バリ絵画のある暮し⑫ 来るべき場所に来てくれた絵
こんにちは、坂本澄子です。
毎日のふとした瞬間に、春がもうすぐそこまで来ていることを感じますね。今日は、ご自宅を新築され、ご主人、お母様と新しい生活を始められた埼玉県のB様からいただいたお便りをご紹介します^_^ B様はこれまで何度かご主人さまと展示会に来ていただき、新築中のおうちに合う絵を探しておられました。
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「バリアートショールーム」の坂本さんの紹介で、バリの絵に興味を持ちました。人間、動物、植物・・・「バリアートショールーム」の絵には、どれも息吹を感じます。
家を建て替え中に、我が家の雰囲気に合いそうな熱帯の植物を描いた絵が目にとまりました。夫婦共に一瞬で気に入り、購入を決意。玄関の黄色い壁にぴったりで、ドアを開けるといつでも朝のすがすがしさを感じています。
実は、最初に一目惚れしたのは、生命力と愛嬌にあふれた豹の絵でした。その絵は迷っている間に売れてしまったのですが、「バリアートショールーム」のブログで紹介された写真を見て、「やはり行くべきところに行ったのだ」と感じました。この『朝の儀式』も来るべき場所に来てくれたと思います。
今日も凛として私たちを見送り、出迎えてくれています。
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素敵なご自宅ですね〜。やさしいパステル調でまとめられたインテリアに、装飾的なGAMAさんの絵がしっとりと溶けこんでいます。春の訪れとともに、ますます多くの幸せが訪れますように!
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GAMA作品ページ アールヌーボーを思わせる装飾的な作品
バリの神様② 豊穣の女神デウィ・スリ
こんにちは、坂本澄子です。
今日は「バリの神様」の第二弾、バリ島で最も身近な神様といってもいいんじゃないでしょうか、多くの実りを与えてくれる「豊穣の女神」デウィ・スリのお話です。
バリ島ウブドのプリ・ルキサン美術館の中庭にある蓮池で、写真のような、右手に聖水の入った壷を持った姿をご覧になった方も多いことでしょう。バリの田園地帯を歩いていると、今でも水田のあちらこちらにデウィ・スリを祀った祠を見かけます。
あれは3年くらい前だったでしょうか。ガルーさんの『早暁の静謐』に出てくるような朝の幻想的な風景が見たくて、夜明け前から出かけたことがありました。アグン山が見える田園地帯に着く頃、ようやく空が白み始め、刻一刻と変わっていく雄大な景色にとても厳かな気持ちになったのを、今でも覚えています。どこにでも神様は宿ると信じるバリの人たちの世界観って、こういうことなのかなあ、なんてふと考えてしまいました。
しばらくすると一人の若い農夫がやってきて、緑の田圃の中を歩いていきました。その瞬間、真っ白な白鷺が一斉に飛び立ったかと思うと、その人は祠の前で祈りを捧げていました。
夜明けと共に起き、祈りで始まる一日。至る所に神様の存在を認め、感謝の気持ちを忘れない。そんな素朴なバリの暮し、いつまでも変わらないていてほしいと思います。
さて、そんなデウィ・スリを美しい女神の姿で描いた作品がこちらです。昨年秋の『豊穣の大地』展で展示させていただきました。黄金色に実った稲の刈り取りを村人たち総出で行う傍らで、デウィ・スリに豊作を感謝する供物を捧げている女性がわかりますか? この作品はご注文制作にて承ります。サイズについてもご希望ございましたらご相談ください。
『豊穣の女神』ANTARA ミクストメディア 100cmx150cm 800,000円
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『豊穣の女神』ANTARA 作品詳細はこちら
『早暁の静謐』GALUH 作品詳細はこちら
絵の愉しみ方 〜 知的好奇心に響く絵
こんにちは、坂本澄子です。
桜の季節が待ち遠しい季節になりました。昨日、銀座を歩いていたら、あるギャラリーのショーウィンドウに見事な桜、思わず覗き込んでしまいました。満開のひとえだの桜がぽってりとした陶器に飾られているところまではよくある構図なのですが、背景に特徴があり、藍に染められた小紋のような柄が四角く組み合わされていたり、江戸時代の水墨画を思わせるような風景が描かれていたりと、いにしえから今日に脈々と受け継がれる日本人の美意識を思わせる魅力的な絵でした。
こんなふうに、絵を見て心が動かされるのは、自分の中にある何かが反応するとき。昔見た光景や経験の断片が呼び起こされ、心(あるいは脳?)の中で心地よい波紋が広がっていくような共感と言いますか、これが「いいなあ」と思える瞬間ですよね。
一方、知らないものに対する知的好奇心という絵の愉しみ方もあると思います。展示会に来られるお客様は、バリ島の生活を描いた風俗画にそのような面白さを感じられる方も多いんです。
それまで神話を題材にすることの多かったバリ絵画が、オランダ統治下で西洋絵画と出会ってから、民衆の生活にも目が向けられるようになりました。(ウブド・スタイル)
