バリアートショールーム オーナーブログ
2015.8.5

第3回「バリアートサロン」は風俗画

こんにちは、坂本澄子です。毎日暑いですね〜。

朝、日の出と共に暑さで目が覚め、起きて絵を描くというかなり健康的な生活を送っています。今描いているのはバリをテーマにしたちょっとシュールな作品。仕事から疲れて帰ってソファでうたた寝していると、背後に飾られた大きなバリの風景が夢の中に侵入。やがて現実と夢の境目がなくなる不思議な感じを描いています。完成したら、また見てくださいね。

さて、毎回異なるテーマで作品を選び、作品を鑑賞しながら題材にまつわるお話をさせていただく1時間のトークイベント「バリアートサロン」、第3回となる8月はバリ島の風俗画を取り上げます。

『村の生活〜稲刈り風景』 LONDO

『村の生活〜稲刈り風景』 LONDO

古来バリ島では、芸術・芸能は天界と人間界を繋ぐものとして位置付けられ、絵画ではもっぱら神話の場面が描かれていました。

1920年代になり「最後の楽園」ともてはやされたバリ島へ続々とやってきた西洋人は、絵画の技法のみならず、芸術に対するマインドの点でもバリの画家たちに大きな影響をもたらしました。その結果、制作の題材として民衆の生活そのものに目が向けられるようになり、バリ独特の世界観や文化・風習が描かれるようになったのです。  

今回はバリの農村を舞台に信仰と人々の生活を描く女流作家アリミニ、明るいエネルギーあふれる色彩で祭礼の島バリを描くソキ、ロンドなどの作品を展示し、伝統的なバリの暮らしをご紹介します。

絵画に描かれた題材の意味や背景がわかると、もっともっとバリ絵画を楽しんでいただけますよ。ぜひご一緒に学んでみませんか? 

 

第3回『見れば見るほどおもしろいバリ島の風俗画』  開催要領

ブログ211_サロン

日 時:8月23日(日) 11:00-12:00

場 所: バリアートショールーム 「有明ショールーム」

東京都江東区有明1丁目2−11

ゆりかもめ「有明テニスの森」駅 徒歩7分 

りんかい線「国際展示場」駅 徒歩16分

都バス都05系統「かえつ有明中高前」バス停より徒歩1分

 

「バリアートサロン」は事前申し込み制です。定員6名に達し次第、締め切りとさせていただきますので、こちらの申込みフォームよりお早めにお申し込みくださいませ。

 

2015.7.26

絵の値段はこうして決まる

こんにちは、坂本澄子です。

 郊外に出掛けてきました。新宿から電車で約一時間、その後、バスに20分揺られ、歩くこと25分。猛暑の坂道はツラかったですが、冷たい渓流の側でのBBQは気持ちよかったですよ。

さて、今日は絵の値段についてです。バリ島七不思議のひとつとも言われるバリ絵画のお値段。交渉しているうちに、半額以下になったなんてよくある話ですよね。

ブログ220_バリ島のギャラリー一般的に絵の値段は画家のランクとサイズによって決まりますが、バリ島では作家とギャラリーの関係や流通の仕組みが欧米や日本のように確立されていないため、画家の多くは自分で価格を決めて売っています。そのため、よく言えばかなり柔軟で、交渉によってはやった〜と思う金額が出てきたりするわけです。果たしてそれは本当にお買い得だったのか。

バリ島の画家にはピンからキリまでざっくりわけて3つの層があります。

著名作家はギャラリーからの注文制作がほとんど

①いわゆる著名作家。バリの伝統画家名鑑「BALI BRAVO」が参考になります。

彼らには大手ギャラリーがついていて、サイズごとの販売価格はほぼ決まっています。また、絵画オークションなどの二次流通価格も目安があります。人気作家になるほど価格交渉は難しく、アトリエに行っても在庫はほとんどありません。

ブログ220_自宅ギャラリー②実力作家。①に次ぐ層として、現地である程度名前を知られており、ガイドが観光客を連れてきてくれたりと、お客を呼び込む力があります。自宅の一角をギャラリーにして作品を販売している他、ホテルでの展示販売や企画展にも声がかかります。販売価格は画家自身が決めますが、交渉によって大きく下がることはあまりありません。

