかできませんし、かたや私はインドネシア語、バリ語はこれからという状態(^o^; そこで協力してくださったのが、現地パートナーの木村さんとテギさんでした。テギさんは私がウブドでいつも泊まる宿のご主人、以前日本の着物の絵付けの仕事をされていたことがあり、日本語はお上手。しかも、奥様はソキさんの姪という関係なのです。おふたりがお客様のイメージを的確に理解して下さったおかげで、ソキさんからは「初めての試みですが、是非取り組んでみたいと思います」と意欲的なお返事をもらうことができました。
この後も大事な局面が続きました。ソキさんは構想にかなりの時間をかけておられましたが、なかなかこれといったイメージが浮かばない様子。 最初の一ヶ月はスケッチを繰り返す、いわば生みの苦しみでした。
この時のことを後から伺うと、ソキさんは笑って「神様にお祈りを捧げました。すると間もなく、頭の中に構図のイメージを授けられ、タイトルが決まったのです。それからは、下絵の制作から彩色までスムーズに進めることができましたよ」
ソキさんのつけたタイトルは『 LAHIR, HIDUP, MEMINGGAL (誕生、生活、死 ) 』でした。 (次号に続く)
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SOKI 作家&作品紹介ページ バリ島の主要美術館が作品所蔵する画家の素顔に迫ります
ご注文制作の流れ お客様のイメージをこんな風に作品にしていきます
ヤングアーティスト・スタイル オランダ人画家アリー・スミットから受けた影響とは
新作情報『ある少女の肖像』絵はどこまで人の内面に迫れるのだろう
こんにちは、坂本澄子です。
彼女の名はウタリ、6月に高校を卒業する17歳で、私がバリに行く度にお世話になっている宿のご主人の娘さんです。
パンジャールと呼ばれる村組織が生活の基盤となるバリ島では、女性は夫を通じて初めてその組織の構成員と認められてきました。しかし、近年のインドネシアの経済成長はめざましいものがあり、女性たちの意識にも少しずつ変化が見られます。ウタリも卒業後は州都デンパサールにある看護師学校に進学し、将来は仕事を持って自立した女性になりたいと考えているんです。
1年前まだあどけなさが残っていた少女はいつのまにか大人の女性へと成長し、その決意と自信とが彼女の笑顔に新たな魅力を加えていました。
今回はそんなウタリの肖像画をANTARAさんに描いてもらいました。
イーゼルに立てかけたスケッチブックに向かうと同時に、木炭ペンシルを持つ手がなめらかに動き始めました。その集中力たるやすごいものです。繊細な線、力強い線からあっと言う間に輪郭が現れ、目を描くとそこにいのちが宿りました。
肖像画と言うと外見的に似ているかどうかに目が行きがちですが、写真とは違う絵ならではの魅力は、描き手(あるいは依頼主)の目を通じて見たその人が描き出されることではないかと思います。その意味で、ANTARA氏の描いたのは私の感じたウタリそのものでした。
この作品は額装され、つい先日日本に届きました。ショールームの私の机の横にあります。アトリエから写真を送ってもらった時の印象よりもずっと存在感があり、『若さ』の持つ瑞々しさや純粋さに溢れています。そんな肖像を見ていると、こちらまで何だか元気になってきます。彼女に今のこの気持ちを忘れずにこれからも頑張ってほしいなと願っています。
さっそく作品詳細を公開しましたので、ご覧くださいね。この作品の売上の10%をウタリに進学のお祝いとして贈ります。
また、肖像画の制作を7名様限定で承ります。注目の若手作家として多忙な毎日を送るアンタラ氏ですが、日本のお客様にその作品の魅力をお伝えしたいという「バリアートショールーム」の思いに応えていただきました。技法(木炭デッサン画、油彩画)、サイズはご希望に応じます。詳しくはお問合せフォームからご相談下さい。
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5/3ブログ 「アトリエ訪問〜田園風景を眺める場所から」 私のポートレートも描いてもらいました
ただいま制作中! ウィラナタ70cmx100cmの大作
こんにちは、坂本澄子です。
「バリアートショールーム」1周年記念展示会にご来場ありがとうございました。人気の花鳥画を中心に一部の作品につきましては感謝セールを継続しています。対象作品はこちらをご覧下さいね。
東京では桜がちょうど見頃を迎えています。ケンのお散歩は毎朝学校の回りを一周するので、薄紅色の花景色にやさしい気持ちになります。
バリ島では一昨日(3月31日)はニュピ(バリ暦での新年)でした。ニュピについては以前ブログでもご紹介しましたが、島全体を清める儀式が数日前から始まり、当日は誰もが家で静かに祈る静寂の一日となります。ウブドはこの夜空が澄み渡り、星がとても綺麗だったそうです。
それぞれの国にそれぞれの美しさがありますね。
さて、今日はドイツ人画家シュピースの影響を強く受け、幻想的な熱帯風景画で世界中に熱烈なコレクターを持つWiranata(ウィラナタ)さんの近況のご紹介です!