左の作品はそんなバリの暮しが描かれた佳作。お寺の門前で祭礼の準備をする村の人々の様子が、バリ島の伝統画家ダギン(DAGING)の手によって、生き生きとしたタッチで描かれています。
『村の暮し』 DAGING アクリル画 60cmx45cm 140,000円(税込)
この流れを汲む画家たちの中でひときわ精彩を放っているのが、ジュルジュ(DJULJUL)です。ジャワ島バンドン市にある芸術科(Bandung Institute for Technology)で西洋の近代技法を学んだ後、バリ島に戻り、伝統絵画の魅力を再発見。細密画家として伝統技法と西洋技法を融合した独自の作風で身近な題材を取り上げてきました。
右の写真は、そんな氏の魅力が余す所なく発揮された作品。まだあどけなさの残る若い踊り手と、細部に至るまで精緻に描かれた背景とが、やわらかな色調で見事に調和しています。
『レゴン・ダンサー』DJULJUL アクリル画 65cmx50cm 263,000円(税込)
私はこの作品を初めて見たとき、ほとんど遠近感のない構図で平面的に描かれているにも関わらず、この踊り手の強い存在感に心揺さぶられるような感覚を覚えました。バリ伝統絵画の特徴でもある風景の一部を構成する人ではなく、明らかに、意思を持ったひとりの人間として描かれているこの作品に、西洋絵画を専門に学んだ作家ならではの、バリの伝統と西洋の融合体を見たように感じました。
今日ご紹介したウブド・スタイル以外にも、バリ絵画には様々なスタイルがあり、色々な絵の愉しみ方を教えてくれます。5月の展示会では、バリ絵画の主要スタイルの作品50点を一堂にご覧いただきます。
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『村の暮し』 DAGING 作品詳細/ご注文はこちらから
『レゴン・ダンサー』DJULJUL 作品詳細/ご注文はこちらから
バリの神様① 芸能の神様 サラスワティ
こんにちは、坂本澄子です。
「神々の島」バリ島はたくさんの神様に守られた島。バリの人たちは本当によくお祈りをします。神様への感謝を忘れないのですね。バリの神様は絵画の題材としてもよく取り上げられています。そこで、今日はバリの神様をご紹介したいと思います。
芸能の神様サラスワティ
日本で言えばさしずめ弁天様でしょうか、学問と芸能の女神です。バリのウク暦では210日1度、この神様を讃える日が巡ってきます。今年は5月2日(土)。
この日は本や教科書、舞踊に使われる仮面や冠を村のお寺へ供えに行き、敷地の一角にある家寺に供物とともに捧げます。学校も授業はおやすみ。子供たちは正装して学校に行き、お祈りをして帰ってきます。
サラスワティは写真のように4本の手を持つ、大変美しい女神として描かれます。それぞれの手には、ロンタール椰子の葉、伝統弦楽器レバブ、鎖、蓮の花を携えています。
知恵や勉学を象徴するロンタール椰子。昔は紙の代わりにこれに経典を書いてお祈りの際に使っていたのだそうです。レバブは文化・伝統・芸術の発展を表します。また、足元に描かれている白鳥は善悪を見分けることができるとされているんですよ。
『サラスワティ』アクリル画 75cmx50cm 128,000円
この作品はウブド・スタイルと呼ばれる、伝統絵画+西洋絵画が融合し1920年代に誕生したスタイルです。キャンバスの端から端まで細密に描き込まれた美しさはバリの伝統絵画を受け継ぎ、生き生きとした人物描写は西洋から学びました。
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バリ絵画・アートの主要スタイルを一堂に
こんにちは、坂本澄子です。
梅の便りが聞かれる季節になりました。まだまだ寒い日が続いていますが、春はすぐそこまで来ていますね。私も次の展示会に向け、準備を進めました。
この「バリアートショールーム」では、本物のバリ絵画を知っていただきたいという思いから、バリ島美術館所蔵作家による作品を中心にご紹介をしています。私の作家への強い思い入れもあって、先月の『幻想心象風景画作品展』でご覧いただいたように、最近はシュピース・スタイルの人気作家、ガルー、ウィラナタ姉弟の作品が充実してきました。
一方、バリ絵画の魅力は、下図のように古典絵画から、西洋絵画の影響を受けて様々に進化した多彩なスタイルが楽しめることにもあります。そこで、次回はバリ絵画の専門店「アートルキサン」さんの協賛をいただき、バリ絵画の主要スタイルを一堂にご覧いただける場をご用意したいと考えています。
(バリ絵画の歴史と進化についてはこちらのページもご覧ください)
「アートルキサン」の店主木村薫さんは、バリ絵画の魅力を日本に発信し続けて15年、この世界のいわば第一人者です。3年前、バリアートをさらに極めるためバリ島ウブドに移住。芸術村を駆け回り、アーティストの発掘はもちろん、背景にあるバリの文化・風習・思想の真髄に迫る日々を送っておられます。
そんな木村さんに全面協力をいただき、「アートルキサン」所蔵作品から選りすぐった伝統絵画、さらには、お求めやすい価格帯の作品を加えた合計約50点を展示します。神話の世界や民衆風俗を描いた伝統絵画、繊細で美しい細密画、幻想的な熱帯風景画、初めての方にも親しみやすい花鳥画など、バリ絵画の様々スタイルをご紹介。開催時期は5月、詳細はまたご案内します。
どうぞお楽しみに!