 

③大多数を占めるのが、その他大勢の画家たちです。画業だけでは生活できないので、ガイドなど副業をしながら絵を描いている人もいます。地元の観光客相手のギャラリーや②の画家のところに作品を置かせてもらい、価格はある程度お任せで販売を委託しています。

バリ島に観光に行って七不思議が起こる多くは、③の画家の作品でしょう。しかし、バリ絵画のすごいところは、店の裏でオバちゃんたちが流れ作業で量産しているお土産物の絵は論外としても、③の底のレベルが高いことです。特に技術的な面では間違いなくそう言えると思います。

7月18日のブログでもお伝えしたように、神様へのささげものとして神話をモチーフとして描くことから始まったバリの伝統絵画は、徒弟制度の中で師の描いたものを寸分違わず再現する、いわば職人技として受け継がれてきました。ウブドの画家の多くは父親、叔父といった身近な人から絵の手ほどきを受けた人が多く、技術的な面での伝承は、今もこの形態が広く残っています。そのため、ある決まった題材を上手に描ける画家が多いのです。

一方、絵を描く能力にはこういった技術的な面の他に、絵作りというもう一つ別の側面があります。後者が画家としてのオリジナリティであり、絵の魅力にも大きく影響してきます。今このブログを読んで下さっている皆様がいつか絵を購入される際には、この2つの面を兼ね備えた作品をと思っておられることでしょう。そうなると、①、②からしっかりと作家を選ぶ必要があり、それが私がこの仕事を始めたきっかけでもあります。

「バリアートショールーム」は①の著名作家(「美術館に選ばれた作家たち」)と②の実力作家のなかからこれだと思った画家の作品(「気軽に飾れるバリアート」)を選んでお届けしています。どうか安心してご利用くださいませ。

 <お知らせ>

第3回バリアートサロン「見れば見るほどおもしろいバリ島の風俗画」を8月23日(日)に開催します。詳しくはこちらをご覧ください。

 

2015.3.28

ヤングアーティスト派の巨匠

こんにちは、坂本澄子です。

暖かくなってきましたね。若葉の緑も次第に濃くなり、ケンの散歩道で見かける名も知らぬ可憐な花々が、黄色、ピンク、紫と目を楽しませてくれています。気分も上々です^o^

絵にも、こんなふうに見る人の気持ちを高揚させてくれる作品がありますよね。バリ島ではオランダ人画家アリー・スミットに師事した若い画家たちが、まさにそうでした。1956年にウブドのペネスタナン村に腰を落ち着けたスミットは、自分を慕ってやってくる地元の若い画家たちに、色鮮やかな絵の具を与えて、自由に描かせました。彼の色使いに魅せられた画家たちは、バリの伝統絵画に特徴的な細密さに、極彩色を取り入れるようになったのです。かつてのヤングアーティストたちは、今では巨匠と呼ばれるように。今日はそんな画家の作品をご紹介します。

LONDO – 1948年バリ島ペネスタナン村生まれ。アリー・スミットの最も初期の弟子のひとりです。家鴨使いとして家計を助けていた少年時代、アリー・スミットと出会い、彼の主宰する”Young Artist Organization”に加わったことから、大きく人生が変わったのです。では、さっそくその作品をご覧ください。

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『村の生活 〜 稲刈り風景』 LONDO  アクリル画 40cmx60cm  106,000円

ヤングアーティスト派の作品は左右対称で並行的な構図が一般的ですが、LONDOの作品は少し高い位置から俯瞰したものが多く、のびやかな広がりを感じます。そして、細部に目を向けると、色使いに画家のセンスが。例えば、田圃で虫をついばんでいる家鴨たちには茶色の中にピンクをアクセントに使ったり、田圃の水に深い群青を混ぜたりと、ドキッとする配色が見られるんですよ。

ブログ205_ロンド作品LONDOの作品はバリ島のアルマ美術館に所蔵されており、展示室で見ることができます。私も実際に見てきましたが、氏の作品の特徴である効かせ色が使われており、明るい気持ちになりました。(注:効かせ色とはファッション雑誌でよく使われる言葉で、アクセントカラーとか、回りと調和しつつ、ちょっと洒落た色使いをいいます。読者の方からご質問をいただきましたので、注釈を追加します)