インドほど厳密ではありませんが、ヒンドゥ教徒が90%以上を占めるバリ島にもカースト制度が残っています。Wiranata、お姉さんのGaluh(ガルー)、弟さんのKepakisan(ケパキサン)たちAgung Familyはカーストの最上位レイヤー(王族,僧侶)に属し、中でもWiranataさんはファミリーの長男として一族の祭事に関する責任をずっしりと負っています。
バリ島では通常男性は結婚しても生家に留まります。そのため、敷地の中にそれぞれの家族が住む棟が立ち並び、東側に人間に関する儀礼を執り行う棟(Bale Dangin)が、そしてアグン山側の角には祭礼を行う家寺(Sanggah)が建っているのが、バリ民家の一般的な構造です。Wiranataさん一家も弟のKepakisanさん一家と同じ敷地内に住み、アトリエも共用です。
Wiranataさんのお宅ではこの家寺の100年ぶりの改修工事が行われました。一族全員が集まるのも100年ぶりとのことで、総出(きっとすごい人数)で儀式、奉納を執り行なったそう。写真を見ても気合いのほどが伝わってきますね。
そんな中、昨年10月にお願いした70cmx100cmの新作は、ジャカルタ、シンガポールのギャラリーからも注文が相次ぐところようやく着手してもらい、構図が出来上がったところです。
先日の展示会でも、「朝のひんやりとした空気が伝わってきますね」と言われた方がおられましたが、本当にそうなんです。姉のGaluhさんが水田の水面に写る空を描くことでやわらかな光を表現しているのに対して、Wiranataさんの作品は光と影のコントラストから来る強さを感じます。
この新作、これからどんなふうに仕上がっていくのか楽しみですね。
Wiranataさん、Galuhさんの作品は首都ジャカルタでもここ数年価格が上昇傾向にあり、新作はもちろん、絵画オークションなどの二次流通でも安定した価格で取引されています。インドネシアの経済成長を反映してか、物価が5分の1以下の現地にあっても高価な作品がどんどん売れています。
「バリアートショールーム」ではこれからも現地並みの価格で作品をご提供していきます。
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自然と繋がり、人間らしく生きる
こんにちは、坂本澄子です。
先日、久し振りにロードショーに行ってきました。観たのは『かぐや姫の物語』(スタジオジブリ作品)。誰もが知っている『竹取物語』を高畑勲監督はどのように料理したのだろうと、14年ぶりの氏の新作にワクワク、そわそわ出かけました。声の出演がすこぶる豪華キャストで、求婚者のひとり車持皇子は「顔がそっくり、これはもしや…」と思ったら案の定橋爪功さんだったり、「良家の姫君とあろうもの」が口癖のご教育係を高畑淳子さん、竹取の翁にはこの作品が遺作となった地井武男さんなど、ぴったりの配役にじーんと来たり、大笑いしたり。
この映画が伝えたかったこと、それは自然の中で、人間本来の姿でのびのびと生きることの大切さではないかと思いました。自然+人間本来の姿…最近、気になっているキーワードです。私がバリに惹かれたのもまさにこれだからです。自然とそこに宿る神々に畏敬と感謝を持ち、その圧倒的な大きさに委ねて素朴に生きる姿。そこにはいまの日本人が失いつつある大切なことがたくさんあると感じています。