<関連ページ>
バリ絵画の歴史と進化 14世紀から続く伝統絵画に西洋絵画がクロスオーバー
バリ絵画の主要スタイル 多彩なスタイルが楽しめるバリ絵画
バリ島の美術館に選ばれた作家たち プリ・ルキサン美術館など、バリ島の主要美術館で一度は目にしたあの有名作家の作品が購入できます
頑張っている人を神様は必ず見ていてくださる
こんにちは、坂本澄子です。毎日寒いですね。
眩しい緑が恋しくなり、映画『神様はバリにいる』を観てきました。主役を演じていたのは堤真一さん。大好きな俳優さんです。色んな役ができる役者さんだとは思っていましたが、パンチパーマにゴールドのチェーンネックレス。バリ島の日本人億万長者、”兄貴”こと丸尾孝俊さんの雰囲気そのまんまです。いやもう、恐れ入りました(^o^;
強烈なキャラクターの向こうに垣間見える、主人公の素朴な温かさをうまく演じておられました。「失敗したときにこそ笑え」の言葉の通り、とにかく元気のでる映画です。そして、何より嬉しかったのは、エンドロールに、プロデューサー 前田紘孝さんの名前を見つけたときです。
前田さんに初めてお会いしたのは、一昨年の秋。クラウド・ファンディングと呼ばれる、日本ではまだあまり例を見ない資金調達方法で映画を作ることに挑戦されていました。スポンサーがついて、大手配給会社がどーんという従来のやり方とは違い、作品に賛同する無数の支援者によって一本の映画が作り出されるわけです。前田さんがこの作品にかける熱い想いを綴ったウェブサイトを見て、「私がバリを好きになったのとまさに同じことを、この映画は伝えようとしている」と感じて、訪ねていったのです。
オフィスはバリ絵画展をよく行う麻布十番駅の近くにありました。元々役者を目指していたという前田さんはまだ30代半ばですが、この映画を何としてでもヒットさせたいとの想いがひしひしと伝わってきました。
そのとき、台本を一冊プレゼントしていただきました。登場人物の軽快なやり取りの中に、大切なテーマが重くなることなく語られていると感じました。
「バリ島はやおろずの神様のすむ島。神様がそこかしこの自然に宿るという考え方は、日本人にも共通するものがあります」
あれから1年。実際、「何度、会社や家族を失うと思ったかわからない」というほど、苦労の連続だったそうです。公開も当初の計画より半年ずれましたが、NHKの連続テレビ小説『マッサン』で堤真一さんへの注目度がアップした絶妙なタイミングと言い、結果的に一番よい時期だったのではないでしょうか。
また、つい先日、前田さんプロデュースの前作「そこのみて光輝く」(2014年公開)がキネマ旬報で日本映画部門の第一位を受賞という嬉しいニュースも。
頑張っている人のことを、神様は必ず見ていてくださいますね。
「神様はバリにいる」、忘れかけていた大切なことを思い出させてくれる、じわっと心にしみるいい映画です。よかったらぜひ映画館に観に足を運んでみてください。
<関連ページ>
映画『神様はバリにいる』 『神様はバリにいる』公式サイト
プロフィール 私が初めてバリ絵画に出会ったときのこと
日本の普通の人たちの生活にアートを根付かせたい
こんにちは、坂本澄子です。
夕刊フジ(産經新聞社発行)の週刊コラム『人生二毛作』で私のことを取り上げてくださったライターの大宮知信さんから、著書『ひとりビジネス』(平凡社新書)からの一部抜粋をいただきました。ここで紹介されていたのは、小林さか江さんといって、現代アートの分野で展覧会を企画し、アーティストを世に送り出すお仕事をされている方です。
展覧会の企画というと、放送局や新聞社などメディアの事業部か、美術館のキュレーターが一般的ですが、フリーの立場でそれをやられている珍しい存在。しかも、日本と韓国の作家、あるいはロシアの作家というふうに、国境を超えた作家たちの交流展という形で実現されているのもおもしろいと思いました。