氏の作品はLALASATIなど絵画オークションでも、安定した価格で取引されています。

『村の生活 〜 稲刈りの風景』、ぜひ現物をご覧いただき、元気の素をチャージしてくださいね。5月18日(月)〜23日(土)の「春のバリ絵画展」@東京・京橋にて展示販売します。

<関連ページ>

『春のバリ絵画展』

『村の生活 〜 稲刈り風景』LONDO ・・・作品詳細、ご注文はこちらから

ヤングアーティスト・スタイル ・・・’70年代に一世風靡したポップな作風

アリー・スミット・・・バリ絵画に最も影響を与えた画家

アルマ美術館公式ホームページ

 

 

 

2015.3.25

初めてのアートに花鳥画② 飾りやすい横長サイズ

こんにちは、坂本澄子です。

前回はバリ絵画の入門編として、日本人に最も親しみやすい花鳥画から、熱帯の森に棲む動物たちを描く巨匠LABA氏の作品をご紹介しました。今日はその第二弾として、「飾りやすい」1:2の横長作品をご紹介しま〜す。

これまで「バリアートショールーム」では、エベン氏の花鳥画を中心に横長サイズを扱ってきましたが、毎回すぐに売れてしまう人気ぶり。ソファの後ろに飾ってよし、チェストの上に飾ってよし..と、場所を選ばず、すぐに素敵な空間が作れるスグレモノです。

写真はエベン氏が描いた『キバタンとプルメリア』です。キバタンはオウムの一種で、冠羽が特徴。通常は右の鳥のように一本伸びているだけですが、左の鳥のように扇のように広げることができるのです。きっとエベン氏は左の雄鳥が雌鳥にモーレツアプローチ?しているところを表現したかったのでしょうね。

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 『キバタンとプルメリア』EBEN 40cmx80cm アクリル画 24,000円(バリ島からの配送料込み)

このキバタンは野鳥画家EBEN氏の好きなモチーフのひとつで、初めて彼のアトリエで絵を教わったときも、この鳥を題材にバリ絵画の手ほどきをうけました。羽毛の柔らかい感じを出すのがとても難しいのですが、EBEN氏の持つ筆が、薄めの黒ですっと影を引くだけで、胸元のフワフワ感が出てくるのを魔法のように感じたものです。その時の様子は2013年5月のブログに「バリ絵画の描き方講座」としてご紹介していますので、あわせてどうぞ^_^

残念なことに、そのEBEN氏、現在は専業画家をやめ、銀行に勤務されています。大学では法律を学び、40歳を超えて何か別の可能性を切り拓いてみたくなったのかも知れません。銀行マンとしての仕事という人生の新しい側面を得て、氏の作風にも新たな息吹がふきこまれるかも。そんな気持ちで見守っていきたいと思います。「キバタンとプルメリア」は画家として最盛期の頃に描かれた貴重な作品です。

そして、もう一点。同じく野鳥画家、特に文鳥を描かせたらこの人と定評のある、RAKA氏の『ランと文鳥』をご紹介します。氏の作品はご覧の通り、様式化された描き方とグラデーションの使い方に特徴があり、モダンなインテリアにも難なく馴染みます。シンプルなシルバーのボックスフレームに額装してお届けします。

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 『文鳥とラン』RAKA 40cmx80cm アクリル画 38,000円(バリ島からの配送料込み)

私自身もEBEN氏の特大の作品(100cmx200cm)を自宅に飾っています。初めてバリ絵画に出会うきっかけとなったのが氏の作品でした。そこから、様々なスタイルを持つバリ絵画の幅広さ、奥深さに引き込まれ、バリ絵画を日本に紹介する仕事を始めました。

手頃な価格で日本人の感性にも合うバリの花鳥画、あなたの初めてのアートにいかがでしょうか。実物は5月18日(月)〜23日(土)@東京・京橋で開催予定の春のバリ絵画展2015でご覧になれますよ〜! 50点を一堂に展示しますので、花鳥画以外にも様々なバリ絵画のスタイルを楽しんでくださいね。

2015.3.21

初めてのアートは花鳥画をいかがですか?