そんな中、ガルーさんにお願いしていた新作が2点揃いました。心の中にある神様のイメージを表現してくださいとお願いしたものです。朝夕それぞれの静謐さの中で神様を身近に感じる時間を描いてくれました。こうしてみていると、静かな気持ちになれますね。
慌ただしい毎日の中で、少しでも自分自身にかえる時間を持つことはとても大切だと思います。小さめの23cm×31cmサイズ(本体)ですから、ちょっとしたスペースに飾っていただくことができます。また、以前ご紹介したお客様のように飾る場所を固定せず、ご自分の前に持ってきて、好きな音楽を聴きながら、あるいはいいお酒をちょっとだけいただきながら、自分だけの素敵な時間を過ごすのもいいですね。このサイズのガルーさんの夕景作品を購入下さったお客様からは、「毎日玄関でお帰りなさいと迎えてもらっています。美術館も所蔵する一流作家の作品がある生活、ちょっと自慢です」と嬉しいお便りをいただきました。
作品詳細はこちらをどうぞ
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バリ絵画展『五感を満たす食卓②バリの妖精たち』好評開催中!
土日祝の15時までお店におります。バリ絵画のこと、作品のこと、何でも訊いてくださいね。
歳末セール実施中 人気作家の作品が10〜20%off !12月30日まで
新作情報 – バリニーズ・ビューティ四部作
こんにちは、坂本澄子です。日中は厳しい残暑ですが、朝夕は空の高さにふと秋の訪れを感じる今日この頃です。今週は夏休みを終えて、「さて、また頑張るぞ〜」と仕事に戻られた方も多いのでは。季節の変わり目、どうかお身体に気をつけてお過ごし下さいね。
さて、今日も新作のご紹介です。久々登場の写実人物画の旗手アンタラさん。4月の絵画展では、彼の瑞々しい作品にため息をついた方も多かったと思います。子供時代と思春期にさしかかる少女の作品でしたが、さらに大人の女性へと成長していく姿を画家はどのように描くのだろう…と興味が湧いてきました。そこで、女性が成長する姿を写真のように、7歳、13歳、17歳、そして21歳と追いかけて、描いてもらいました。題して「バリニーズ・ビューティ四部作」。サイズも額装も揃えてありますので、4点、あるいは2点対にして飾ったり、あるいは季節ごとに掛け替えたりと、いろいろな楽しみ方ができます。もちろん単品でのご購入も可能です。
ところで、こんな素敵な女性を描くアンタラさんってどんな人?自宅アトリエに何度かお邪魔していますが、2児のお父さん、そして、奥様はやっぱり(!)美人。よくモデルにもなっておられます。アンタラさんのこともっと知りたい!と、6つの質問をしてみました。
1)画家になろうと思ったきっかけ
祖父、父、叔父と画家の家庭に育ち、ごく自然に絵を描き始めました。(こういうタイプの画家さん、バリにはとても多いです)10歳の時、絵画コンクールの賞をもらってから絵の道に進む事を意識し始め、デンパサールの美術大学に。絵を描いていると、穏やかで、魂が解放されるような気持ちになるのです。
2)作品のインスピレーションはどこから?