「日本で絵は売れない」
私がこの仕事を始めて以来、幾度となく聞いた言葉です。欧米はもちろんアジアの他の国々では、アートへの投資に対して税金の優遇措置があり、文化的な意味での国力の違いを感じることが多いのは事実。その中にあって、「アートが社会に、日本の普通の人たちの生活に根付いていけばいいな」と思って、地道な活動を楽しみながら続ける小林さんの姿勢に勇気をもらい、共感を覚えました。
私も初めてバリ絵画に出会って感じたのは、「こんな質の高い絵がこんな値段で買えるんだ」という驚きでした。お土産用に同じ構図で何枚も描かれる絵は論外として、プロの画家が真剣に向き合って描き上げた、世界に一点しかない作品が数万円から購入できるのは、やはりすごいことだと思うのです。
作家の肉筆から伝わってくる力を毎日の生活に取り入れる。お金持ちでなくても、特別な人じゃなくても楽しめる。それがアートの持つ価値ではないかと考えています。私も小林さんと同じ目標を自分なりのアプローチで目指したいと思います。
自由な表現ができるバリ絵画のキャンバス
こんにちは、坂本澄子です。毎日寒いですね。風邪やインフルエンザがはやっていますから、気をつけてくださいね。かく言う私も、少し前にひいた風邪の咳がいまだに残っていて、ちょっとハスキーボイスです^o^;
さて、今日はキャンバスのお話。
バリ島で絵をご覧になって、「布に描かれているみたい」と、思われたことはありませんか。下塗りをしていない目の細かい綿キャンバスの方が、細かな描写や、下絵に墨で陰影をつけてから彩色するバリ絵画の伝統的な描き方に向いているんです。
ただ、耐久性という意味ではどうしても弱い。バリ絵画は14世紀から続く長い歴史を持ちながら、古い作品があまり残っていないのは、高温多湿という絵の保存に不向きな環境に加えて、薄い綿布に描かれていたことも影響しています。バリ島・ウブドのプリ・ルキサン美術館には、何百年も前の古い絵も展示されていますが、どれもかなりボロボロの状態..。
そこで、最近では厚手のキャンバスに描く画家が増えていますが、伝統的な描き方をするときは、下塗りがされていない織りの細かなキャンバスを用います。
写真は下絵に墨で陰影をつけているところですが、影の部分に墨を塗った後、水を含ませた筆でなじませていきます。このとき、下塗りがされていると水分がはじかれてしまうというわけです。この上からアクリル絵の具で彩色するため、全体としてやや暗めの仕上がりになります。キャンバスの端までぎっしりと描き込まれた重厚な作品は、この独特な描き方から生まれてくるんですね。
「バリアートショールーム」でご紹介している画家の作品を見ると、下塗りをしていないキャンバスに伝統的な描き方をしているのは、ARIMINI, RAJIG, LABA, RAIなど。写真左の『ウィシュヌとガルーダ』(ARIMINI)は、バトゥアン・スタイルという西洋絵画の影響をほとんど受けていない伝統的な技法で描かれています。花鳥画を中心としたプンゴセカン・スタイルも多くは陰影をつけてから着色しています。
一方、下塗りをしたキャンバスを使用する作品はモダンなものが多く、陰影をつけずに着色に進みます。先日、作品展を行ったGALUH, WIRANATAはこちらのタイプです。
日本では20号とか30号といった規格サイズがありますが、バリ絵画にはこのような規格はありません。画家は作品の構図によって縦横の比率や大きさを、自由に決めています。 注文制作が多い画家のアトリエを訪ねると、部屋の壁の端から端まで広がる横長キャンバスや、吹き抜けに飾るのかと思われる縦に長〜いキャンバスなど、色々見ることができます。
こんなふうに、好きな画家に依頼して自由な大きさや題材で注文制作できるのも、バリ絵画の魅力のひとつなんですよ。新築・リフォーム・お引っ越しなどの機会にいかがですか?