こんにちは、坂本澄子です。都内の桜の名所として有名な目黒川、「とうとう咲いているのを発見しました〜」と、お客様からメールをいただきました。来週あたりから一斉に咲き始めそうですよ。

さて、前回のブログでご紹介した『カエルの親方』に「帰ると蛙をかけたコンセプトがおもしろい」、「よかった〜、私も嬉しいです」など、様々な反響をいただきました。バリの花鳥画(プンゴセカン・スタイル)は私たち日本人にとっても、親しみやすいスタイルですね。

ブログ167_少年たちの情景『カエルの親方』と並び、ずっと見守ってきたのが、写真の『少年たちの情景』です。こちらも、初めてLABA氏のアトリエを訪ねたときに、惚れ込んだ作品。

風の強い乾季(7、8月)は今でも凧揚げが盛んですが、カイトではなく、昔ながらの凧とそれを見上げる少年たちの素朴さがいい味出してます。それもそのはず、今年67歳になるLABA氏が少年時代を思い出しながら描いた絵なんですから。背景の緑は少しずつ異なる色が配置されており、それが絵に深みをもたらしています。箱から出して飾るたびに、吸い込まれそうになるほどの絵力。「いい絵にはやはり人を惹き付ける何かがある」、素直にそう思える作品です。

 この他にも、プンゴセカン巨匠LABA氏らしいユニークな動物画を取り揃えています。

若い豹はLABA氏の人気のモチーフ。50x40cmのちょうどいいサイズで、場所を選ばず飾れます。(画像をクリックすると作品詳細情報がご覧になれます)

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こうして見ていると、まるで森のなかにいるみたいですね。これから日本も緑眩しい季節へと向かいます。あなたの初めてのアートを見つけに来られませんか?春のバリ絵画展、5月18日(月)〜23日(土) @東京・京橋で開催します。

 <関連ページ>

春のバリ絵画展・・・バリ絵画の主要ジャンルの作品から50点を一堂に

LABA・・・プンゴセカンの巨匠、画家と作品ページ

2015.3.14

バリの神様⑤ 戦いの女神ドゥルガー 〜 バトゥアン絵画を楽しむ

こんにちは、坂本澄子です。

ついに!暖かくなってきました〜。堅く閉じていたつぼみも、開花に向け動き始めましたね。

ブログ204_バトゥアン村先日ご紹介したバリの古典絵画(カマサン・スタイル)に次いで、伝統的な技法を今に受け継ぐのがバトゥアン・スタイルです。カマサン村が古都にふさわしい、落ち着いた佇まいを見せているのに似て、バトゥアン村も写真の通り、風情ある町並みです。高い塀の上からバリ島に特徴的な赤瓦の屋根が見える通りを歩くと、なんだか子供の頃住んでいた場所を思い出すような懐かしさがあります。

 オランダ統治下において、ウブドが多くの外国人画家を受け入れたのに対し、ほとんど西洋の影響を受けなかったのがバトゥアン村。そのため、ヒンドゥ神話を題材に、やや暗めの色使いで、画面いっぱいにびっしりと描く伝統的な手法が今も残っています。やや暗めになるのは、下絵を描いた後、墨で陰影をつけてから彩色するためなんです。この描き方は西洋絵画の影響を受けたバリ絵画の他のスタイルにも見られます。

さて、今日ご紹介するのは戦いの女神ドゥルガーです。神話によると、天界を攻め、自分たちを追放したアスラに対する神々の怒りの光から誕生したとされ、10本あるいは18本の腕にそれぞれ神授の武器を持った姿で描かれることもあります。そんな恐ろしい一面を持つ一方で、顔はとても優美で美しく、三大神のひとりであるシヴァ「終わりの日に世界の破壊を司る神」の神妃でもあります。

その女神ドゥルガーの戦いの場面を描いた作品がこちら。上部中央を見てください。少年のような表情で、大蛇ナーガと戦う勇ましい姿が描かれています。周囲に目を移すと、森の中には野獣や魔物が潜み、神々との戦いが繰り広げられています。一見、平面的に描かれているように見えますが、この森の奥には何があるんだろうと、見る人に想像させる余韻のようなものがあります。

(画像をクリックすると作品詳細がご覧になれます)

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『戦いの女神ドゥルガー』GENDRA  アクリル/紙 34x54cm 85,000円