表に出て、自然や人々の生活の様子を観察して回ります。祭礼での人々の様子、子供たちが踊る姿など日常のちょっとした一コマに、私の制作テーマである愛や平安を感じることができます。西洋絵画の技法を使って描いていますが、題材はバリの伝統にこだわっているのはそのためです。
3)画家として心がけていること
人物画に限定することなく、バリの文化や人々の生活、風景の美しさを、自然と人間の調和の中で描いていきたいと思っています。ですから、行き詰まったら、新たな刺激を求めて積極的に外に出るようにしています。
4)いままでで一番嬉しかったこと
バリ島内のビーチに家族で旅行したことですね。注)祭礼中心の生活をしているウブドの人たちは普段村から出ることはほとんどありません。こういったささやかなことにも喜びと感謝の気持ちを忘れないところは、他の画家さんにも共通しています。
5)画家としての将来の夢
画家として成功すること自体にはそれほどこだわりはありません。ただ、常により良い作品を描きたいと思っています。(注:バリ絵画は画家自身の強い個性というよりも、バリ島という風土の中で育まれた世界観を表現する側面の方が強いと感じています。普通、将来の夢は?と訊くと、世界中で作品を発表したい…とか言っちゃいそうですが、とても謙虚なお答えもバリの画家さんに共通した特徴です)
6。日本のファンへのメッセージ
私の作品を見てくれた人が、穏やかで幸せな気持ちになってくれることをいつも願っています。
アンタラさんの新作は近日中にサイトに掲載します。ぜひチェックして下さいね。
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夏の話題作 – 追加入荷が決定!
こんにちは、坂本澄子です。毎日うだるような暑さですね。一方、バリは乾季のこの時期は一年で最もしのぎやすく、山側のウブドではここのところ最高気温が28℃前後だそうです。ちょっと羨ましいですね。
今日は娘と久し振りに美術館でデート、アメリカン・ポップ・アート展に出掛けてきました。世界最大級のポップ・アート・コレクターであるパワーズ夫妻のコレクションです。パワーズ夫妻はこれらの作品を自宅の玄関から、リビング、キッチン、寝室、バスルーム、トイレに至るまであらゆる場所に飾り、日常生活の中で楽しんでいたそうです。日本でも、美術館で鑑賞するだけに留まらず、作品により身近に触れることで、毎日の生活を心豊かに過ごせればと思いました:)
さてさて、7月の絵画展でご好評をいただきました、エベン作野鳥画の横長サイズとガマ作熱帯睡蓮シリーズを、急遽画家さんにお願いして追加制作していただきました。エベンさんの方は今日完成したとの連絡があり、さっそく写真が送られてきました。横長サイズはリビングのソファの後ろなど飾りやすく、入荷する度にすぐに売れてしまいますので、ご希望の方がいらっしゃいましたらぜひお早めにお問い合わせ下さいね。日本への到着は9月10日頃の予定です。ちょうど本体サイズが40cmx80cmと同じなので、「プルメリア」と対にして飾っても素敵ですよ。廊下など殺風景になりやすい場所にもおすすめです。
ガマさんの熱帯睡蓮の方は現在制作中ですが、30cmx30cmの小さめサイズを3点(背景色金x2、白x1)お願いしています。実は、これはお客様からのアイデアをカタチにしたものなのです。このサイズですと、複数組み合わせて、縦にも横にも自在に飾れるのでとても便利。お部屋のスペースに合わせてアレンジできるという訳です。例えば、ソファの後ろに3点横に並べたり、階段には斜めに飾ったり、さらには階段下の空きスペースには写真のようにL字型に飾ることもできます。背景色が大胆な赤の横長サイズも入荷しますので、どうぞお楽しみに。
なお、informationでもお詫び&訂正させていただきました通り、8/24-25の麻布十番祭りではTシャツのみの展示販売となります。ガマ作の『虹の雀躍』と『夏の夜の夢』の図柄がプリントされています。作品とのセット展示販売は、8月28日(水)〜9月2日(月)で行い、会場はいずれもパレットギャラリー麻布十番ですので、お間違いのないようお越し下さいね。わかりづらくて、本当にごめんなさい。
今日ご紹介した作品は8月末までにサイトに掲載します。いずれもお求めやすい価格ですので、この機会にぜひご自身で持つ楽しみを味わってみられてはいかがでしょうか。世界中探しても同じ物がふたつとない一点物が、あなただけのものになりますよ。
お問い合わせはcontact@balikaiga.comへ、今すぐ。
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