作者のゲンドゥラ氏の作品は、これまで国内外の数々の伝統絵画展に出品されており、神話を題材にした緻密な描写に定評があります。

私自身はバリ絵画に出会った当初、花鳥画や風景画といった入りやすい絵に惹かれました。しかし、この作品もそうですが、じっくりと見せ、じわじわとしみ出してくる深い味わいを感じます。そして、伝統が持つものの価値が見えてくると、作品に親近感と愛着が湧いてくるんです。

こんなふうに、多彩なジャンルという幅広さと、じっくり楽しめる奥の深さの両方を兼ね備えたバリ絵画。5月18日(月)〜23日(土)開催予定の「春のバリ絵画展」では、主要スタイルから50点を選び、一堂に展示します。

<関連ページ>

春のバリ絵画展 5月18日(月)〜23日(土)@東京・京橋

バトゥアン・スタイル バリ絵画の伝統スタイルの魅力をご紹介

 

2015.3.7

バリの神様④ 神話に登場する化身たち〜古典絵画の魅力

こんにちは、坂本澄子です。

前回は「バリの神様」シリーズ第3弾として、世界の秩序を司る神ウィシュヌをご紹介し、10以上の化身があることをお話しましたが、いったいどんな化身なのでしょうね。今日はバリ絵画を通じて神話の世界にお連れしたいと思います。

ブログ202_ラーマヤナー「ウィシュヌの化身なら、きっとハンサムな王子では?」

はい、「ラーマヤナー」の主人公のラーマ王子はまさにそんな感じに描かれています。写真は、ラーマ王子(左)に、シータ妃がさらわれたことを猿王ハヌマン(右)が報告している場面ですが、異母弟のラクシュマナと並んで立った姿は、貴公子然としていますね。

 

「ラーマヤナー」はヒンドゥ教の神話のひとつ。物語のあらすじについては、以前ご紹介していますので、こちらも併せてお読みになってみてください。ところでこの物語の一番の見せ場は、シータ妃を取り戻すために、魔王ラワナ(日本の昔話でいうところの鬼)とその一味を相手に、猿王ハヌマン率いるサル軍団が大乱闘を繰り広げる場面です。その様子を描いた作品がこちら。(画面をクリックすると詳細がご覧になれます)

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『ラーマヤナー〜魔王と戦うサル軍団』 ムリアティ作 アクリル画 60x80cm  59,000円(税込)

敵味方入り乱れながらの大乱闘、サル軍団が魔王の手下をちぎっては投げ、ちぎっては投げ…?、迫力ある戦いの場面がキャンバスいっぱいに展開されています。

「ラーマヤナー」では貴公子として描かれているウィシュヌですが、別の化身であるクリシュナは全く印象が異なります。こちらの作品を見てください。注:左に小さく描かれた涼しげな顔の方ではありませんよ。クリシュナは中央です。

ブログ202_クリシュナ

 『マハーバーラタ〜クリシュナ』 ムリアティ作 アクリル画 68x78cm 90,000円(税込)

何本もの手にそれぞれ違った武器を持ち、額にある第三の目は火を放つとも。その雄姿は猛々しく、またどこかユーモラスでもあります。ちなみに、千手観音像はクリシュナをモデルにしているとの説も。

これらの作品はカマサン・スタイルと呼ばれ、影絵に端を発する最も古典的な技法で描かれています。墨で陰影をつけた下絵に赤、青、茶、黄の4色で彩色、人物描写が平面的、顔は斜め45度に描かれるのが特徴です。

作家は14世紀から続く古典絵画を継承するカマサン村出身の女流画家ムリアティ。古典絵画ならではのプリミティブな味わいに加え、女性ならではの色使いが洗練された魅力を添えていますね。

 5月18日(月)〜23日(土)のバリ絵画作品展では、バリ絵画の主要スタイルを網羅する50点を展示します。今回はアートルキサンさんの協賛で行い、今日ご紹介した作品を始め、ウェブサイト掲載の古典絵画の実物を見て購入できるチャンスですよ。どうぞお楽しみに。

<関連ページ>

カマサン・スタイル

バリ絵画の専門店「アートルキサン」公式ホームページ

 

 

2015.3.4

バリの神様③ 宇宙の秩序を司るウィシュヌ

こんにちは、坂本澄子です。「バリアートショールーム」は御陰さまで3月1日で2周年を迎えました。いつも応援してくださり、ありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願い致します!

さて、「バリの神様」シリーズ、これまで女性の神様が続きましたので、今日はヒンドゥ教の3大神のひとり、ウィシュヌをご紹介したいと思います。バリ絵画にもよく描かれる神様です。

ウィシュヌも前回のデウィ・スリ(稲の女神)に劣らず、バリの人々から慕われている神様。神話『ラーマヤナー』の主人公ラーマ王子をはじめ、なんと10以上の化身があり、それぞれに物語があるんです。

3大神であるブラフマー、ウィシュヌ、シバはそれぞれ「宇宙の創造を司る」、「宇宙の秩序を司る」、「宇宙の終わりの日に破壊を司る」という役割を担っていると言われています。人間の暮しに最も関わりがある神様という意味でも、親しみがわいてきますね。

そんなバリの人々の考えを表現した作品がこちらです。

『宇宙の秩序を司る神ウィシュヌ』

 『ウィシュヌとガルーダ』ARIMINI   アクリル/紙 25cmx36cm  160,000円(税込)

画面中央では、村人たちが神社に供物を捧げ、黄金色に実った稲の豊作を感謝しています。そのすぐ横で、手のひらから泉を涌き出させ、田植えが終わったばかりの田圃に水を送っているのがウィシュヌです。

睡蓮が美しい花を咲かせ、蝶が舞い、たっぷりと水を湛えたこの水田に、やがて豊かな実りが訪れることを感じさせてくれます。このように世界のサイクルを維持し、そのサイクルの上で信仰と一体となって生活する、バリの人々の暮しを守ってくれる神様がウィシュヌというわけです。

この作家アリミニ(ARIMINI)はバリで最も著名な女流画家のひとり。その作品はアルマ美術館で常設展示されています。これは小さな作品ですが、これだけ様々な色を使いながら、美しく調和しているところは、ウィシュヌの「秩序」に通じるものがあると感じました。また、細部に至るこだわりには並々ならぬものがあり、細い線の一本一本まで意識を張り巡らしていることがよくわかります。

例えば、水田の水をよく見てください。上の田圃から下の田圃へと水が流れ、隅々まで水が行き渡っていますよね。(バリ島には1000年以上に渡って受け継がれてきたスバックと呼ばれる水利の仕組みがあります)そのよどみない流れを繊細な曲線で描き込んでいるのがご覧になれるでしょうか。

こんなふうに、どの部分を見ても見応えのある作品です。こんな作品がうちにあるなんて、ちょっとすごくないですか。この作品は実物がご覧になれ、ウェブからもご購入いただけます。

<関連ページ>

アリミニ (ARIMINI)  画家プロフィールと作品詳細はこちらをどうぞ

アルマ美術館公式ページ

 

2015.2.25

バリの神様② 豊穣の女神デウィ・スリ

こんにちは、坂本澄子です。

今日は「バリの神様」の第二弾、バリ島で最も身近な神様といってもいいんじゃないでしょうか、多くの実りを与えてくれる「豊穣の女神」デウィ・スリのお話です。

ブログ200_デウィ・スリバリ島ウブドのプリ・ルキサン美術館の中庭にある蓮池で、写真のような、右手に聖水の入った壷を持った姿をご覧になった方も多いことでしょう。バリの田園地帯を歩いていると、今でも水田のあちらこちらにデウィ・スリを祀った祠を見かけます。

 

あれは3年くらい前だったでしょうか。ガルーさんの『早暁の静謐』に出てくるような朝の幻想的な風景が見たくて、夜明け前から出かけたことがありました。アグン山が見える田園地帯に着く頃、ようやく空が白み始め、刻一刻と変わっていく雄大な景色にとても厳かな気持ちになったのを、今でも覚えています。どこにでも神様は宿ると信じるバリの人たちの世界観って、こういうことなのかなあ、なんてふと考えてしまいました。

ブログ200_朝の農夫しばらくすると一人の若い農夫がやってきて、緑の田圃の中を歩いていきました。その瞬間、真っ白な白鷺が一斉に飛び立ったかと思うと、その人は祠の前で祈りを捧げていました。

夜明けと共に起き、祈りで始まる一日。至る所に神様の存在を認め、感謝の気持ちを忘れない。そんな素朴なバリの暮し、いつまでも変わらないていてほしいと思います。

さて、そんなデウィ・スリを美しい女神の姿で描いた作品がこちらです。昨年秋の『豊穣の大地』展で展示させていただきました。黄金色に実った稲の刈り取りを村人たち総出で行う傍らで、デウィ・スリに豊作を感謝する供物を捧げている女性がわかりますか? この作品はご注文制作にて承ります。サイズについてもご希望ございましたらご相談ください。

『豊穣の女神』ANTARA  ミクストメディア 100cmx150cm  800,000円

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<関連ページ>

『豊穣の女神』ANTARA   作品詳細はこちら

『早暁の静謐』GALUH   作品詳細はこちら

プリ・ルキサン美術館公式サイト

2015.2.21

絵の愉しみ方 〜 知的好奇心に響く絵

こんにちは、坂本澄子です。

桜の季節が待ち遠しい季節になりました。昨日、銀座を歩いていたら、あるギャラリーのショーウィンドウに見事な桜、思わず覗き込んでしまいました。満開のひとえだの桜がぽってりとした陶器に飾られているところまではよくある構図なのですが、背景に特徴があり、藍に染められた小紋のような柄が四角く組み合わされていたり、江戸時代の水墨画を思わせるような風景が描かれていたりと、いにしえから今日に脈々と受け継がれる日本人の美意識を思わせる魅力的な絵でした。

こんなふうに、絵を見て心が動かされるのは、自分の中にある何かが反応するとき。昔見た光景や経験の断片が呼び起こされ、心(あるいは脳?)の中で心地よい波紋が広がっていくような共感と言いますか、これが「いいなあ」と思える瞬間ですよね。

ブログ199_風俗画一方、知らないものに対する知的好奇心という絵の愉しみ方もあると思います。展示会に来られるお客様は、バリ島の生活を描いた風俗画にそのような面白さを感じられる方も多いんです。

それまで神話を題材にすることの多かったバリ絵画が、オランダ統治下で西洋絵画と出会ってから、民衆の生活にも目が向けられるようになりました。(ウブド・スタイル)

左の作品はそんなバリの暮しが描かれた佳作。お寺の門前で祭礼の準備をする村の人々の様子が、バリ島の伝統画家ダギン(DAGING)の手によって、生き生きとしたタッチで描かれています。

『村の暮し』 DAGING  アクリル画  60cmx45cm  140,000円(税込)

 

ブログ199_レゴンダンサー

この流れを汲む画家たちの中でひときわ精彩を放っているのが、ジュルジュ(DJULJUL)です。ジャワ島バンドン市にある芸術科(Bandung Institute for Technology)で西洋の近代技法を学んだ後、バリ島に戻り、伝統絵画の魅力を再発見。細密画家として伝統技法と西洋技法を融合した独自の作風で身近な題材を取り上げてきました。

右の写真は、そんな氏の魅力が余す所なく発揮された作品。まだあどけなさの残る若い踊り手と、細部に至るまで精緻に描かれた背景とが、やわらかな色調で見事に調和しています。

 

『レゴン・ダンサー』DJULJUL  アクリル画 65cmx50cm  263,000円(税込)

ブログ199_レゴンダンサー2私はこの作品を初めて見たとき、ほとんど遠近感のない構図で平面的に描かれているにも関わらず、この踊り手の強い存在感に心揺さぶられるような感覚を覚えました。バリ伝統絵画の特徴でもある風景の一部を構成する人ではなく、明らかに、意思を持ったひとりの人間として描かれているこの作品に、西洋絵画を専門に学んだ作家ならではの、バリの伝統と西洋の融合体を見たように感じました。

 

今日ご紹介したウブド・スタイル以外にも、バリ絵画には様々なスタイルがあり、色々な絵の愉しみ方を教えてくれます。5月の展示会では、バリ絵画の主要スタイルの作品50点を一堂にご覧いただきます。

 

<関連ページ>

バリ絵画の主要スタイル

『村の暮し』 DAGING   作品詳細/ご注文はこちらから

『レゴン・ダンサー』DJULJUL 作品詳細/ご注文はこちらから